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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第八章:ドドスでのエルフ料理?
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8-3ドワーフの知り合い

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


甘味じゃと!?(ウスター談)


 クレープの生地をおいしく作るには均一の薄さでしかも安定した温度で焼き上げなければならない。



 そんな課題を普通のフライパンで行うのはかなり難しい。



「焼く機材とか竹とんぼとかって物が必要なら作れば良いんだよ。だってここはドドスの街なんだから!」



 メリーサさんは笑顔でそう言うけど、いくらドドスでもそう簡単に行くとは思えない。

 竹とんぼみたいなのは作れるかもしれないけど、問題となるクレープを焼く台はそうそう簡単にはいかない。

 前世の世界のように熱線か何かで安定して全体の温度を保てるようなモノでもあればいいけど……



「メリーサさん、作れば良いと言うけどそんなに簡単に行くのでしょうか?」


「大丈夫、腕の良い職人さんをお父さんが知っているから。ちょっとお父さんに聞いてくるね!」



 メリーサさんはそう言って行ってしまった。

 まあ、難しいお話だろうけどその職人さんに会って試してみるのも手だろう。


 私たちはメリーサさんが戻ってくるまでに普通のフライパンであれやこれやと試し焼きを続けるのだった。



 ◇ ◇ ◇



「えーと、この辺のはずなんだけど……」



 メリーサさんのお父さんの知り合いという職人さんの工房がこの近くにあるそうだ。

 かなりの腕の持ち主で作れぬものは無いとまで亭主さんは言い張っていた。


 

「えっと、その職人さんってそんなに凄いんですか?」


「お父さんの話だと昔知り合ってその後いろいろと付き合いが出来てうちのお店の名前を決めてくれたのもその人らしいの」



 お店の名前って……

 私は思わず元の大きさに戻ったメリーサさんの胸を見る。


 

「リルちゃん、なんか今もの凄く悪意を感じたのだけど……」


「気のせいですよ」


 メリーサさんがジト目で私を見るので慌てて視線を他へ移す。

 まあ、何が言いたいかは言う必要もないし。



「まあいいわ。今はそのクレープを完成させることが優先ね。あ、ここだ!」



 大通りから少し入ったところにレンガでしっかりとしたたたずまいの工房が見えて来た。

 かなり大きな工房だったけどメリーサさんが教わった場所に間違いないらしい。

 ちょっと驚きながらもメリーサさんを筆頭にその工房の扉を叩く。



 どんどん!



「すみませーん、こちらにウスターさんって方いらっしゃいますか?」



 しばし沈黙。

 

「居ない訳じゃないと思うけど、どうしたのかな?」


 言いながらメリーサさんがもう一度扉を叩こうとしたらガチャリと言う音がして扉が開かれた。


「誰じゃの? 儂を名指しで呼びつけるのは?」



「え”っ!?」



 私は出てきたその人物を見て思わず変な声が出てしまった。

 それもそのはず、出てきたのは真っ白な髭を携えたドワーフだったのだ。



「えーと、ウスターさんですか?」


「いかにも、儂がウスターじゃが嬢ちゃんは一体誰じゃ?」


 深いしわが多いその眼を見開きそのドワーフはメリーサさんを見る。

 するとメリーサさんは亭主さんから預かった手紙を出しながら自己紹介をする。



「私、『鉄板亭』の娘でメリーサって言います。お父さんにここにいるウスターさんにお願いすれば何でも作ってもらえるって紹介されてきました!」



 そう言ってぺこりと頭を下げる。

 そのドワーフはメリーサさんの手紙を受け取りながらしばし考えこむ。


「『鉄板亭』…… おおっ! あの坊主か!! すると嬢ちゃんはあの坊主の娘か!? おお、こんなに大きく成って、ボウズは元気かの?」


「え、ええぇ、お父さんは元気ですけど私お会いしましたっけ?」


 困惑するメリーサさんにそのドワーフは大笑いしながら言う。


「がーはっはっはっはっはっ、覚えておらんのは無理もない。お前さんと会ったのはまだ赤ん坊の頃じゃからな。あの坊主、子供が生まれたと言って大はしゃぎでの。その時に宿屋を始めると言うから儂が『鉄板亭』という名をつけたやったのじゃよ。絶対に何があっても跳ね返す程の力のある宿屋になってもらいたくての!」


 長い白い髭を撫でまわしながら目を細めてそう言う。

 なんか孫見るお爺ちゃんみたいね?


「しかしそうするとこの手紙は何じゃ?」


 言いながらそのドワーフは封を切って懐から眼鏡を出して読み始める。

 そして少々渋い顔をしてから眼鏡を外しメリーサさんを見る。


「何じゃ、あまり『鉄板亭』は儲かっておらんのか? それで客引きで儂に協力を頼むと?」


「はい! そうなんです。今『鉄板亭』では女性客を取り込むために『エルフ料理』と題して甘味処で集客をしようとしてるんです!!」



「エルフじゃとぉ?」



 少々興奮気味のメリーサさんから目を離し、初めてその後ろにいる私たちに気付くドワーフ。

 私たちを見てから目を細めて言う。



「このドドスにエルフの客人とは珍しいの? シェルの奴が無茶な注文しに来おったがまさかその催促ではあるまいな?」



「シェルさん? シェルさんここへ来てたんですか!?」



 意外な人物から意外な名前が出る。

 驚きのあまり私はそう言ってしまった。


「何じゃ、シェルとは別口か? まあいい、こんな所で立ち話もなんじゃから中に入るが良い」


 そう言ってそのドワーフはとっとと中に入ってしまったのだった。

 私たちは顔を見合わせてからその工房へと足を踏み入れるのだった。



 * * *


 

 工房の中では何やら複数の職人さんが作業を進めているのだけど、もの凄く大きなモノを作っている様だった。



「凄いね、工房って言うからこれほど大きなモノ作っているとは思わなかった」


「なんだろうね~ あんなに大きなモノって?」



 作業を横目に引き連れられて行く別の小部屋へと向かう。

 そして中へ入ると一応は応接になっているようでソファーとかテーブルが置かれていたけど周りに図面だか資料だかいろいろの物が積みあげれれていた。



「えっと、ウスターさんお忙しいのですか?」


「うん? まあ忙しいと言えば忙しいがの。そもそもあんなデカ物を注文しに来るシェルが悪い」



 あー、シェルさんここでも何やらかしたのよ?



「あ、あの、シェルさんってここでも何かやらかしてるんですか?」


「ん? なんじゃそっちのエルフの嬢ちゃんは知らんのか? まあこれは女神様に関わる事じゃからエルフ族には話が行っておらんのかもしれんの」


 そう言ってそのドワーフ、ウスターさんは近くにある図面を引っ張り出す。



「『鋼鉄の翼』と呼ばれる空飛ぶ船じゃよ。天界とこの下界を行き来する為のモノらしい。全く、すべて魔鉱石を使い、どう言った原理か知らんが魔力核何ぞと言う訳の分からんもの持ち出してきおる。言われた通りに魔鉱石を加工するのに女神様から『十二得君』なるこれまたとんでもない道具まで渡されて断り切れん仕事じゃよ」



 ぶつぶつとそう言いながら見せてもらった図面はあからさまに前世でお兄ちゃんがプラモデルの説明書なんかにあった正面とか横とか上からとか下からとかが書かれたものだった。

 あの時ロボットのそんな図面みたいな説明書見せられて「かっこいいだろう?」とか言われていたけど私に理解なんか出来っこない。

 ただ、こう言う書き方はその外観とかが良く分かると言う事だけは理解できた。



「うわぁ~船に翼がある~」


 ルラはそれを見ながら目を輝かす。

 うん、この辺は前世の影響か?

 やっぱり元男の子だったからか?



「ふむ、そっちのエルフの嬢ちゃんはこれが分かるか? 少なくとも世界でただ一つのモノになるじゃろう。シェルの奴が言うには今後数年に一度下界の選ばれし者たちを天界に招待し、女神様のご意思を伝えると言う事をするそうじゃ。しかもそれをここドドスで行うと言うからのぉ。領主も公王もそして神殿の司祭も大はしゃぎじゃよ」



 ウスターさんはそう言ってカップに人数分のお茶を入れて出してくれる。


「まあ、そんな訳で忙しいと言えば忙しいのじゃが完成にはあと数年はかかるじゃろ」


 そう言って相向かいのソファーに腰を下ろしお茶を飲む。



「さて、それで嬢ちゃんたちは儂に一体何をさせるのかの?」


「はい、それはこっちのリルちゃんから」


 ウスターさんに本題を聞かれてメリーサさんは私に話を振る。

 私は頷いてからまずは自己紹介から始める。



「私はリル、こっちは双子の妹のルラです。訳あってエルフの村からイージム大陸に飛ばされて村に帰る途中なんですけど、縁あって『鉄板亭』を手助けする事になりました。それで『鉄板亭』でクレープと言う食べ物を作る為の道具が必要になるんですが、ちょっと難しいかもしれないのです」


 私がそう言うとウスターさんは目を細め言う。


「ほう、難しいかもしれんじゃと? で、一体何が欲しいんじゃ??」


 職人気質のせいか「難しい」という言葉にやたらと反応する。

 私は一呼吸おいてから何か書けるものが無いかと聞くと紙と黒色の石みたいなのを手渡される。


 多分煤か何かだろうと思い私はその紙にお兄ちゃんのプラモデルの説明書やさっきの図面を思い浮かべながら絵をかいてゆく。



「えっと、一つ目は薄く引き伸ばす為の道具。もう一つはそれを焼くために安定して熱が伝わる平たい淵の無い焼き台です」


 書き終えてそれを見せるとウスターさんは首を傾げる。


「なんじゃこりゃ? 引き伸ばすのに真ん中に棒があるへら? 淵の無い平たくて大きな焼き台??」


「はい、これがあるとクレープと言う甘いお菓子が出来るのです」



「なに? 甘い菓子じゃと!?」




 甘いお菓子という言葉にウスターさんはやたらと反応するのだった。    



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