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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第六章:ドドス共和国
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6-24豊胸

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


おおっ!

メリーサさんそれジャイアントスイングだ!!(興奮気味のルラ談)


 メリーサさんと香辛料の買い出しに来たら、「豊胸」が出来るとか言う怪しい演説がやっていた。

 


「メ、メリーサさん!?」


「うわあぁー、メリーサさん飛び蹴りしてるね?」



 目の前に繰り広げられる大乱闘は正しくサドンデスのようだった。

 一人、そしてまた一人と女性たちが倒れていく。


 その中でメリーサさんは恐ろしいほどの身体能力を発揮して並寄る女性たちを撃退して先着二百名様のチケットを手に入れるのだった。



 * * *



「うふっ、うふふふふふふ♡」


「メ、メリーサさん?」


 メリーサさんはあの激闘を制し、先着二百名様のチケットを手に入れていた。

 そして明日の初回施術の予約を入れてニコニコと私たちと「鉄板亭」に戻る途中だった。



「メリーサさん、頬に血が付いてるよ?」


「ああ、これ返り血だから大丈夫よん♡」



 よん♡って何!?

 それ返り血だったの!?



 メリーサさんはそれを手の甲で拭って奇麗にする。

 そして何事も無かったかのような笑顔で話をする。



「これで私も夢の豊胸を手に入れられる! ふっふっふっふっ、私を振った男どもめ、今に見てないさよ!!」



 あー。

 完全に頭に血が上っている。

 もうこうなると何を言っても聞かないだろうな。



「でもそれって本当に効くんでしょうか? エルフの私たちにも効くのかな?」


「どうだろね? でも明日になればわかるよ! うふふふふ、楽しみだなぁ~」


 上機嫌なメリーサさん。

 でも、もし本当に効くなら私もしてみたいかも。

 

 そんな事を思いながらみんなで「鉄板亭」に戻るののだった。



 * * * * *



「お姉ちゃん、なんでおっぱい大きくしたいの?」



 部屋に戻ってルラが突然そんな事を聞いてくる。

 なんでって聞かれてもねぇ。


「そりゃぁ、女の子に生まれたからにはやっぱりおっぱいだってそこそこ大きく成りたいわよ?」


「邪魔なだけなのに? おっぱいあると胸が重くなって動きにくいよ?」


「うーん、ルラには分からないかなぁ。スタイル良くなりたいって女の子なら誰でも思う事なのだけど?」


 そう答える私にルラは真剣な顔して唸っている。


「うーん、スタイル良いって、コクさんみたいなの? でもああなっちゃうと戦う時に動きにくいと思うんだけどなぁ」


「いや、普通の女の子は戦わないって。と言うか、ルラもスタイルが気になるの?」


 この子にしては珍しいと思い聞いてみるときょとんとして言う。



「だって悪の組織をやっつけるのにおっぱいあったら邪魔じゃん! 今くらいならまだ揺れないからそれほど邪魔じゃないけど、コクさんみたくなっちゃったら戦うの大変だよ?」



 基準がちがーう!

 何この子?

 スタイルって女性らしいスタイルじゃなくて戦うためのスタイル!?



「いやあの、女の子なんだからもう少しその辺は……」


「あたし、もっと筋肉付けたいんだけどなぁ~」



 筋肉隆々のエルフの女の子って誰得!?

 思わずボディービルダーのようなエルフの女の子を想像してしまった私の記憶を消してぇっ!!



「とにかくルラ、おっぱいはある程度大きくないとダメなの……」


「だからなんで?」


「うーん、そうだ、赤ちゃん出来た時におっぱい小さすぎるとすぐなくなっちゃうからよ!」


 苦し紛れにそう言うとルラは「おおぉ~! なるほど!!」などと驚いている。

 うん、今はそれでいいか。


 思わず視線をルラから外す私だったのだ。



 * * * * *



「それじゃぁ行ってくるね、リルちゃんルラちゃん」


 メリーサさんは満面の笑みでそう言って出かけていった。

 あの豊胸の施術を受けに行くのだ。


「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」


「いってらっしゃぁ~いぃ~」


 「鉄板亭」の看板娘はこれで「鉄板」にはならなくなるだろう。

 ちょっとうらやましいけど、あの先着二百名様の争奪戦にはドン引きしてしまった。


 そう言えば生前の安売りセールでうちのお母さんも卵の安売りゲットするのにかなり苦労していたっけ……


 そんな事を思い出しながらメリーサさんを見送って部屋に戻る。 

 そしてポーチから昨日買って来た香辛料を取り出してみる。



「うん、やっぱりクミンにそっくりだ。それにこれって月桂樹? シナモンの皮もあるしドドスって香辛料が豊富なんだ」


「お姉ちゃん、なんかカレーか中華料理みたいな匂いするよ?」


 テーブルの上に並べられたそれらは独特な香りがしていた。

 はっきりと覚えていないけど、カレーのスパイスは確か基本が十二種類。

 香辛料の組み合わせによってはそれも再現できそう。



「でもまずはあのケバブみたいなのを再現したいな。ここにはヨーグルトソースもあるみたいだし、ますますレパートリーが増えそう、そのうちカレーとかも出来そうだし」


「カレー!? お姉ちゃんあたしカレーライス食べたい!!」


 そう言うルラにそれでも私はため息をつく。

 

「カレーライスは私も食べたいけど、お米が無いじゃない。クロエさんの話だと精霊都市ユグリアにはあるっぽいけど。でもまあカレーも作れるように素材は掻き集めておこう。ドドスにはもうしばらく滞在するし、今日も午後は『銭湯』に行くわよ!!」


 メリーサさんが先に胸大きくはなっちゃうけど、取り合えず私は銭湯のマッサージに行こうと思う。

 少なくともエルフの私でも確実に実績が積み上げ始めているし、もともとそのつもりでここに滞在するのだから。


「え~、また銭湯? フルーツ牛乳買ってくれる?」


「勿論、お風呂とフルーツ牛乳はセットよ、セット!」


 そこは曲げられないのは私も同じで、やっぱお風呂上がりのフルーツ牛乳は鉄板よ!!


 そう思いながら午後はまた銭湯へと行く私たちだった。



 * * * * *



「あれ? もしかしてあれってメリーサさん??」


 銭湯からあがってついでに香辛料を見に行った帰りに前を歩く女性に気付く。

 それは間違いなくメリーサさんだった。



「おーいメリーサさ~ん」



 手を振りながらルラが声をかけるけど、メリーサさんと思われる女性はふらふらとしたまま歩き続けている。

 私とルラは思わず顔を見合わせてその女性の元へ駆けてゆく。



「メリーサさん?」



「んぁ? ああぁ、リルちゃんにルラちゃん……」



 メリーサさんはやたらとぐったりとしていた。

 ふらつくメリーサさんを思わず受け止める。



 ふにっ!



「ん? ま、まさか!?」


「へへへへへぇ~、凄いよ、大きく成った。あと四回もすれば確実に揺れるくらいになるって……」



 そう力なく微笑むメリーサさん。

 しかし何やらやたらと疲れている様だった。



「大丈夫ですかメリーサさん?」


「うん、おっぱいに栄養が流れ込んでいるから施術の後は疲れるんだって…… ありがと、大丈夫だよ……」


 そう言って自分で歩こうとするもふらつくのでまた私とルラで支える。


 ふらっ!



「ありがとう……」



 がくっ



「ちょ、ちょっとメリーサさん!?」





 完全に貧血か何かで倒れるメリーサさんを慌てて揺さぶる私とルラだった。

    

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