8-18鉄板亭の再開
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
さあ始めるぞぉ!!(リル談)
「さあ『鉄板亭』の新装開店だ!」
亭主さんのその声で鉄板亭の扉が開かれる。
それと同時に一気に女性客を中心としたお客さんたちがなだれ込む。
「ねぇ、ここではクレープ以外にも美味しいものが有るって本当?」
「あたし限定のジェラートお願い!!」
「新作のパンケーキがあるってほんと?」
お店に入ってきた女性客は次々に口早に質問や注文をしてくる。
そして私やルラ、メリーサさんの案内で席についてもらう。
「ほぉ、いきなり大盛況じゃの?」
「ウスターさん。いらっしゃい、こちらにどーぞ」
並んでいたお客の先頭にウスターさんもいた。
本来なら開店前に呼んで試食会をしたかったのだけど、ここを立て直してすぐにお店を始める方が良いだろうと言って一般客として来てくれた。
「これなら『鉄板亭』も大丈夫じゃろ。さて、その新作のパンケーキを頂こうかの?」
「はい、パンケーキ―入りました~!!」
私はオーダーを取りながら厨房に伝票を渡す。
このシステムも「赤竜亭」にいた頃のものを提案して始めたのでどんどんと注文とその処理が出来て大量のお客さんをさばき始めている。
何せスイーツはお客さん一人当たりの時間も短い。
どんどんさばきながら限定商品のジェラート売り切れの看板を外へ出す。
「え~、もう限定商品売り切れ?」
「マジか!? 俺楽しみにしてたのに!!」
「食えないとなると余計に食いたくなるな……」
外に待っているお客さんに謝りながら又のご来店をお願いすると、せっかくだから他のものを食べたいと言ってまた並んでくれる。
私は笑顔でサービスの果物水を外に並んでいるお客さんにも配る。
「へぇ、冷たい水に果物の汁を入れたのか。シンプルだけど美味いな」
「ちょうど喉が渇いていたんだ、こいつは助かる」
「今度うちでも試してみようかしら?」
お店初日なのでこう言った所で好印象は重要だ。
ここ二、三日は忙しいだろうから私もルラも手伝いをすると言っている。
まあ、一週間もすれば忙しいのも落ち着くと思うけどね。
「お姉ちゃん、オーダーお願い! いらっしゃいませぇ~!!」
ルラも「赤竜亭」の時の経験が役立っている。
結構器用にお客さんを捌いたりお皿を下げたり、間に合わないとクレープ焼きを手伝っている。
「うへぇ、うちがこんなに混むなんて初めて!」
「メリーサ、油売ってないで三番のお客さんおパンケーキあがったよ!!」
「ルラちゃん、クレープあがった!」
厨房も大忙し。
勿論ホールの私たちも大忙しだった。
こうして新装開店の「鉄板亭」は大盛況で初日を終えるのだった。
* * * * *
かぽ~ん
「ふぃ~ぃいいぃぃぃ、疲れたぁ~」
「いやぁ、まさか食材全部なくなっちゃうとは思いませんでしたね~」
「はぁ~、お姉ちゃんお風呂あがったらフルーツ牛乳!」
三人で銭湯に来ていた。
まさか夕方前にまでに食材が尽きてお店を閉める羽目になるとは思わなかった。
流石に買い出しに行く時間もなく、きょうは食堂部門を閉店させてもらって亭主さんは材料の買い出しに行っている。
おかみさんも片付けと明日の仕込みが有るので忙しい。
そんな中、疲れただろうと私たち三人だけは銭湯に行って来るように言われた。
「亭主さんやおかみさん、大丈夫かな?」
「大丈夫、大丈夫。お父さんもお母さんも大喜びだったよ。『鉄板亭』始まって以来の事だってね!」
「ウスターさんもいつの間にかお金おいて行っちゃったよね~」
なんだかんだ言ってみんな協力的だった。
唯一気になるのは「鉄板亭」の食堂に「エルフのお菓子」って看板が掲げられているって事かな?
実際エルフの村ではそんな美味しいものはないって言うのに……
「明日も頑張ろうね、リルちゃん、ルラちゃん」
「はははは、まあ約束しましたし今週いっぱいは手伝いますよ。でもその後は……」
にっこり顔のメリーサさんには悪いけど、私たちはここドドスの街を出る。
ドドスの街の南に港町があってそこからサージム大陸行きの船が出てるそうだ。
徒歩だと大体二週間くらいらしい。
私はお湯を両の手ですくって顔にかける。
なんかここドドスって最初は職人の街で嫌なドワーフがいるってイメージだったけど、しばらく住んでみたらそんな事は無かった。
みんな頑固ではあるけど優しいし、いろいろと気を使ってもらっていた。
レッドゲイルやユエバの町、そしてジマの国とかいろいろな所へ行ったけど何処もかしこもエルフのお父さんやお母さんが言う程怖い人たちばかりじゃなかった。
「ちょっと寂しいね…… でもリルちゃんたちには沢山助けてもらったし、これで『鉄板亭』は大丈夫だよ」
「へへへ、お役に立てて光栄です。そうだ、メリーサさんこの後はまたちゃんと生パンケーキの練習忘れちゃだめですからね?」
「うっ、あ、あれって結構難しいんだけどなぁ」
笑いながらそう言うメリーサさん。
でもこれは次の一手だし、どう頑張っても人気店の真似は出て来る。
後はこれらの品物に季節限定の果物を組み合わせた商品を教えておけば年間を通してその時期限定商品が出せる。
そこまで来ればもう大丈夫だろう。
もっともそこまでここドドスに滞在は出来ないけど。
「さてと、体も洗ったしお風呂で温まったしそろそろアレ行きましょうか?」
「そうだね、今は練習よりもアレだよね!!」
私とメリーサさんは立ち上がり「育乳の女神様式マッサージ」の部屋に向かう。
既に順番の札はもらってある。
今週いっぱいでここから離れるのだから念入りにマッサージを受けておかなければならない。
「ほんと、お姉ちゃんもメリーサさんもあのマッサージ好きだよねぇ~。そんなにおっぱい大きくしたいんだ??」
「ルラも最後にやってみる?」
「あたし嫌だよ~、あれっておっぱいの先ジンジンするし、頭がぼうっとするから嫌だよ~。お姉ちゃんたちは平気なの? 毎回終わった後真っ赤な顔して息が荒いけど??」
そ、それは……
「大丈夫よルラちゃん、毎回リルちゃんは二回はね……」
「メ、メリーサさんっ//////!!!!」
思わずメリーサさんを止める私。
そりゃぁ慣れて来ると気持ちいいからその……
「ふ~ん、お姉ちゃん二回もなんだぁ~」
「ル、ルラ?」
ま、まさかこの娘気付いているの!?
そ、そんな、ルラにはまだ早いと言うのに!?
「お姉ちゃん二回もマッサージ受けてるんだ、道理でいつも時間がかかるはずだ~」
「へっ?」
あ~。
う、うん、そう言う事にしておこう。
ニヤニヤしているメリーサさんを横に私は極力冷静さを保つのだった。
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