6-15尋問
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
シェルさんってここでも!?(リル談)
私とルラはこの砦の隊長とか言う人の部屋に呼び出されていた。
「君たちがこの紹介状に書かれているエルフの姉妹、リル君とルラ君だね? すまんが手紙は読ませてもらった。一応国家安全のための処置でね」
そう言って部屋の奥の机に座っていた白髪のおじさんは私たちの紹介状を掲げる。
人の手紙を勝手に開けるのはどうかと思うけど、国家安全の為とか言われれば仕方ない。
少しむっとしながらも私は答える。
「はい、私がリル、こっちが妹のルラです」
私がそう答えると紹介状を掲げていたおじさんはその手紙をまた丁寧にしまい込んで何か書き込んでから封筒に蝋の印を押す。
「そう怖い顔をするな。可愛らしい顔が台無しだぞ? しかし『エルフの剣』のカリナとも知り合いとはな…… あれは元気にやっているか?」
「カリナ……さんですよね? 元気ですよ」
言いながらこのおじさんは私たちを手招きして紹介状を返してくれる。
ちらっとそれを見ると「検閲済み」と書かれ知らない紋章の蝋の印もあった。
「さて、カーネルやカリナが君たちに便宜を図るように言うとは、君たちは何者だ?」
「何者の何も、ご覧の通りただのエルフです。私たちはサージム大陸のエルフの村に帰りたいだけです」
そう言ってこのおじさんを睨むと苦笑してこちらを見る。
「エルフは見た目じゃその年齢が分からんが、流石に君たちの様な若木は見てわかる。まだ二百歳にもなっていない若木だろう? なぜこんな所にいる? そしてカーネルほどの男を動かすとは一体何をした?」
「何って言われても別に大した事してませんし、さっきも言いましたけど私たちはエルフの村に帰りたいのでドドス共和国を通ろうとしているだけです……」
何したって言われてもあまりに色々有り過ぎて一体どれの事やら。
えーと、とりあえずユエバの街に着いてからでいいのかな?
それとも最近の大雨を止めた事かな?
それになぜこんな所にいるって、単に帰り道の途中だって言うのに。
「ふっ、余計な詮索か。カーネルから協力を引き出したと言うのはカリナのお陰か? ここまで若いエルフだ、同族を心配したカリナの手配か……」
「カリナさんの手配ですか? そりゃぁカリナさんにはいろいろと世話にはなってましたけど」
カリナさんを思い出しながらそう言う。
いろいろと世話にもなったし世話もした。
でもまあ、冒険者ギルドのギルドマスターに紹介状を書かせたのは確かにカリナさんのお陰だろう。
私は素直にそう思う。
するとこのおじさん、ふっと笑って椅子に深く座り言いだす。
「よし、君たちは白だ。問題無い」
「はい? 何なんですか一体?」
まったく、なんだと言うのだろう?
私は怪訝そうな顔になっておじさんを見るとおじさんは立ち上がりながら目の前のベルを指さす。
「実は君たちが嘘を言っているかどうか試させてもらった。正直カーネルの奴が君たちのような若木のエルフにそんな紹介状を書くこと自体がまた何か企んでいるのではないかと思わされてね。この魔道具で君たちが噓をついているかどうか調べさせてもらったのだよ」
指さされたその先には呼び出しベルの様な物が有った。
おじさんはそれを指さしながら変な事を言う。
「私は女だ」
チーン
おじさんのその言葉にそのベルはチーンと音を鳴らす。
「うわっ、勝手に動いた!」
「これがこの魔道具の能力だよ。嘘を言えばこうやって音が鳴る。手間を取らせたな。これで君たちは我がドドス共和国へ入る事を認められる」
言いながら私とルラに入国証明と書かれた札を手渡して来る。
どうやらこれでやっとドドスに入れるようだ。
私とルラはその入国証明を受け取る。
「しかし、君たちの様な若木がどうしてこんな所にいるのだね?」
「好きでここにいるんじゃありませんてば、一年くらい前にこっちに飛ばされたんですよ。シェルさんたちに……」
私がそう言うとこのおじさんは驚く。
「シェル? それは『女神の伴侶シェル』か? まさか彼女がここドドスに来ているのではないだろうな!?」
「来てませんよ。別の所に行ってるはずですけど?」
それを聞いてこのおじさんは思い切り安堵の息を吐く。
「ふう、『災いを呼ぶエルフ』が来ていないと言うのは朗報だ。どうも我が国は君たちエルフと関わるとろくなことが無いからな」
そう言って乾いた笑いをするおじさん。
シェルさんってここでも何かやらかしていたのね……
自然と私も乾いた笑いが出る。
そしてお礼を言ってから部屋を出る。
「お姉ちゃん、一体何だったのかな?」
「いや、シェルさんてここでも『災いを呼ぶエルフ』とか言われていたんだ…… 何処行ってもシェルさんの名前を聞くとみんな警戒するのね……」
改めてシェルさんの凄さを目の当たりにした気分だった。
もう災い級だったんだ。
私はぐっとこぶしを握りながら思う。
ドドスでは目立たず大人しくしていようと。
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