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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第二章:転移
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2-8地竜買取

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


美味しいもの食べられる!!(ルラ談)


「地竜の買取とは本当か!?」



 いきなり大きな声でおじさんが建物から出てきた。

 そして中庭にある地竜を見て驚く。


「た、確かにこれは地竜。誰だこれを持ち込んだのは!?」


「ギルド長、お久しぶりです」


 驚き地竜を見ているおじさんにトランさんは挨拶をする。


「トラン? ではお前たちのパーティーがこれを?」


「うーん、ちょと違いますね。多分これって『女神の伴侶シェル』の仕業です」



「め、女神の伴侶ぉ!? まさかレッドゲイルに来てるんじゃないだろうな!?」



 大いにそっちの方が驚きが大きいおじさん。

 シェルさん、あなたって一体……



「それでギルド長、これだけ無傷に近い地竜なんだ、高値で買い取って欲しい」


「う、うむ、買取自体は勿論させてもらうが、その、女神の伴侶はどうなった? 場合によっては王城に知らせねばならんぞ?」



 ちょっ!

 何それぇ!? 


 お城に報告しなければいけない程シェルさんって問題なの!?



「ああ、それなら大丈夫ですよ。シェルはいませんから」


 おじさんはそれを聞いてから大きく息を吐く。

 そして地竜について話を始める。



「これだけのものだ、金貨二十万枚はするだろう。しかしそこまでの現金が今ないな」


「それならあるだけもらって残りは証書で良いですよ?」


 トランさんがそう言うとおじさんは手を出す。

 そしてトランさんと握手をして交渉が成立したようだった。


 トランさんは私たちににっこりと笑って手招きをするのだった。



 * * *



「はい? このお金を私たちに?」


「うん、一応ファイナス長老に連絡はして君たちは僕の保護下にいるって事が分かって村の方も一安心しているらしいんだけどね、ここからエルフの村までは相当な距離がある。だから迎えも容易じゃないんだよ」



 トランさんは金貨が沢山入った袋を私たちの前に置いてそう話す。


「だから君たちが此処レッドゲイルに滞在するあいだお金がかかるのでこれを君たちに渡すよ。君たちの取り分を金貨十七万枚。悪いけど僕たちにも少し分けてもらうけど良いかな?」


 トランさんはそう言って自分たち用の金貨が入った袋を私たちの目の前に出す。

 確か金貨二十万枚とか言っていたからトランさんたちの取り分がたったの三万枚?


 いやいやいや、十分お世話になっているし私たちの面倒まで見てもらうのにこんなにもらってしまっては申し訳ない。



「あ、あの、私たちにこんなにお金をよこしていいんですか?」


「もともとはシェルのせいで苦労しているんだし、僕らは単に君たちの協力で地竜をここまで持ってきただけだもの、むしろ多くとっちゃったかなって思ってる程なんだけどね」


「いえいえいえ! 助けてもらって、ここまでしてもらってるのにさらにお金までもらえるなんて……」


 とは言え、これってどのくらいの価値か分からないから困ってしまう。


「大丈夫ですよ。あなたたちのそれがあれば邸宅も買えますからね」



「え”!?」



 ロナンさんがエルフ語でそう話してくれている。

 私はぎぎぎっと顔を向けトランさんを見る。



「そ、それって大金なんじゃないんですか!?」



「まあ、大金だけど、君たちが此処レッドゲイルで生活していくのに必要だろ? 迎えだって今ファイナス長老たちがどうするか相談中だし、誰が迎えに来るか分からないけどそれまではここで大人しくしてもらうしか無いからね」

 

「うっ、ううぅ……」 


 そう言われ思わずうなってしまう。


 いくら一大事とは言え私たちの無事が伝えられればエルフの人たちだ、相談だって下手したら簡単に数カ月かかってしまう。


 それに迎えとか言ったってロナンさんの話ではここまで一年くらいはゆうにかかるらしい。

 迎えが来て一緒に村に帰るまで最低でも二年……


 エルフにしてみればなんてことないかもしれないけど、私たちの感覚はまだそのエルフに成り切っていない。



「え、あ、えーと……」


「ねえ、トランさんたちはこの後どうするの?」



 私が言い淀んでいるとルラが口をはさんできてトランさんに聞く。

 トランさんは笑って答える。



「取りあえずしばらくはお休みするよ。君たちのお陰で大金も入ったしこの街の案内もしてあげるね。仲間たちもしばらくはお休みで装備を買い替えたりしたいしね」


「一緒に居てもらえるんですか?」


「うん、次の冒険までは一緒に居てあげる。でも、こっちの世界の常識もちゃんと身に着けなきゃだめだよ?」



 トランさんがそう言ってくれるとなんかものすごく安心する。


 いくらあんな怪獣がいなくてベッドの生活が出来ると言ってもまだまだコモン語も上手く話せないし右も左も分からない。

 同族のトランさんがしばらく面倒を見てくれるってのは大変助かる。



「うーんと、あたし街をいろいろとみたい!」


「た、確かにここで生活するのならばいろいろ知っておかなきゃですよね…… ありがとうございます、トランさん」


「いいっていいって。じゃ、そう言う事でまずはお祝いだね。今日は赤竜亭で美味しいものを食べよう!」


「おいしい物!? わーい、お姉ちゃん、美味しい物だって!!」


「う、うん、分かりました。でも今日くらいは私たちがお金払いますね。お礼と言うか、何と言うか」



 この大金がどれ程高は分からないけど感謝の意味を込めて今晩くらいは私たちが出すべきだ。

 私がそう言うとトランさんはにっこりと笑って「じゃあお願いするね」と言って後ろで待っている仲間の人たちに説明をする。

 すると皆さんも大いに喜んでいるようで早速飲みに行くぞとか言っている。



 うーん、しばらくここで生活するのだ。

 皆さんともっと仲良く成っておくべきなんだろね。




 美味しいものが食べられると大はしゃぎのルラを見ながら私はトランさんの横顔を見るのだった。


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