表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
165/438

9-9封じられていた物って

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


お姉ちゃん変身だよ変身!!(ルラ談)


 めきめきめきっ!

 びりびりびりっ!!


 むきむきむき!



 目の前で長老さんがオーガになってゆく。

 あのよぼよぼのお爺さんだった長老さんがみるみる屈強な元の背丈の倍近くある黒茶色の肌の鬼になってゆく。



『あんれまぁ、長老さだいぶおっきくなったがや』


『あんれ、こりゃどうげんしたとで?』



 完全にオーガの姿になって自分の腕とか見ている。



「お、お姉ちゃん、長老さんがオーガになっちゃった……」


「なななななな、なんなんですかこれって!?」



 思わずイリカさんを見るもイリカさんも小刻みに震えて首を横に振っている。


「わ、分かりません。長老がオーガに……」


 かなり驚いているのか手に持つ石板を落としてしまった。

 と、私はその石板の後ろの方のエルフ語に気付く。



「あれ、これって…… 『ふういん……とけ……る……もとすが……たもど……る』?」


 その部分だけはエルフ語だったので読み取れたけど、どう言う意味?



「元の姿…… ま、まさか!!」



 私のつぶやきにイリカさんは石板を拾い上げ、その前の知らない文字を見る。


「ここは古代文字、確か『下僕なる者』という意味だから、その後ろのエルフ語につなげると『配下なる者、封印解かれし時元の姿に戻る』と訳すのでは?」


 イリカさんはそう言い石板から顔を上げる。

 そして長老たちを見るとオーガになった長老たちはにこやかな笑みを浮かべて言う。



『なんがわかんねが、体の調子いぐなっただがや。腰さいてぇの無くなったしなんか体軽いだがや』


『あんれ、長老もけ? 儂もなっから具合ええでよ』



 言葉は普通に…… いや、相変わらず聞き取りにくいコモン語だけど喋っている。

 イリカさんはおずおずと長老だったオーガに話しかける。



「あの、長老? 長老って私たち分かります??」


『なんえ、イリカどしたん?』


 長老だったオーガはこちらを見てそう言う。

 その言動や仕草は長老そのもの。

 狂暴だと言われているオーガには見えない。



「長老さん、さっき地鳴りあったの知ってる?」


 しかしそんな長老たちにルラは平然と話しかける。


『そうさな、あんなん初めてだったかんらよ、おどれーたがや』


 長老だったオーガはそう言って顎に手を当てる。

 そして少し上を向いて何かを思い出し当ている。



『そいや、畑っからこげんな変なモン出とったでよ、長老知んねか?』


 もう一人のオーガはそう言って石碑を取り出す。

 泥でまだ少し汚れているけど、それにも何か文字らしきものがびっしりと書かれていた。


『イリカ、わがんねか?』


「え、えっと、ちょっと見せてください」


 オーガになって襲ってこないと分かっていてもまだイリカさんはビクついていた。

 まあ普通はそうだろう。

 私だってルラがいなければまだ警戒しているだろうし。



 イリカさんは見せられたその石碑を見て驚く。


「こ、これって古代文字!? え、ええとぉ……」


 言いながらイリカさんはその石碑の文字を読みだす。


  

「我が主、魔王様の命により我らオーガ一族この地の人の姿になり結界を守るモノ也。外の結界破られし時、我らオーガ一族主の命に従い巨人族をうち滅ぼすモノ也」



 イリカさんはそこまで読んでこちらに顔を向ける。



「外の結界…… 巨人族…… それってまさか!」


「イリカさん、じゃあこの石碑に書かれてることって!!」


「サイクロプスとか言うのが巨人族なの、お姉ちゃん?」



 私たちは顔を向き合いそう言いつついろいろなものが繋がり始めた。



『あんれま、んだば儂ら身体おっきくなったんは魔王様のお陰だがや?』


『なんね、儂ら巨人族倒さなならんとね? なんや、それ聞いたら体がムズムズしよんね!!』



 イリカさんの読み上げたそれを聞いた長老さんともう一人のオーガはなんかやたらとやる気を示すのだった。



 * * * * *



『儂らの魔王様が儂らに命じた事を伝えんっぺ!』



 畑から村に戻ったらみんなオーガになっていた。

 お婆さんもバージさんもみんなオーガに。

 お婆さんなんて無茶苦茶スタイルの良いお姉さんオーガにまで若返っていて最初誰だか分からなかった。

 長老さんなんかはやたらと喜んでいたけど、お婆さんは相変わらず感じだったので微妙だ。


 他にもオーガがたくさんいるけど、どうやらオーガ同士だと誰が誰だかわかるらしい。



「イリカさん、ずっとオーガの村で暮らしていたって事ですか……」


「そう、見たい…… でもまさか村の封印ってオーガの姿を人の姿にするモノだっただなんて。あの後調べたらオーガの匂いなんかで魔物は怖がって近寄ってこなかったって事らしいのよ。あの結界って村を守る結界じゃなかったのよ……」



 あの後結構いろいろな所に石碑や石板があった事に今更ながらに気付き、それをイリカさんの家に掻き集め色々翻訳して行ったらもともとこのオーガたちは魔王の配下で、魔王に敵対する巨人族をこの地に封じ込めそしてオーガたちに見張らせるのが目的だったらしい。

 かなり古い物だったらしく、古代文字を読めた村の人たちもだんだんいなくなり、ご先祖様の形見か何かとして家や畑の端っこにお供えしていたらしい。


 おかげで自分たちがオーガだってこともすっかり忘れ、そして村人も何故か村から出たがらないのもこれらの影響らしい。



「でもそうすると外の封印って何で解かれたの?」


「それは分からないわよ。でもこの地にはもともと巨人族がいて魔王と敵対してたって事は分かった。どう言う経緯で封印したか分からないけど、今その封印が解かれてしまった。だから街道にサイクロプスとか言う巨人の魔物が出回っている…… そう言う事ですよね、イリカさん?」



長老の演説を聞きながら私はルラに答え、そして立て続けにイリカさんに聞いてみる。


「多分それで合っていると思います。掻き集めた石碑のや石板にはそれを忘れないための古代文字が書かれてましたが、まさか皆さんがそれを持っていただなんて」


 宝の持ち腐れではないけど、読めなければ意味がない。

 しかし外からやってきたイリカさんのお陰でそれが読めて、この村の目的も分かった。



『魔王様のご命令だがや、巨人族っつうのをしばきに行くさね!!』


『『『『おうっ!』』』』



 なんか村の皆さん、いや、オーガたちはやる気満々だった。

 今にも武器を手に持ち興奮した様子で村を出ようとしている。



「あ~、でもその封印の場所って何処?」



 ぴたっ!





 ルラのその発言に盛り上がっていたオーガたちは動きを止めるのだった。

 

面白かったらブックマークや評価、ご意見ご感想をよろしくお願い致します。

誤字脱字等ございましたらご指摘いただけますようお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >そん部分だけは  リルが訛った!?  村の人に影響を受けちゃったんかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ