8-15リルとルラの先行き
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
なんか頭くるぅ!!(リル談)
それはエルフの村と連絡が取れなかった私たちに朗報でもあり、問題ともなる出来事だった。
「私たちのこの力、ファイナス長老に話したんですね?」
「ああ、悪いが先日の『鉄板亭』の襲撃で連絡する事にした。正直あんたらには悪いがジュメルに目をつけられそしてそれだけ特殊な能力を持っているんだ、早い所エルフの村に向かってもらいたい」
バーグさんはそう言って灰皿にタバコの火を消す。
つまりはここドドスにとって厄介者となる私に事情を説明して早い所出て行って欲しいと言う事だ。
幸いと言うか何と言うか、ここドドスでのジュメルの拠点は私たちによって壊滅させられた。
厄介な組織が壊滅してそしてそれを壊滅させた力を持つ私たちも早く出て行ってもらえればそれだけ「雑用」が減ると言う事だろう。
私はバーグさんの言いたい事を理解して彼を睨む。
「そう睨むなって。俺には俺の役割がある。ここドドスで女神信教に仇成す連中をお掃除するってな。勿論あんたらに対しても協力は惜しまないつもりだ。ただ、希望としてはキャラバンと一緒でなく単独でエルフの村を目指してもらいたい。あんたたちのその能力があれば大抵のことは対処できるだろう? それとこの提案はファイナス市長にも出してある。下手に迎えのエルフが来ても巻き込まれる確率だけが上がるんでな」
「なっ!?」
確かにジュメルに目をつけられている私たちと同行するだけで危険度は上がるかもしれない。
ファイナス長老はああ見えて結構現実派だ。
エルフ全体の利益を考えれば出迎えもやめさせるかもしれない。
「つまりどう言う事、お姉ちゃん??」
「私たちがジュメルに狙われているから早くドドスの街を二人だけで出て行って欲しいって事よ。そしてエルフの村からの出迎えも無いって言う事ね」
よく理解できていなかったルラは私のその言葉でしばし黙ってしまった。
「ジュメル…… そうか、メリーサさんたちにも迷惑かかっちゃうもんね……」
「悪く思うな、これでも最善を尽くしているつもりなんだ」
ぽつり、ぽつりとそう言うルラにバーグさんはそう言う。
それは確定事項で後は私たちが何時このドドスの街を出るかだけだ。
私はバーグさんを睨みつけながら聞く。
「教えてください、ジュメルについて」
「まあいいだろう。もともとは人類史が出来あがって早期の時代から戦いの女神ジュリ様を祀る信者たちの集団だったらしいが、途中から女神様の意図を歪曲して世界を滅亡に導こうとする破滅論者の集団になったと言う話だ。ただ厄介なのは技術力も財力もあってどうやら後援には貴族なんかもいるらしい。おかげで政治的厄介もたまに引き起こしやがる」
そう言ってジュメルについて語り始めるバーグさん。
この辺はカリナさんの説明にもあった。
なので概要は端折って一番聞きたいことを質問する。
「ジュメル七大使徒って何ですか?」
「ほう、そんな情報まで持っているか? 七大使徒はジュメルの各国支部に分散していると言われる現存で指導者たちだ。今のジュメルはこいつらが主軸になっているらしい。そしてあんたらが狙われることになった原因でもあるらしいな。デベローネと言う神父は知っているか?」
バーグさんにそう言われて私は考える。
はて、どっかで聞いた事があるような名前だけど誰だっけ?
「ええとぉ……」
「お姉ちゃん、あの最初に『賢者の石』とか持っていた人じゃない? あたしがぶんなぐって気絶させてカリナさんが拷問した人!」
「ああっ! あの人か!!」
完全に過去の人になっていて忘れていた。
そう言えばあの人も七大使徒とかなんとか言っていたっけ?
ん?
ちょっと待て。
そうすると魅惑だったアンダリヤもやっつけたから後残りは五人??
「流石に女神様に匹敵すると言われる力を持つ者だな。七大使徒の事も眼中にないと?」
「いやいやいや、変な人って印象は有りますよ? 関わり合いたくはないってくらいには」
私が真顔でそう言うと珍しくバーグさんは苦笑を浮かべる。
「俺がどんなに頑張っても七大使徒の尻尾すらつかめなかったと言うのにな。いや、余計な事を言ったか。忘れてくれ」
そしてまたまたたばこを引っ張り出しくわえながら話始める。
「でだ、今分かっているのは南の大陸、サージム大陸の水上都市スィーフと貿易都市サフェリナ共和国に一名ずつ、西のウェージム大陸のガレント王国、ノルウェン王国に各一名ずついるらしい。全部奴等の情報をもとにして分かった事だがな」
「本当に各国にいるんだ……」
「それだけ厄介な連中って事さ。そしてこの情報は奴ら全員に渡っていると思ってくれ」
そう言って立ち上がり私とルラに一つづつペンダントの様なものを渡して来る。
よく見るとそれには女神信教の紋章が刻まれていた。
「巡教者用の教会の印だ。これを持って女神信教へ行けば大概の事は協力が得られる。こいつはドドスからのモノとも分かるから持っていて損はない」
「これでどうしろと?」
紋章の刻まれたペンダントをぶら下げながらそれを見て私は聞く。
するとバーグさんは苦笑いして言う。
「この先、旅先で我々女神信教はあんたらに協力を惜しまないと言う事だ。飯も宿も教会に行けば何とかなる。そして協力できることは何でも手伝ってくれるだろう」
つまりは体の良い手切れ金みたいなものか?
なんかやり方が気に入らない。
とは言え、確かにこのままではまたメリーサさんたちに迷惑が掛かってしまう。
私はため息をついてバーグさんに言う。
「分かりました、『鉄板亭』が直り次第私たちはドドスの街を出て行きます。商業ギルドや冒険者ギルドに行くのもやめますね、カーネルさんの紹介状が無駄になりますけど」
わざと皮肉って言ってみるもバーグさんには全く通用しない。
「その代わり先々で教会によってもらえばもてなしはするさ」
「もてなしねぇ……」
一体どんなもてなしだと言うのか。
しかしこれで決まった。
私たちは立ち上がりペンダントを握りしめこの部屋を出て行くのだった。
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