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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第六章:ドドス共和国
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6-14ドドス共和国入り

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


今回は平和だねぇ~(リル談)


 ユエバの街を出発して既に三日が経っていた。

 途中何度か魔物が現れたけど私たちが対処するほどでは無く護衛の人たちで撃退していた。



「う~ん、暇だねお姉ちゃん」


「まあ暇ではあるけど最近ドタバタ過ぎたからそう言う意味では助かるわね」


 荷馬車に揺られながら私はポーチの中にしまってあった道具をいろいろと整理していた。

 特に料理道具のメンテナンスとか食材の残量チェックとか。


 なんたって出発して二日目でこのキャラバン飯に絶望をして自分たちで食事を作り始めたら以前同様料理をしてくれと頼まれた。


 勿論食材とかはキャラバンもち。

 ちゃんと食事を作った分だけその代金も貰えるのだけど、その代わり調味料とか道具の貸し出しとか結構持ち出しもある。


 なのでこう言った時間のある時には整理整頓をしておかなければならない。



「ルラ、暇ならちゃんとナイフの手入れしておきなさいよ? 放っておくと錆びが出て切れなくなるからね?」


「は~い。そう言えばあたしのナイフどこやったっけ?」


 戦闘になると主に肉弾戦がメインなルラはよほどのことが無い限りナイフを使わない。

 ザラスさんには腰につけておいてすぐ使えるようにしておいた方が良いとか言われたけど、この子ってば面倒だからと言って着けていなかった。



「まさか無くしてないでしょうね?」


「ぎくっ! あ、有るよちゃんと、え、えーとぉ……」



 そう言いながらルラは服をぺたぺた触ってみたり短パンのポケットをごそごそやってなんかガラクタみたいなのを沢山出したりとしている。



「ルラぁ~」


「ちょ、ちょっと待って! あ、ほら有った、ブーツの横に括り付けておいたの!」



 そう言いながらハーフブーツの折り込みの中からナイフを取り出す。

 そして鞘から抜くと意外ときれいな状態だった。

 私はポーチから脂の染み込んだ石綿を出してやって手渡す。


「はい、これ。ちゃんとしてたみたいね?」


「う、うん。ザラスさんに磨いてもらってなんかないよぉ~」


 目線を反らしながらそう言うルラ。

 この娘、ザラスさんにナイフの手入れしてもらっていたな……


 私はため息をつきながらルラに言う。



「いくらチートスキルがあるからって日常的には結構使う道具なんだからちゃんと自分で手入れしなきゃだめよ?」


「ううぅ、分かってるよぉ~」



 ルラはそう言ってあせあせと自分のナイフを磨いている。

 そんな様子を見ながら私の作業を続ける。



 今晩のご飯、何にしようかなぁ?



 そんな事を思いながら私は荷馬車に揺られるのだった。



 * * * * *



「国境越えで関所ですか?」


「ああ、そう言う事で悪いが税金を納めなければならない。一人当たり銅貨十枚を準備してくれ」


 晩御飯を配り終わるとキャラバンの人がそう言ってくる。

 今晩はここで野営だけど明日にはドドス共和国に入るそうだ。

 街道にはドドス共和国の砦があって、そこで発行される入国証明書とか言うのを買わされるとか。

 まあ銅貨十枚くらいは問題無いのだけど国をまたぐ時には結構取られる物らしい。


 

「ジマの国ではそんなの無かったのにね?」


「まあ、あれはコクさんと一緒だったしね。イザンカの砦はカリナさんたちが同行していたから顔パスだったしね」


 ルラは晩御飯を食べながらそう言うけど、考えてみれば自分たちで国境をちゃんと超えるのは初めてだった。

 だってレッドゲイルに行く時もジマの国に行く時もいきなりだったし。

 こうして普通の旅して国境を超えるのは初めてだもんね。



「それと検問を受けるかもしれないから身分証明できるものとか準備してくれ」


「へっ?」



 キャラバンの人にそう言われ思わず変な声が出てしまう私。

 だって身分証明たって、そんな物持っていない。


「あの、身分証明ってどなんなものが必要なんですか?」


「冒険者なら冒険者カード、商人なら商業ギルドの通行書、それ以外は親書や家紋の入ったものなどだよ。みんな何かしら証明できるものはあるはずだが?」


 そう言われて私は唸ってしまう。


 考えてみればイージム大陸にいきなり飛ばされて同郷のエルフの人たちの親切で今までやってきたようなモノなのだ。

 レッドゲイルでだって「赤竜亭」でアルバイトの給仕とかやっていたけどそれって単に街中に住んでいたからであって身分も何も関係なかった。


「どうしよう、そんな物何も無い……」


「ねぇねぇお姉ちゃん、カリナさんが渡してくれた冒険者ギルドの紹介状じゃ駄目なの?」


 ルラはご飯を食べ終わりお椀を持って来て盥の中にいれて水につける。

 言われて私もハッとする。


 

 そう言えば紹介状があったんだ!



「あの、こう言うのって使えますか??」


「どれ? なっ!? これはユエバの街の冒険者ギルドのギルドマスターの印じゃないか!? 君たち、ギルドマスターからのお使いかい?」


 なんか驚かれているけどどうやらこれで代用できそうだ。


「そう言う訳じゃないんですけど、ドドスの冒険者ギルドにこれ持って行って色々手助けしてもらう予定なんですよ」


「ギルドマスター直々の紹介状か…… まあ、これがあれば大丈夫だろう」


 そう言われて一安心の私。

 ここまで来てドドス共和国に入れないなんて冗談じゃないもんね。


 私はその手紙をしまいながら後かたずけを始めるのだった。




 * * * * *


  

「よーし、ドドスの国境の砦が見えて来た。同行者は身分証明と税金を準備してくれ」



 荷馬車に揺られながら外の様子を見ているとキャラバンの人が大きな声で私たち同行者にそう言う。

 どうやらドドス共和国の砦に着いたようだ。



「検問を受ける。同行者は一旦馬車から降りて個々に検問を受けてくれ」



 そう言って荷馬車が止まる。

 私たちは馬車からぞろぞろと降りて各々で準備をする。



「うーん、とうとうドドス共和国だねお姉ちゃん」


「うん、なんかここまで来るのに一年近くかかるとはね。レッドゲイルにエルフの村から迎えが来ちゃいそうだね」


 そんな事を言いながら検問を受ける。



「なんだ、エルフの女の子か? お前たち二人だけか?」


「はい、そうです。それでこれ……」



 言いながらあのギルドの紹介状を見せる。

 すると警備の兵士さんは驚く。



「これは! お前たち、ドドス共和国には何の用だ?」



「えっと、私たちの村があるサージム大陸まで行く途中なんですけど、ユエバの街の冒険者ギルドでお世話になってそれでそれを今度はドドスの冒険者ギルドに持って行けば協力してもらえるって聞いてたもので」


 私がそう言うとその兵士さんはしばし私とその紹介状を見比べる。

 そして仲間を呼んでそれを見せてあーだこーだ言っている。


 何なのだろう?



「すまんがお前たちはここで他の者を呼ぶからそっちに付いて行ってくれ。よし、次の者!」



 その兵士さんはそう言って他の兵士さんを呼んで私たちを何処かへ連れて行く。

 仕方なくそれに従ってついて行くと砦の中の部屋の扉の前まで通される。



 こんこん



「失礼します隊長、先ほどの話の者を連れてまいりました」


「入れ」



 部屋の中にいるのはここの隊長さん?

 ほんと、一体何なのだろう??



 私とルラは首をかしげながらその部屋に入るのだった。   



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