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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-5デルバの村

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


毒も薬になるんだぁ~(ルラ談)


 ドドスの街から南にあると言う港町に向かう途中、道に迷いなんだかんだ言って森の中の村、デルバの村の長老さんの家に御厄介になる事となった。



「ところでこの村って森の真ん中にあるって聞きましたが?」


「そうさねぇ、うちら村さずっと昔かんらこんとこあんさねぇ~」


「魔王様に助けられてかんらずっと此処さ聞いただねぇ~」



 長老さんとお婆さんはお茶を飲みながらそう言ってるけど相変わらず聞き取りにくいコモン語をしゃべっている。



「魔王様って、その、怖い人なんじゃないんですか?」



 エルフの村で伝えられている魔王って何度も転生して攻め込んできたって聞いたし、千年前には世界を巻き込む大戦をやったって聞いていた。


 ……なんかその話で「女神の伴侶」シェルさんも関わっていたって聞いたけど。



「ご先祖様さ魔王様にお世話になったって聞いたでなぁ、言い伝えではこん村の周りに結界さ作ってくれて魔物除けしてくれてって聞いたでなぁ」


「ほんにほんに、ほかにも井戸つくってくれたとか毒さ薬にすんの教えでくれとっかあるらしいのぉ」


 長老さんは魔王様像を見ながらそ言うとお婆さんも思い出しながらそう言って同じく魔王様像を見て拝みだす。



 うーん、ここじゃエルフの村での魔王についての言い伝えは言わない方が良いかもね。



「そう言えばバージさんも言ってましたけど毒キノコって薬になるんですか?」


「ん? ああ、バージさ作ってん毒キノコな、あれ村の魔術師のイリカさとこ持ってって薬にすんさね。商人さ買いに来てくんて助かってんさね」



「魔術師?」



 長老さんのその話にこの村にはどうやら魔術師がいるそうだ。

 私はふと思う、魔術師なら風のメッセンジャーっての持っているんじゃないだろうか?

 そうすれば精霊都市ユグリアのファイナス長老に今までの事伝えて単独で帰路についてるって伝えられる。

 ドドスの女神神殿にいたバーグって神官からファイナス長老に連絡も入れているらしいけど迷子になったしその辺も伝えておいた方が良いだろう。



「あの、もしよかったらその魔術師さんに会わせてもらえないでしょうか?」


「ん? ええけんど、今日さもう遅いっけあすたな」


 長老さんはそう言ってにっこりと笑ってくれる。

 私は頷いて明日その魔術師さんに会わせてもらう事となったのだった。



 * * * * *



 翌朝、長老さんの案内で村の魔術師であるイリカさんと言う魔術師の家に向かっている。



「おーい、イリカいっか?」



 村の中はせいぜい家が十数軒くらいしかない本当に小さな村だった。

 昨日は何だかんだ言って直接長老さんの家に来たので気付かなかったけど、よくよく見れば岩で出来た様な家や大きな木の切り株を元に作った家、全体に苔で覆われた家など様々な家があった。



「なんか統一感が無いと言うか、変わった家が多いと言うか……」


「お姉ちゃん、ここが魔法使いさんの家?」



 連れられてきた家は外壁は石を積み上げたような感じで屋根には木の皮を使っている為コケに覆われていた。

 煙突からは煙が出ているので中に人がいるのだろう。


 長老さんのその呼びかけにしばらくすると中からどたどたと音がして扉が開く。



 がちゃ



「長老さん、こんな朝早くから何の用ですか?」


「いやな、迷いっ子のエルフの嬢ちゃんたちがイリカさ用があんだっと」



 重そうな扉が開かれそこから顔を出したのはブラウンの長い髪の毛が少し乱れた大人の女性だった。

 ただ、お風呂にでも入っていたのか見事なナイスバディ―をタオル一枚まいてたたずんでいた。



「えっと、お風呂か何かでしたか? ごめんなさい、着替えが終わるまで外で待ってますね」



「え? エ、エルフ??」



 私を見て彼女、イリカさんは大いに驚くのだった。



 * * *



「すみませんでした、私って寝る時裸で寝る癖があって……」



 しばらくして魔術師らしい格好になったイリカさんは私たちを家の中に招いてくれた。



「いきなり押しかけてすみませんでした、私はリル、こっちは双子の妹ルラです」


「ルラだよ~」 


「えっと、私はイリカって言います。ご覧の通り魔術師をしています」



 お茶を出してもらいながら自己紹介をする。

 しかし奇麗な人だなぁ。

 話し方もデルバの村の他の人と違って普通だし。



「イリカさ、儂ゃぁ用事あんがな、後任されてくんない?」


「ああ、分かりました長老。リルさんとルラさんの事はお任せください」



 長老さんはどうやら何か用事があるようだ。

 イリカさんにそう言って席を立ち出て行ってしまった。


 イリカさんはそれを見送ってから私たちに振り向く。



「リルさん、ルラさん! ああっ! 本当にエルフだ!! 私ちょうどエルフの『生命の木』について調べていた所なんです!! これは女神様のお導き、なんてタイムリーなんでしょう!!」



 長老さんがいなくなった途端イリカさんは興奮気味に私たちの目の前にやって来て一気にそう喋りまくる。


「あ、え、えっとぉ……」


 瞳をらんらんと輝かせ私たちに詰め寄るイリカさん。

 魔術師の人って自分の調べたい事とかの事になるとみんなこうなのだろうか?


 少し興奮気味で何処からか本を取り出し羽ペンでいろいろと聞き始める。



「それで、エルフ族は一説には『生命の木』というものを持っていてそれと連動する個体はその木が枯れない限り死なないって本当ですか!?」


「近い近い!」



 鼻と鼻がくっつきそうな位近づいて来てそんな事を聞いてくる。


 もう目が尋常じゃない。

 私はイリカさんのおでこに手の平を当てて押し返しながら言う。



「話しますから落ち着いてください!!」


「本当ですね!? 色々教えてくれるんですね!? 嘘言ったら束縛して剥いていろいろ研究しちゃいますよ!?」



 こわっ!

 何言ってのこの人!?


 もしかしてヤバい人?

 私たち襲われちゃうの!?



「あ~、『生命の木』ってこの世界に在るんじゃないよ~、なんて言うか頭の中にぼうぅ~っとイメージがある感じなんだよ~」


 私がおののいているとルラがポツリとそんな事を言う。



「え? この世界に在る訳では無いのですか? じゃあどこに??」



「う~ん、分かんないけど、手の届かない所~」


 ルラはそう言ってニカっと笑う。


 まあ、実際ルラの言う通りで感じる事は出来るけど触ったりそこへ行ったりできる訳では無い。

 私やルラの「生命の木」はもし触る事が出来るならまだ人の背丈になるかどうかのちっちゃな木だと思う。

 エルフのお父さんやお母さんは森の中にあるような立派な木だと思うけど。

   

 そんな話を聞いたイリカさんはものすごい勢いで本に何かを書き込んでいる。



「ぐふふふふっ、となると新説の『生命の木』はこの世ではない異次元に存在するってのが本当のようね? だからエルフは亜人であるにもかかわらずその生態が樹木に近いのね!!」



 もう人の話を聞いてくれる雰囲気ではなかった。





 私はそんなイリカさんの様子を見てため息をつくのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >「えっと、私はイリカって言います。ご覧の通り魔術師をしています」 赤い人「ご覧の通り軍人だ」  とか言いながら、上下ともに赤い服でキメた軍人がいたなぁ。  特別な礼装とかでもないのに…
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