6-29アンダリヤの店
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
もしかしてあたし有名人?(ルラ談)
「あなたがリルさんですか、それとルラさんと言うのですね、そちらは」
「はい? 私たちを知っているのですか??」
奇妙な話だった。
あの宣伝の時以来ほとんどその姿を見ていないアンダリヤさんが私たちを知っている?
この人とちゃんと話すのは初めてだと言うのに。
私がそんな疑問を持っているとアンダリヤさんは小さく笑って話始める。
「いえね、お客さんで最近自分の宿にエルフのお客さんが泊っていると聞いたものでしてね。ここドドスはエルフの方が来る事は珍しいのでその方のお話でお名前を聞いていたんですよ」
「ああ、そう言う事ですか。私たち今『鉄板亭』で厄介になってるんですよ」
なるほど、ここドドスにエルフがいるのは珍しいってよくよく言われてたけど、そう言う事か。
メリーサさんが私たちの事を話してたんだ。
「そのお客さん、二回目の施術を受けてだいぶ胸が大きく成ったんですよ~」
にこやかにそう言うアンダリヤさん。
「ぐっ、そ、それは知ってます。ただ、なんであんなに疲労しているのかが気になりますけど……」
「あら、あの方って確かメリーサさんでしたっけ? 彼女やっぱり基礎魔力量が少ないのね…… 次回はその辺をもっとよく教えてあげないといけませんね」
アンダリヤさんはすぐにその原因となる基礎魔力量が少ないとか言い出した。
一体どう言う事なのだろう?
「あの、豊胸と魔力ってどんな関係があるんですか?」
「ああ、その辺は企業秘密ですがリルさんたちには教えちゃいますね」
そう言ってアンダリヤさんは話を始めた。
* * *
「つまり、胸を大きくしているのは【変身魔法】メタモルフォーゼの応用だと言うのですね?」
アンダリヤさんの話はこうだった。
女性の胸を大きくするには刺激を与えたりマッサージをしたり栄養のバランスが取れた食事をしたりする正統派のやり方とここ豊胸のお店がする施術で体形を変えると言う方法があるそうだ。
アンダリヤさんのお店ではまず魔法で無理矢理胸を膨らませその状態を維持するのに常に魔力を流し込み形状を確保する。
そしてそこへ不足となっている栄養分を徐々に補給しながら本当に胸自体を大きくしていくと言う方法となる。
よって魔力は常に使うし、栄養が胸に流れ込むので貧血を起こしやすくなってしまう。
勿論その辺の注意をお客さんにはしているらしいが、ここが問題。
十分な栄養摂取をすると確実に太るのだ。
「ですから栄養バランスの良い食事を推薦しているのですが年頃の女性は胸は大きくしたいけど体重が増える事は許せないと言う方が多いのですよね」
「うっ、そ、それは理解は出来ますがそんなに太るモノなんですか?」
確かに乙女にしてみたらウエストがきつくなっただけで大問題だ。
ましてや体重計は例え百グラム減っただけでも大喜びだと言うのに。
「ですから私も説明の時に言うのですけどね。例えば胸が大きく成ればその分重量は増えるので片方で百グラム膨れれば両方で二百グラムは体重が増えると。しかしお客さんの中にはそれを嫌がる人もいるんですよ」
片乳百グラム!?
何それ夢か!?
百グラムって聞くとそれほどではないように聞こえる人もいるだろうけど、百グラム百二十八円の豚のこま切れ肉を思い出してほしい。
ちょっと脂身の多いやつならなおさら。
あれが自分の胸に増えれば!!
「た、多少の体重が増えたって良いと思います……」
「ですよね? 私なんか両方の胸で一キロ以上ふえちゃって」
一キロだとぉ!?
もうそれってメロンよ、メロン!!
胸だけの重さでそんなに増えたら夢の「胸が大きいから肩こっちゃう♡」などと言うセリフが言える!!
「そ、そこまでとは…… あ、でも私たちエルフにも効くんでしょうか?」
ふと疑問になってアンダリヤさんに聞いてみる。
するとアンダリヤさんはにたりと笑って言う。
「研究の結果、エルフの方々は魔力量が人族より多いと言うのが分かっています。人間との間にも子供を作る事が出来る種族ですから肉体的にも近いのでしょう。ですので原理的には可能だと思います」
アンダリヤさんはそう言って更に続ける。
「【変身魔法】メタモルフォーゼで肉体変化を続けるのに常に魔力を使う訳ですがエルフの方なら魔力が枯渇する心配はありません。あとは問題となる栄養の摂取方法ですが、確かエルフの方は肉や魚と言った物が苦手でしたよね? ですのでそう言った栄養が補充できる栄養剤を飲んでいただこうと思います」
「栄養剤ですか?」
魔力の枯渇は心配いらないらしい。
確かにエルフは魔力が大きい人も多い。
カリナさんに聞いたけど、シェルさんなんか無限ではないかと思われる程魔力を持っているらしい。
それはメル長老様を凌駕するほどだとか。
なぜそんなに凄いのか聞いたらエルハイミさんと魂の隷属をしているので魂からあふれ出て来る魔力は半端ないらしい。
「どうでしょうか?」
「分かりました、是非お願いします!」
にっこりと笑いながらアンダリヤさんはそう言う。
勿論私もにっこりと笑顔を返しながら返事をする。
もうこれってやる以外の選択肢ないよね?
ないよね!?
アンダリヤさんのその提案に私は即答するのだった。
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