9-2迷子
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
ここ何処っ!?(リル談)
「迷った……」
私とルラは何処か知らない森の中を歩いていた。
生前の感覚だと何処かに向かっていれば少なからずとも道か何処かには突き当たると思っていた。
しかしそれは日本と言う僻地にも人がすむような環境での話でこの世界でいったん迷うとそれはそれは大変であった。
「ううぅ~、もう三日も道に迷って森を歩いてるぅ~」
「全然森を抜けそうにないね~」
隣で歩いているルラはお気楽にそう言う。
確かに身の危険はほとんど無い。
魔物が出てもルラのチートスキル「最強」のお陰でまずは問題が無い。
そして毒だの何だのも私のチートスキル「消し去る」で対処できるからルラが対処しにくい魔物もサポートできる。
それだけではなく、最悪危なく成れば私のチートスキル「消し去る」で相手の脚とか武器とか消し去って動きを止める事も出来ると言う事に気付いた。
このチートスキルって確かに使いようによってはとんでもないわね……
おかげでもう三日も森の中をさ迷っているけど今のところ何とかなっている。
「問題は何時までもこんな所をうろついてはいられないって事だよね……」
「うーん、そうなんだけどやっぱり森の中って空気も良いし、ほど良い湿気があるから肌がカサカサにならないで痒くならないのは良いよね~」
そう言えばルラは乾燥肌で痒くなるんだっけ?
私は保湿でたまに水の精霊にお願いして霧吹きとかしてもらっているから気になっていなかったけど、元男の子のルラにはそう言う保湿の概念が薄いみたい。
前にやり方は教えたのに面倒がるんだもんなぁ~。
「うーん、暗くなってきたかぁ。今日はこの辺で野宿しようか……」
「うん、分かった。じゃあ薪拾ってくるね~」
今日も森から抜け出せそうにないし、あたりもうっすらと暗くなってきた。
上を見上げれば空も暗くなってきたので夕暮れなのだろう。
まあ、多少暗いのはエルフなので昼間と同じく見えるから問題は無いのだけど、休める時に休まないとよろしくない。
……ちゃんと寝ないとお肌にも影響あるしね。
「とは言え、流石にずっとこのままって訳にもいかないしなぁ……」
またまた土の精霊にお願いして暖炉やかまど、眠る為の土台とか作ってもらう。
魔法のポーチから調理道具や食材を取り出しながらご飯の準備をする。
「今はまだ食材があるからいいけど、ずっと森の中だったら食べ物も探さなきゃだよなぁ……」
完全に想定外だったので食材も常食用のが後一月分くらいしかない。
まだまだ余裕はあるけど、パスタとか魚醤とか各種香辛料とか特殊な食材は今後のエルフの村での生活を考えると何が何でも温存しておきたい。
「まだまだ余裕はあるとは言え、早いところ何とかしなきゃ……」
そう思っているとルラが戻って来た。
「お姉ちゃん、薪取って来たよ~」
「うん、ご苦労様」
ルラから受け取った薪をくべて火を付ける。
パチパチと炎が燃え出して焚火となるけど、こんな森の中にあった薪の割にはよく燃える。
まるで薪にする為に木を切っておいたように。
「って、あれ? 何この薪?? 大きさも長さもそろっている? しかもなんか乾いているし……」
「あ~、そっちの方に山になっておいてあった。誰のか分からないから少し貰ってきちゃった~」
いやちょっと待て。
こんな森の中で明らかに人の手が加わったような薪なんて普通置かれいる訳はない。
「ルラ! それって誰か人がいるって事だよ!? 近くに村とか家とか無かったの??」
「うーん、なんか木を切ったやつがたくさん置かれててキノコがいっぱい生えてた~。でも村とか家とか近くに無かったよ?」
完全に人為的にキノコ栽培か何かしている場所じゃないの!!
「ルラ、その場所覚えてる?」
「うん、あっち」
指さすその向こうに人がいるかもしれない。
流石に今行っても暗くなるから仕方ないだろうけど、明日の朝に早速行ってみよう。
「ルラ、もしかしたら人のいる場所に出られるかもしれない、明日その場所に行ってみましょ」
「うん、分かった。それよりお腹すいた、お肉~」
火に鍋をかけながら食材を入れて煮込み始める私の隣にルラはやって来てその様子を見るのだった。
* * * * *
翌朝、ルラが見つけたと言う薪置き場やキノコの栽培場所へ行ってみる。
その場所はあからさまに人の手が加えられた跡がある。
木を切り倒して切ってから積み上げたものや、その木を並べておいてキノコの栽培をしている物とか。
どう見ても人工物だった。
「やった、これで人里に出られそう!」
「うーん、そう言えば誰かがこうしないと薪やキノコにならないもんね~。気付かなかった~」
まあ生前の感覚ならどんな山奥に行ったって何かしら人工物があるもんだ。
以前登山した時には山の頂上にはしっかりと石碑とか標高何メートルとか言う人工物があった。
ああいうのって誰が運び込むのだろう?
しかしこの世界では圧倒的に自然の方が多い。
だから未開の地は勿論、人類未踏の地ってのもまだまだあるらしい。
そんな環境で人工物があれば人里が近いのではないかと思うのも当然である。
「後の問題はここへこれを作った人が来るのを待つしかないか……」
「近くを探してみないの?」
「下手に動いたらまた迷うわよ。見た感じ薪は定期的に取りに来てるみたいだし、キノコも摘んだ後がある。そのうち人が来ると思うの」
こういう時は無理をせず状況を冷静に判断するべき。
余りに闇雲に動くべきではない。
「そうかぁ~、分かった~」
そう言ってルラは薪の上に昇り周りの様子を見る。
私もとりあえずは近くの切り株に腰を下ろして一休みする。
「とにかくこれで助かった」
そう言葉が漏れた時にルラが私を呼ぶ。
「お姉ちゃん! 誰か来るよ!!」
それを聞いて私はすぐに立ち上がるのだった。
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