8-1ドドスでのお料理
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
さて、何を出したもんかな?(リル談)
大いなる誤解を受けながらも私はここ「鉄板亭」でお料理のレシピを行事となった。
「とは言え、一体どんなものが必要なのやら。それに何度言ってもエルフ料理じゃないと聞いてもらえないし……」
何故か三人ともエルフ料理にこだわっている。
でも実際に本物のエルフ料理なんか出したらみんな唖然とするだろうなぁ……
「お姉ちゃんどうしたの?」
「うーん、『鉄板亭』のお料理手伝うって約束したじゃない? でも何を作ったらいいやら……」
「メリーサさんがエルフ料理って言ってたから、エルフ豆の塩茹ででも出せばいいんじゃないの?」
「ルラ、本気でそれ言ってる? あんたまたあれを連続で食べたい??」
「う”っ」
ルラは簡単に言うけど例えばエルフ豆を連続三日食べてみよう。
二日目でもう当分見たくもなくなる。
それがどんなに新鮮でおいしくても。
「流石に連続は……」
「でしょ? だからエルフ料理なんか出せないってば」
私がそう言うとルラもうーん、うーん、と唸り始める。
「じゃあさ、スパゲティとかは?」
「メリーサさんさっぱりしたのが良いって言ってたじゃないの」
要求を考えると意外とパスタは油っこい。
確かに女性も好きな人いるけど、女性の好みはクリーム系とか新鮮な野菜と使ったベジタブル系、それと海鮮系かな?
しかしどれもこれもさっぱりではない。
「じゃあ、ジマの国で作ったやつ!」
「あれも魚醤とか出汁があって出来るものなのよ。ここドドスで手に入ると思う?」
ドドスは香辛料が豊富らしいけど、ああいった「出汁」に使えそうなものはない。
とすると一体何を作ったものか。
「取りあえずメリーサさんに聞いてみようよ!」
考えるのが面倒になったらしいルラは矛先をメリーサさんに変えるのだった。
* * *
「ドドスの女性はどんなものが好みかって? うーん、それこそ人によるかなぁ?」
参考までにメリーサさんにドドスの女性の好みを聞いてみた。
しかし帰ってきた答えは何とも言い難いものだった。
「えーとじゃあ人気のある食べ物とかは?」
「うーん、ここだと職人さんメインで女性客は少ないのよね。外で食事というよりも自宅で食べる人の方が圧倒的に多いのよね~」
駄目だこりゃ。
もともと外食の意思が少ないんじゃ何が人気あるかも分からないし、その習慣自体が無いわけだ。
だとすると女性客が外にご飯食べに来るなんてよほどのことが無いとないわけだ
。
だもの、味の濃い職人好みの料理じゃ女性客に受けるはずがない。
「うーん、女の子が好きな食べ物かぁ…… あ、あたしフルーツ牛乳大好き!」
「いや、ルラの好みを言われても…… ん?」
参考になりそうにならないルラのその一言に外食にあまり接触の無い女性客にも好まれそうなモノ。
甘くて美味しいモノ。
「それだ! ルラ、それよそれ!!」
「え? なに? フルーツ牛乳??」
ルラのその言葉に私はひらめきを得るのだった。
* * * * *
「ヨーグルト? そんな酸っぱいモノ何にするの?」
ここドドスにはあのケバブのヨーグルトソースがあった。
であればヨーグルト自体は存在するのでそれを購入してシーナ商会に行ってバニラエッセンスを買って来て、そしてここドドスで手に入りそうな甘味の強い果物も手に入れる。
「取りあえず女性客が好みそうな甘味物をどんどん作りますよ!」
私は言いながらヨーグルトをボールに入れて練り回しソース状にする。
そこへバニラエッセンスと蜂蜜を入れて甘みの強い果物を一口大に切って入れる。
そして水の精霊にお願いしてボールの周りをよく冷やして、ミントの葉っぱを乗せれば!
「出来た、フルーツヨーグルト!」
シーナ商会で見繕って来たガラスの器にそれをよそってメリーサさんの前に置く。
メリーサさんはそれをまじまじと見て首をかしげる。
「私ヨーグルトって苦手なんだけどなぁ~ あの酸っぱいのが苦手で……」
「まぁまぁ、そう言わず冷えているうちにどーぞ」
私にそう言われメリーサさんは仕方なくスプーンで口にそれを運ぶ。
「えっ!?」
口に入れた途端メリーサさんの表情が驚きのそれに代わる。
「なにこれ!? 美味しい!! さっぱりしているのに甘くてまろやかで、そして果物が良いアクセントになっていて……」
「うわぁ~美味しい。お姉ちゃんこれって牛乳入れて固めるあのお菓子みたい!!」
ルラもしっかりと味見しているけど、確かに牛乳入れてかき混ぜるとドロドロになるあのお菓子に似ているかも。
プルプルとしたその食感も似てるかな?
「ヨーグルトって酸っぱくて味気ないと思ったのに、なにこれ? それに何の香り?? もの凄く美味しい!!」
「バニラエッセンスって言う香料ですよ。シーナ商会に問い合わせしてみたら売ってたもので。なんでもウェージム大陸でしか売ってないとか」
バニラエッセンスなんてものまであるとは思わなかったけど、これがあるのと無いのでは雲泥の差となる。
それに女性でバニラエッセンス入れたものが苦手な人の方が少ないのじゃないだろうか?
「どうですか? こう言った物ならドドスの女性も好むのでは?」
「うん、これ良いよ! お食事というよりはデザートみたいだけど、これなら女性受けするよ!!」
うんうん、どの世界でもスイーツは女子の御用達。
そうなると方針は固まった。
スイーツをメインとした品物で女性客を呼び込めばいいわけだ。
「よぉ~し、それじゃぁどんどん行きましょうか!」
「お姉ちゃん、あたし次クレープ食べたい!」
「なにそれ!? 聞いた事無いけどなんかそそられる響き!!」
やたらとテンションが上がるルラとメリーサさんを見ながら私は次なるデザート、クレープの必要なモノを考え始めるのだった。
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