6-21ドドスのお宿
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
お疲れ様、お姉ちゃん(ルラ談)
ドドスに有った女神様の神殿に付随する「銭湯」。
ここには世の貧乳女性の希望がある。
それは「育乳の女神様式マッサージ」!
その情報を聞きつけ私は早速それを実体験してみてその女神様脅威のメカニズムに驚かされたものだ。
結果としては暫定的でも胸が大きく成った。
ほんのわずかだけど……
しかし、いつ成長するかも分からないこのエルフの体の中ではこれは大きな一歩だった。
何せ私らエルフ族は人間で言う所の大人っぽくなるのに千年くらいかかるらしいからそれまでにこの少女の身体のまま何百年も過さなければならないのだ。
たとえ少女体形でも揺れるくらいは欲しい。
そう、前世の私くらいには……
そんな思いで受けた「育乳の女神様式マッサージ」だったけど、銭湯から出てメリーサさんから変なことを聞いてその思い浮かぶワードからなんかもやもやとしていた。
「うーん、シーナ商会が『銭湯』の後ろ盾になっていると言う事はシェルさんも絡んでるって事よね? それに育乳の女神様ってどこかで聞いたような気もするし……」
なーんか気になるのよね。
なんだったっけ?
「シーナ商会かぁ、そう言えばシェルさんておっぱい大きかったよね~」
「うっ、エ、エルフの中では大きいわよね。うらやましいけど……」
妹のシャルさんはそこまで大きくないし、おばさんだってそうだった。
するとシェルさんだけ特別?
そう考えていた私だったけどある事に思いつく。
「メリーサさん、そう言えばなんであのマッサージって『育乳の女神様式』なんて呼ばれているんですか?」
「あれ? 知らないのリルさん?? あのマッサージを考案したのが『育乳の女神様』って事で、『女神様の伴侶』って呼ばれる人がそれを受けてその効果を知ってこうして世の中に知らしめたって噂だよ?」
「女神様の伴侶」ってシェルさんじゃん!!
と言う事は、このマッサージを考案した女神様ってエルハイミさん!?
「噂ではそれまで『女神様の伴侶』って私たちよりもペタンコだったんだって。でもその女神様のマッサージを受けたら立派な揺れる胸になったとか」
メリーサさんは自分の胸を押さえながらそう言う。
「揺れるくらい…… せめて私もその位欲しい!!」
ぐっとこぶしを握るメリーサさん。
その辺はものすごく同調できる。
「あ~、でもそうするとシェルさんてエルハイミさんにおっぱい揉まれまくったんだぁ~。あんなに大きかったもんね~」
「ルラ! 言い方ぁっ!!」
白昼堂々と大通りで話す話じゃない。
私はちょっと赤くなりながらも、それとなくメリーサさんと一緒に歩いていたけどメリーサさんはふいに聞いてくる。
「ところでリルさんたちってどこに住んでいるの?」
「ああ、私たちってドドスの街に着いたばかりなんですよ。ここは初めてでまだ宿も取ってないんですよ」
言いながらあの「槌亭」とか思い出す。
うーん、安そうな宿かもしれないけどあのドワーフに会うのはちょっと。
「そうなんだ。ねえ、もしよかったらうちに来ない? うちも宿屋やっているんだ。お安くしとくよ?」
「え? メリーサさんの家って宿屋なんですか?」
「うん、『鉄板亭』って言う名前の宿屋やってるの」
「鉄板亭」って……
思わずメリーサさんの胸を見てしまう。
「リルさん…… いま、うちの店の名前で私の胸見たでしょ?」
「あ、いや、それはそのぉ…… あは、あははははははは」
頭に手をやりながら乾いた笑いをする私。
でもメリーサさんは小さくため息をついてから言う。
「まあ、リルさんには勝っているからいいか。で、どう? うちに来ない??」
「ぐっ、私だってこれからですからね。でも、知らない街だからお願いします」
メリーサさん自体は悪い人じゃなさそうだし、何よりあのドワーフのいる店よりは良い。
私は頷きメリーサさんの「鉄板亭」に厄介になる事にするのだった。
* * * * *
「いらっしゃい。なんだメリーサか。ん? そちらは??」
「ただいまお父さん、お客さんだよ。リルさんとルラさんだよ」
「お世話になります」
「どもっ!」
宿屋と言っても下が食事が出来る食堂で上が泊まれる部屋と言うオーソドックスなお店。
店の名前の通り何故か壁には鉄板が飾られている。
「エルフのお客さんとは珍しい。いらっしゃ。部屋は二つかい?」
「いえ、妹のルラと一緒で。それでとりあえず一週間ほどお願いします」
「お父さん、特別価格でね! リルさんは私の同志なんだから!!」
すかさずメリーサさんが特別価格と合いの手を入れてくれる。
するとメリーサさんのお父さんは笑って言う。
「分かった分かった、通常一晩銀貨六枚を四枚にしておくよ。朝晩の二食付き。風呂とトイレは共同ね。サービスで一人一杯桶にお湯もあるが早速いるかい?」
「いえ、先ほどメリーサさんと『銭湯』に行ってきたので今日はお湯いりません」
「なに? メリーサまた仕事サボって『銭湯』に行ってたのか?」
「うっ、良いじゃない。こうしてちゃんとお客さん連れてきたんだから!」
あきれるメリーサさんのお父さん。
しかし、メリーサさんこの様子だと何度も銭湯に行ってるな。
あの私より大きな胸はきっと「育乳の女神様式マッサージ」のお陰ね!?
後でどのくらい通っているか参考に聞かなきゃ。
「取りあえずこれがカギだよ。メリーサ、部屋に案内してやってくれ」
「うん、分かった。リルさんルラさんこっちだよ」
カウンターに代金を置いて私とルラはメリーサさんに連れられて二階へとあがっていくのだった。
* * * * *
通された部屋はよくある普通の部屋だった。
「えーと後は一番奥に突き当たって右がトイレ。左がお風呂場だよ。お風呂は夕方から夜お店を閉めるまでで大きなツボに水が張ってあるからそれを体にかけて使ってね」
メリーサさんはそう言って「仕事に戻る」とか言いながら部屋を出ていった。
「お姉ちゃん、お腹すいた~」
「そう言えばそろそろ夕刻、話では夕食も出るらしいからしばらくしたら下へ行ってみましょう」
そう言いながら私はベッドに倒れ込む。
久しぶりにふかふかの布団で眠れる。
やっとドドスの街にまで来られた。
ここに来るまでにもう一年くらいたっちゃったけど、エルフの村のみんなどうしているかなぁ?
レッドゲイルのレナさんやアスタリアちゃんどうしてるかな?
コクさんは無事にそのジルの村に着いたのだろうか?
カリナさんはまた大酒飲んでいるのかなぁ?
そんな事を考えながら天上を見ているとだんだんと瞼が落ちて来る。
「お姉ちゃん?」
「……みんな……元気に……して……る…… かな……?」
意識が遠のく中、ルラが私に何か上掛けしてくれるのを最後に私は眠りについてしまうのだった。
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