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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第七章:夢の中で
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7-2知られてしまった秘密

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


えっと、なんだっけ??(リル談)


 何故この声はそんなどうでもいい事を聞いてくるのだろうか?

 


 そんな疑問が湧いては消え、そしてまた他の疑問が湧いては消える。

 彼女の声は頭がぼうっとする私に色々と聞いて来ている。



『次に何故あなたたちはここにいるの?』


「それはエルハイミさんのせい。私たちは巻き込まれてこっちへ飛ばされて……」



 そうだった。

 私たちは巻き込まれたんだ。

 エルハイミさんとシェルさんにくっついていたらこっちに飛ばされてそして……


 そしてトランさんたちに出会い、お嫁さんに成れなくてレッドゲイルを離れユエバの町に来る前に魔物にさらわれ、カリナさんたちに出会って……



「そして二人目のエルハイミさんに出会って逃げられてコクさんと……」



 こうして話していると何かこの一年色々あったなぁ。

 エルフの村で十五年住んでいてもほとんど変わる事の無い生活だったから思考自体も止まっていて榛名愛結葉だった頃から成長した気がしない。



 ……ちょっと待って?

 私ってもしかして生前と合わせるともう三十三歳!?



 うそっ!

 何それっ!?


 花も恥じらう女子高生だったのに三十路過ぎのおばさん!?



『?』


「そ、そんな事認められない…… 認めちゃダメなのっ!!」


 女性に年齢を聞くのは勿論タブーだけど、自分でそれに気づいた時の衝撃程ダメージが大きい事は無い。

 私は思わず今の考えを「消し去る」と念じてしまった。


 

 そう、そんな事は考えなかった、あってはならない事だった!


 今の私はエルフで少女。

 まだ生まれてからたったの十六年しか経っていないぴちぴちの女の子なのっ!!



『なっ!? そんな馬鹿な!!』


「今の事無し! 『消し去る』!!」



 思わずそう叫ぶといきなり頭がすっきりとしてくる。

 そして気が付く私。



「あ、あれ?」



 驚き目を見開くとそこには私に手をかざしていたアンダリヤさんがいた。

 アンダリヤさんも驚きに目を見開いているけど、どうしたと言うのだろうか?


 と、アンダリヤさんの指にはまっている指輪が目に付く。



「うううぅ、なんだったんだろう、今の? えーと私は……」


 軽く頭を振ってから起き上がろうとするとアンダリヤさんが慌ててその場から飛び退く。



「馬鹿な! 完全に我が支配下だったのに!? どう言う事だ!?」



「えーとぉ……」


 頭がすっきりしてはいたけどなんか余計な事をべらべら喋っていた気がする。

 そして私に質問をしていたあの声は間違いなくアンダリヤさん……



「あれ? そう言えばその指輪って…… 賢者の石??」


 そう、アンダリヤさんの指にはまっている真っ赤な宝石はあのジュメルのなんとかって神父が付けていた賢者の石そっくりだった。

 確かカリナさんの話では売れば数百年は遊んで暮らせるほどのお宝らしいけど、なんかものすごく面倒そうな代物だったのであの時は「消し去る」の力を使って消し去った。



「やはり報告に有った通り一筋縄ではいかないわね? この私の術中から逃れるとは! 貴様、一体何が目的でここへ来た!?」



「はいっ!? えーと、アンダリヤさん??」


 なにやら構えて呪文を唱え始めるけど、私には訳が分からない。

 しかし目の前に沢山の【炎の矢】が現れそれが一斉に襲って来れば流石に危ないので「消し去る」しかない。



「うわっ! 『消し去る』!!」



 しゅん。



 何十本も飛んで来ていた【炎の矢】は私のチートスキル「消し去る」によってものの見事に消え去った。



「くっ、これだけの【炎の矢】を一瞬で消し去るとは! しかしこの賢者の石がある限り我が魔力は無限大! 覚悟するがいいエルフよ!!」



 はて?

 私は何か粗相でもしたのだろうか?

 なんでアンダリヤさんはそんなに怒っているのだろうか?



 首をかしげるとアンダリヤさんはさらに激怒して言い放つ。


「貴様、バカにしているか!? このジュメル七大使徒が一人魅惑のアンダリヤの力とくと思い知らせてくれる!!」


「ジュメル?? えっ? アンダリヤさんジュメルの使徒だったんですか!?」



「えっ?」


 

 しばしの沈黙。

 アンダリヤさんは呪文を唱えるのを止めて固まったまままじまじと私を見る。



「もしかして知らなかったの?」


「はい、まさかアンダリヤさんがジュメルだったとは!」



 そしてまたしばらく沈黙があっておずおずと手を下げてアンダリヤさんは私に聞いてくる。



「あの、もしかしてここで女性たちの魂削って賢者の石を作っているのを阻止しに来たんじゃ?」


「はぁ? 私は胸を大きくできるって聞いたから素直にそれを信じて来ただけですよ??」




「「……」」




 またまたしばし沈黙。


 いやアンダリヤさんは他の場所を見て何かぶつぶつ言っている。

 そしておもむろに手をパンっと打ってにっこりとこちらを見る。



「はいはぁい、今のは冗談です~。さあ、施術の続きをしましょ!」


「いや、流石に魂削って賢者の石作っているとか、ジュメルの使徒だとか言われたら大人しく無かった事にはできませんって……」




「「……」」



 更にしばし沈黙。

 私たちはにらみ合ってどちらともなく大きくため息を吐く。



「よくもこの私を騙したわね!!」


「いや、勝手にべらべら喋ったのはそっちでしょうに……」



 こめかみに理不尽なおこマーク張り付けてアンダリヤさん……

 もとい、ジュメルの七大使徒魅惑のアンダリヤは、びしっ! と指を私に突き付ける。


 あー、なんでこういつもいつも面倒事があっちからやって来るのだろう?

 私はため息を吐きながらルラを呼ぶ。



「ルラ、起きて。あんたの探していた悪の秘密結社だよ?」


「ふふふっ、そうはいかない! そっちのエルフは既に洗脳済みだ!! さあ、我が手足となってこのエルフの小娘を捕らえるのだ!!」



 ゆらり~




 ジュメル七大使徒、魅惑のアンダリヤのその声にルラはゆらりと立ち上がるのだった。 

 

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[一言] >私は思わず今の考えを「消し去る」と念じてしまった。  んーーー。  際どい!!  まだ物理とか分かる範囲(脳として物理的に)っぽく作用してるから、消し去る範囲が概念に届くのか確信が持て…
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