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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第六章:ドドス共和国
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6-19銭湯

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


おっ風呂ぉ~おおっふろぉ~♪(ルラ談)


 この世界に来て初めて銭湯と言うモノに入る。

 しかし入ったそこはやたらと日本に有った銭湯と酷似していた。



「番台さんがいる…… まあ、女性だからいいけどこれって男湯もあるのかな?」


「ねぇねぇ、お姉ちゃん! お風呂終わったらあれ飲みたい! いいよね?」


 ルラが指さすそこには氷の塊が入った桶にガラス瓶に紙の蓋が付いたフルーツ牛乳らしきものが有った。


 いや、なんかそれ以外にもサービスで使える体重計やら全身が映し出せる鏡とか有ってまさしく銭湯そのものだった。



「リルさんは銭湯初めて? 凄いよね、大きな湯舟があって大量のお湯が使えるだなんて! 銀貨二枚ってちょっと高いかなって思ってたけどこれなら納得だよね?」


「湯船があるんですか?」


 ますます日本の銭湯っぽい。

 一緒に並んで入ったメリーサさんの説明を受けながら服を脱ぐ。

 貴重品だけは番台さんが預かってくれて手首に縛り付けられる番号札を手渡されるけどその辺も日本の銭湯そっくりだった。



「おっ風呂~、おっ風呂ぉ~♪」


 ルラはそう言いながらどんどんと服を脱いで裸になる。

 そして一緒に買っておいた銭湯セットとか言う桶を片手に肩にタオルをかけて先に洗い場に入ってゆく。


 私も同じく裸になり、同じ銭湯セットを持って行こうとするとメリーサさんの視線に気付く。



「……勝った」


「うっ! メ、メリーサさん!!」


「ごめん、ごめん、ついついいつもの癖で」



 そう言うメリーサさんの胸を見ると悔しいけど確かに私よりは大きい。

 しかし生前の私には遠く及ばず、ここにいる女の子たちみんなが同じようなサイズであると言うのがもの悲しく感じる。



「でもそんな事も今日限り、見せてもらおうじゃないですか、その『育乳の女神様式マッサージ』とやらの実力を!!」



 ぐっとこぶしを握って私は洗い場へと行くのだった。



 * * *



 かぽーん



「本当に銭湯だ……」


 そこは正しく私の知っている銭湯そのものだった。

 一番奥に三つほど大きな湯船がある。

 そしてその一番奥の壁には富士山が描かれている。

 

 洗い場もどう言った原理かは分からないけどちゃんとシャワーが設置されていて黄色い椅子と桶もある。

  


「リルさん、ルラさん、こっちこっち」


 一緒に入ったメリーサさんは私とルラを呼び、かけ湯の所へ行く。


「いきなり湯船に入るのはダメで、先にここで何回か体にお湯をかけて軽く汚れを流すのが作法なんですって。凄いよね、ここまで贅沢にお湯を使えるだなんて」


 言いながら設置されていた手桶でお湯をかぶる。


 その場所には石碑に『かけ湯は最低三回以上かけてください。湯船にはタオルは入れないでください。危ないので洗い場では走らないでください。他のお客様の迷惑になる行為はご遠慮ください』とか書かれている。


 うーん、ますます日本の銭湯だ。


 私もルラもかけ湯をしてから湯船に向かう。



「えへへへへ、大きなお風呂って村の泉以来だね?」


「村の泉は水だったよ? ここはちゃんとしたお湯だよ」


 言いながら湯船に入る。


 

 ふわっ!



 お湯につかる事は何度かあったけど、ここまで大きな湯舟に入るのは久しぶりだ。

 ゆったりとしたお風呂はとても気持ちいい。

 頭の上にタオルを置いて手足を伸ばす。



「ふぅ~、気持ちいいねぇ~、おねちゃん」


「うん、気持ちいいね。やっぱ日本人はお風呂に入らないとダメだねぇ~」


「ニホンジン? リルさんたちってエルフ族じゃなかったの?」



 思わずそんな事が口から出てしまう。

 それを一緒にお風呂に入ったメリーサさんに聞かれてしまい慌てて訂正する。



「あ、えーとエルフ族の中でもそう言う風に呼ばれているのがいるんですよ、はははははは……」



 思わず口から出まかせを言う。

 しかしメリーサさんはそんな事は別に気にもしない様子だった。



「ふ~ん、エルフ族にもいろいろあるんだ。そう言えば伝承ではダークエルフは胸が大きいって言われてるけどエルフと違うの?」


「ダークエルフ? ああ、村では裏切り者って言われてましたね。よく知らないのですけど」


 そう言えばダークエルフっているエルフ族から分かれた肌の褐色な闇の精霊を扱うのが上手なエルフがいるって聞いた事あったな。

 女性陣からは特に毛嫌いされていたけど、なんでだろ?


 しかし、ダークエルフが胸が大きいと言うのは初耳だった。


「ダークエルフ、胸大きいんですか?」


「うん、伝承ではみんな胸が大きいって言われてるね。うらやましい」


 同じエルフでも胸が大きいとは、確かにうらやましい。

 でもまあ、それも今日まで。

 何せここには「育乳の女神様式マッサージ」なるモノがあるのだから!



「と、ところでその『育乳の女神様式マッサージ』とはどこに?」


「ああ、それならあそこ。でもその前に体を洗って順番札をもらわないとね」


 言いながらメリーサさんは立ち上がり洗い場に行く。

 私もルラも同じく立ち上がり洗い場に行く。


 先に体を洗わなければいけないのか。


「うーんと、銭湯セットに石鹸とかシャンプーあったよね?」


「これかな?」


 ルラと一緒に桶の中から石鹸やシャンプーを取り出す。

 そしてシャワーで髪の毛を濡らして頭を洗って行く。


 うーん、これって結構良い匂いでさっぱりとするわね?

 買い置きしようかな?


 そんなこんなで頭と体を洗い終わるとメリーサさんが私たちを呼ぶ。



「リルさん、ルラさん、こっちこっち」


 呼ばれていくとサウナの奥にでかでかと「育乳の女神様式マッサージ」と看板があった。

 そこへメリーサさんは行って受付の人と話をしているとなんか体をじろじろ見られている。


「はい、洗い終わっているようですね。どうぞ」


「はい、どうも。あ、結構空いてるんだ」


 そう言って私たちもこの受付の人の前に呼ばれる。


「珍しいですね、エルフの方とは。えーと、ちゃんと身体は洗ってますね? 大丈夫のようです。はい、これ」


 そう言って札を渡される。

 そこには番号が書かれていて出入り口の所に今なん番がマッサージ中とか分かるようになっている。

 メリーサさんを含めて後五人で私の順番になる。



「大体十五分から二十分一回のマッサージだからもうすぐだね。今日はついているわ~」


「いつもは結構待たされるんですか?」


 何度か来ているみたいなメリーサさんに聞いてみると頷きながら言う。


「多い時は二十人くらい待たされるから、ずっとお風呂にいるとのぼせちゃうのよ。でも今日はそれ程じゃないからここで待っていようね」


 メリーサさんがそんな事言っていたら扉が開いて先客の女の人が出てきた。


 なんかはぁはぁと荒い息を吐いているけど彼女の胸が少し赤くなっている。

 そしてなんか歩くたびに少し揺れているような……


「あ、あれが『育乳の女神様式マッサージ』の効果なの……」


「うん、してもらうと一時的に確かに胸が張って大きく成るのよ。それを何回も繰り返しているうちに確実に大きく成るって人が多いのよね」



 こ、これは期待が持てそう!



 しかし何回も通わなければならないのか……

 そんな事をメリーサさんと話しているとメリーサさんの順番となる。


「それじゃ、お先にね」


「はいはい、行ってらっしゃい」


 私はメリーサさんを送り出しながらいろいろと考える。


 何回くらいここへ通えば効果が出るのだろうとか、どうせ急ぎの旅でもないしあのケバブみたいなやつの香辛料とかも手に入れたいとか、お金にはまだまだ余裕もあるししばらくドドスに滞在するのも悪くないかなとか打算を巡らせていた。



「次の方、どうぞ」


 受付の人にそう言われて私は番号札を見ると自分の番号だった。




 私はにっこりしながら番号札を渡してマッサージを受けに行くのだった。   




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