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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第九章:道に迷う
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9-4長老さんち

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


……この世界にも方言的なものが有るんだ(リル談)


 バージさんの案内で森の中の村デルバの長老さんのお宅へと私たちはやって来ていた。



「長老、おるかいの? 道に迷ったエルフの嬢ちゃんたちを連れてきたんだがの」


 同じコモン語でもなんか訛っていると言うか、イントネーションも少し違うように聞こえる。

 でもまあ聞き取れないほどではないので何を言っているかは分かるけどね。


「なんじゃ、バージか? どしたんじゃ??」


「いやな、森の中でめんこいエルフの嬢ちゃんたちが迷ってての、村に連れてきたが港に向かいたい言ってんよ。あの噂あっからもちっと待った方がええ言ったんだがの」



 ……うん、前言撤回。

 どんどん聞き取りにくくなっていく。

 こっちの世界でも訛りや方言って有るのかもしれない。



「なんじゃ、そりゃ難儀じゃの。しっかし噂通りらしいの。イリカん所来る商人さ当分くんの止めん言っとたの」


「あんれまぁ、ほんとだったっけ!」



 何処の言葉だそれ?

 いや、コモン語なんだろうけど所々聞き取れないのではなく理解できない。



「お姉ちゃん、なんか変なコモン語だね?」


「多分、方言とかじゃないかな? ルラも生前聞いた事無い? ほらテレビの漫才とかでよく関西弁で喋っている芸人」


 ルラにも分かりやすく言うと、おおぉ~とか言っている。



「悪の秘密結社に変な喋り方する奴いた!」



 結局ヒーローもののテレビ番組基準かい……



「んでな、長老んちさ大きいさね、こん娘っ子面倒見てはどげん?」


「まあさな、難儀は不憫やね、ええよ、うちさ泊まってけろ」


 バージさんと長老さんは分かりにくい事話している。

 しかしバージさんは私たちを見て言う。



「よかったな、ほとぼり冷めるんまで長老の家に泊まっても良いとさ」


「はい? あ、ええと宿があればそこへ泊りますが」


「こん村にそんなモノ無いでな、客人は長老んち泊まってもらうのが多いんだ」



 そう言って長老さんの前に私たちを引っ張り出す。


「あれまあぁ、ほんまめんこい嬢ちゃんたちね!」


「あ、えーと、私はリル、こっちは双子の妹ルラです。ありがとうございます、ご好意に甘えさせてもらいます」


 そう言ってルラの頭も押さえて二人でぺこりと頭を下げる。

 すると長老さんはにっこり笑って言う。


「長老のコルネルがね。まぁ、落ち着くまっでゆっくりしとき」


「はぁ…… ありがとうございます」


「えっと、ありがと~」


 うんやっぱり分かりにくい。

 でもまあせっかくのご好意だしこれから街道へ向かって動くにしても時間もかかる。

 とりあえず今日の所は御厄介になろう。



「んだば、儂イリカん所行くだに、あとよろすくな」


「あいさ、わかっだ」



 バージさんはそう言って踵を返して行ってしまった。

 相変わらず何言ってるか分かりにくい。



「んだば、めんこいリルにルラさ、こっちこいや」


「あ、はい」



 私たちは長老にそう呼ばれて奥の部屋に付いて行くのだった。



 * * *



「あんれま、お客さんかいのぉ~?」



 その部屋は居間らしかった。

 そして奥にお婆ちゃんがいたけどまた何言ってるかよくわからない。



「エルフの迷いっ子だど、難儀して不憫さ、うち泊めんけどええさね?」


「ほうか? ええさ、ええさ。困った時はお互い様さね」



 そう言ってそのお婆ちゃんは椅子を引いて進めてくれているみたいだ。

 私はお礼を言いながらその椅子に座る。



「ありがとうございます、私リルって言います。こっちは双子の妹でルラです。御厄介になります」


「あんれまぁ、ほんにめんこいさね。ええて、ええて、うちさ泊まんね」



 言いながらルラにも席をすすめ、お茶を入れ始める。

 ルラもお礼を言いながら椅子に座るけど、何故かお茶を入れたコップの数が一つ多い。



「ほんれ、飲みね」


「あ、ありがとうございます……」


「ありがと~」


 長老さんにも同じくお茶を出して、お婆さんはコップを祭壇だか神棚だか見たいのに持ってゆく。

 そこには裸の女性の姿で下半身だけ布のような物に包まれた像が飾られていた。



「魔王様、お茶だでね」



 そう言ってお茶をそこへ置いて拝んでいる。

 しかし私は聞き取りにくい言葉の中にはっきりとなんかやばそうなワードを聞き取った。



「まおう様?」


「ん? リルの嬢ちゃんは魔王様さしってんのけ? ドドスの街さみんな嫌がんだどもな」



 えーと、まおう様って、やっぱり魔王様って事でドドスの街とかだと嫌がれる存在のって事よね?

 名前からしてやっぱり「魔王」なのだろうけど、この村では信仰の対象にでもなっているのかな??



「すいません、エルフなんで人間族の習慣とかよくわからなくて。でも魔王様ってあの魔王様ですよね?」


「んだ、魔王様おっかねって聞くけんど、ご先祖様良くしてもらったらしいけんの、うちさ村は魔王様崇めっでっとね」



 魔王様崇拝する村って……

 エルフのお母さんに昔話で聞いた事あるけど、その昔エルフの村に魔王が襲ってきて大騒ぎになたったらしい。

 しかも転生するらしく何度もエルフの村は被害にあっていたらしい。

 それを崇拝する村ってなんかやばそう。

 それに毒キノコを薬にするとか危ない村に来てしまったのでは?



「ま、茶でもしばいてけろ」


「んだ、んだ」



 長老さんにお茶をすすめられているけど、よくよく見ればなんか怪しい色のお茶だ。

 まさか毒なんじゃ……



「いっただきま~す」


「え?」



 私が危惧しているとルラはそう言ってお茶を飲み始める。

 紫色でちょっとどろりとした感じで時折光の加減で赤や黄色の脂が浮いたような変色をする表面のお茶。

 

 なんか、とぉ~っても危険な香りがする。



「え、ええぇとぉ……」



 私はお茶を飲むルラに対して毒を「消し去る」準備をしていた。

 設定をルラにして対象を毒で実行の有無の確認まで準備していたのだけど……



「なにこれ美味しい!! こんなお茶初めて飲んだ!!」


「え?」



 ルラは嬉しそうにもう一度コップに口をつける。

 そしてごくごくと喉を鳴らしてそのお茶を飲む。


 見れば長老さんもお婆さんも同じようにお茶を飲んでいる。


 私の余計な危惧だったか。

 しかし覗き込むカップの中身はおどろおどろしい色をしている。

 本当に大丈夫か気になりながらも口をつけると……



「えっ!? なにこれ美味しい!?」



「マンドラゴの二十年物のお茶さね、ええ味してんしょ?」


 長老さんはにこにこしながらそう言っている。

 いやちょっと、今なんかとんでもない名前出してなかった?




 思わず長老さんを見てしまう私だったのだ。



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