8-11出店で大繁盛
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
やっぱシェルさんだよね~?
相変わらずシェルさんの名は使えるわね(リル&ルラ談)
「ほう、大盛況ではないかのぉ」
今日も出店でクレープを売っていると様子を見にウスターさんがやって来た。
そして頼んでおいたあの道具も持って来てくれたようだ。
「ほれ、クレープの焼き台持ってきたぞ。何処へ置くかの?」
「ああ、ありがとうございます。こっちへお願いします!」
持って来てもらった追加のクレープ焼き台。
正直予想以上に売れ行きが良くて試算したらもう一台作ってもらっても十分に採算が取れそうだと言う事だった。
確かに魔鉱石とか魔石を使っているので見積もりは高かったけど、今の勢いで行けば十分にやっていける。
「リルちゃん、次のオーダー入ったわよ!」
「はいはい、ルラ持って来てもらったクレープ焼き台洗って。洗い終わったら拭いてすぐこっち持って来て! 準備できたらメリーサさんも焼くの手伝ってください、ルラはその後オーダー取って!」
もうね、ここにいる全員がてんてこ舞いなほど忙しい。
まだお昼前だと言うのに出店の前には行列が並んでいる。
「お姉ちゃん洗い終わった!」
「よっし、メリーサさん試し焼きしますからお客さんのオーダーお願いします!」
「分かった、えっと次はイチゴクレープね?」
ルラが新しい焼き台を洗い終わったので私はすぐに魔力を込めて加熱させる。
そして布に染み込ませた油をすっと塗ってしばし待つ。
煙が出始めたら今度は奇麗な布でさっと拭いて奇麗にしてからもう一度加熱させる。
こうやって初めての時は鉄の表面を慣れさせないといけない。
乾いた焼き台の表面は脂が染み込んで黒々となる。
「よっし、それじゃ試し焼きします」
言いながらクレープの元をお玉ですくって焼き台の上に載せてすぐにトンボで引き伸ばす。
すぐにクレープ生地は焼けてへらで剥がしながら裏返す。
そしてさっと焼いてからまな板の上に降ろして近くにあったイチゴ味でクレープを作ってみる。
「出来た。ウスターさんこれ食べてみてください!」
「何じゃ、儂にくれるのかの? ではありがたくいただこうとするかの、はむっ!」
もにゅもにゅ……
「うむ、うまいぞ。いつものクレープと変わらんの」
「そうですか、よっし、それじゃぁ新しい焼き台も使い始めましょう!!」
どうやら新しい焼き台も大丈夫のようだった。
なので即戦力に投入。
私もクレープ焼きに入ってメリーサさんと一緒にお客さんお注文を処理してゆく。
「お姉ちゃん、とりあえず桃三つでオーダー終わり!」
流石に二人で処理し始めると一気に並んでいるお客さんの分が処理できる。
ルラの取ってきたオーダーを私とメリーサさんで作ってお客さんに手渡してひと段落。
「ふぅ~、とりあえずお客さんさばき切れたわね、ちょっと休憩入ろうか?」
「そうですね。はぁ~、ウースターさんが新しい焼き台持って来てくれて助かりましたよ~」
メリーサさんと私はそう言って出店の後ろに置いておいた椅子に座って一息入れる。
「うむ、ここで出店を開いたの大正解じゃな? クレープの味も同じで安心したわい」
がはははははとウスターさんは笑って残りのクレープを口に放り込む。
そして私たちに頑張るよう言って行ってしまった。
「はい、お姉ちゃん、メリーサさん」
ルラは私とメリーサさんに飲み物を手渡してくれる。
「ありがとう。はぁ~、もうすぐお昼だからまたお客さんが来るわね」
「メリーサさん、まだ材料大丈夫ですか?」
焼き台の増加でお客さんもさばけるようになったからこれで行列もだいぶ抑えられるだろう。
売れ行きも上々だけど、お店の食堂が直ればこの出店でのお仕事も終りになる。
そう思いながら飲み物を飲んでいるとなんかガラの悪い男の人が二人やって来た。
「おうおう、ずいぶんと繁盛しているみたいじゃねーか?」
「だぁ~れの許可取ってこんな所で商売してんだぁ? あん?」
あー、こっちの世界でもこう言ったのがいるんだ。
私がそう思っているとメリーサさんが懐から許可書の紙を取り出して見せつける。
「ちゃんと役場で許可取ってますよ? 公共の場の使用料もちゃんと払っているので問題ありませんけど?」
「んなこと聞いちゃいねぇえんだよ!! 俺らの縄張りで店出しておいて挨拶の一つもねえってのはどう言う事だい!?」
「事と次第によっちゃぁただでは済まさねーぞ?」
お約束のセリフを言って凄む二人。
メリーサさんはキッとなってこの二人を睨む。
「どこのどなたか知りませんが役場にちゃんと許可取ってるんですから問題ありません!」
「んだとぉ、このアマぁっ!!」
「誰に物言っていやがるんでぇ!!」
私はため息をつきながらさっと立ち上がりクレープを急いで二つ焼き上げる。
「まぁまぁ、そちらさんがどなたか知りませんがこれはお近づきの印です。どうぞお代は要りませんから食べてください」
にっこりとほほ笑んで私はそう言いながらクレープ二つを差し出す。
「んだとぉ!? こらアマ、ふざけてんのか!?」
「いえいえ、いたって真面目にお話してるんですよ? でないと私も『女神の伴侶』さんにお話しないといけませんけどね?」
更ににっこりと小首をかしげて笑顔でそう言うと流石にこの二人も唸って動きを一瞬止める。
「お、おまえエルフだな…… まさか『災いを呼ぶエルフ』じゃないだろうな??」
「いや、シェルさんと一緒にされても困るんですけど……」
思い切りジト目で見ると二人はびくっとなってそろそろと私が差し出したクレープを受け取る。
そして一歩二歩と後ずさりをしながら言う。
「ま、まあいい。とにかくここでこれ以上デカい顔するんじゃねーぞ?」
「お、おい、行こうぜ……」
そう言ってその二人はそそくさと店を離れて行く。
「ふう、行ったか。流石はシェルさん」
「リルちゃん、あれって大丈夫なの? この辺だとあいつらの後ろには盗賊ギルドあたりが付いているかもしれないよ?」
「まあ、その時はまたシェルさんの名前を出させてもらいますよ。しっかしシェルさんって本当に此処でもなんかやらかしてるんですね~」
国境の砦で災害級あつかいされていたから出任せで言ってみたけど効果てきめんだった。
シェルさんには悪いけどこの位は許してほしい。
シェルさんとエルハイミさんのせいでこんな所にいるのだから。
「ほう、『女神の伴侶』の名を出すか。エルフがこのドドスにいると言うだけで珍しいと言うのにな」
いきなりその声が聞こえて来た。
さっきまで全くと言って良いほど人の気配なんて無かったのに!
「お姉ちゃん!!」
すぐにルラが私と声のする方の間に入り身構える。
「誰!?」
私の誰何にその声の主は物陰からゆっくりと出てくるのだった。
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