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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第八章:ドドスでのエルフ料理?
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8-5クレープの焼き台

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


クレープうまぁ~(ルラ談)


 初めてクレープを食べたのは何時だったろう?


 確か小さな頃お兄ちゃんがお祭りか何かで食べていたのを分けてもらって、それがあまりにも美味しくて一気に虜になったような気がする。


 勿論その後は私だって女の子。

 何かにつけて友達ともよく食べに行ったものだ。



 そんな事を思いながら目の前のクレープ焼き台を見る。



「どうじゃ? なかなかの出来栄えじゃぞ?」


 満足そうにそう言うウスターさん。

 髭を撫でながらニッコリ笑顔でいる。



「もうできたんだ……」


「早いねぇ~」


「ええとぉ……」



 そりゃぁ誰だって驚く。

 ちょっと待っていろとか言われて待つ事しばし、出来たから来いと言われ驚き工房へ行くともう出来上がっていた。



「あの、これってまさか作り置きとかしてたんじゃ……」


「何を言うかの? たった今魔鉱石を錬成して魔石による加熱システムを組み込み完成したんじゃぞ」



 そう言いながらポンポンとクレープの焼き台を叩くウスターさん。

 いや、魔鉱石からって……



「まあこれもみな女神様からもらったこの『十二得君』のお陰なんじゃがな」



 言いながら片手に収まっている十得ナイフみたいなのを取り出す。

 こんな小さなもので鉱石からこんなクレープの焼き台を作ってしまえるなんて正直驚きだ。


「凄いですね、魔鉱石からクレープの焼き台を作ってしまうなんて」


「凄いじゃろ? もっともこれを扱えるのが今現在儂だけと言うのが問題での。おかげでまだまだ現役で仕事をさせてもらっておるわい」


 がはははははと豪快に笑ってそう言うけど、絶対死ぬまで現役職人でいる口だ、これ。

 そんな職人気質を目の当たりにしながらも出来あがったクレープの焼き台を見せてもらう。


 台自体はそれほど大きくはない。

 ちょうどお鍋なんかを乗せるiHクッキング位の大きさで私たちでもなんとか持ち運べそうだ。



「使い方じゃが、こうして焼く寸前にここのクリスタルに手を掲げると任意で加熱がされる。その時に数十秒分の魔力を吸い取られるが気にならん程度じゃろう。色が変わるまで一定の温度で加熱をするようにしてある。熱加減は手をかざす時に決められるが高熱になるほど必要となる魔力は大きく成るから気をつける事じゃな」


 そう言ってウスターさんは自分でそのクリスタルに手を掲げる。

 すると青いクリスタルはオレンジ色に変わり上板の部分が過熱される。

 私は上板に手をかざしてみると熱を感じる。

 しかしそれは十秒くらいで熱が冷め始めてしまう。


「あの、私もやってみていいですか?」


「勿論じゃ、やってみるがええ」


 許可をもらったので試しに二十秒くらい、温度もちょうどクレープが焼けるくらいの温度にと念じて手をかざす。

 すると確かに魔力を吸い取られる感じがするけどそれはほんのわずかだった。


 途端にクリスタルの色がオレンジ色よりやや赤に近く成り、上板が過熱される。

 そしてそれは私が念じた通り二十秒くらいで冷め始める。


「いい感じですね。時間も温度も最初に念じるとその通りに加熱される。上板全体が均一に加熱されているみたいだし、これで美味しいクレープが焼けそうです!」


 にっこり笑って私がそう言うとウスターさんは満足そうに頷いて言う。


「よし、それではそれを持って帰るがいい。今晩当たり『鉄板亭』に飯を食いに行くついでにそのクレープとやらも食わせてもらえるかの?」


「はい、試作ですけど色々作ってみますね!」


 こうしてクレープの焼き台も手に入り、いよいよクレープを作れる準備が整うのだった。



 * * * * *



 「鉄板亭」に戻りクレープの焼き台とか竹とんぼをよく洗ってクレープを焼く準備をする。

 

 クレープの生地の元を作り、生クリームを作る時にわずかにバニラエッセンスを加えたり、イチゴやブルーベリー、リンゴにレモンのジャムなんかも有ったのでそれも準備する。


「後は果物も適度な大きさに切っておいてっと」


 切り終わった果物なんかはトレーに入れておく。

 シーナ商会で買って来ておいた生クリームの絞り器に出来あがった生クリームを入れて準備完了。



「さあ、いよいよクレープ作りますよ!」


 私はそう言いながら焼き台の前に行く。

 手をかざし、十秒くらい、温度も適温に設定して過熱を始める。

 そして準備していた生地をお玉ですくいその上に流し込む。


 

 さあ、ここからが勝負だ!



 すぐにあの竹とんぼみたいなのでくるりと引き伸ばすとすぐに生地が焼き上がる。

 焦がす前にヘラで引きはがし、裏返す。

 そしてまたすぐにへらでそれを引きはがし隣に置いたまな板の上に載せる。半分に折って半月上にしてとりあえずイチゴのジャムをスプーンですくい取り塗る。

 そしてそこへ生クリームをすっと絞り出し、準備していた果物を並べる。


 後はそれらをくるくると巻いて出来上がり!



「はい、クレープイチゴ味果物トッピング出来上がりです!」



 おおぉ~!



 メリーサさんもルラも出来あがったクレープを見て声をあげる。

 私は続けて後二つ焼き上げ同じようにクレープを作る。

 

 三つとも手が汚れない様に紙で包んでやって手渡す。



「さあ、食べてみましょ!」


「うん、お姉ちゃん、いただきま~す!」


「おいしそう、いただきます!」


   

 ぱくっ!

 


「んっ!」


「ふわっ!」


「んんんんっ!!!?」



 クレープだった。

 私の知っているあのクレープだ。


 薄く焼き上げられた生地はもちもちしっとり。

 それが何枚かに合わさって真ん中に包んだイチゴのジャムと生クリーム、小さめに切った果物をまとって一気に口の中で踊り出す。


 ふっと香るバニラエッセンスのお陰で、生地も生クリームもとても美味しい。

 そこへイチゴのはっきりとしたジャムの甘みが溶け出し、小さく切った果物たちもその味を邪魔しない程度に自己主張を始める。


 

 まさしく女子御用達のあの味。


 

「美味しぃ! イチゴ味のクレープだーい好き!!」


「これ、なんておいしさなの。本当にあのパンケーキの生地なの? 全く別物。それに何この香りのよさ。生クリームなんてめったに食べられないモノも以前食べたものよりずっと美味しい。なんなのこれぇ!!」


「もごもご、ごくん。うん、これこれ。クレープ出来ましたね」



 喜ぶルラ、初めてクレープを食べて驚きに目を丸くするメリーサさん。

 そして予定通りのクレープが出来て満足な私。


 とりあえず目的のクレープは出来た。

 後は色々試して安定供給できる種類を決めればクレープは完成かな?




 私はキャッキャ言いながらクレープを食べるルラとメリーサさんを見ながら久々のクレープに舌鼓するのだった。



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