6-9古代魔法王国の遺跡
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
あったま来たぁぁツ!!(リル談)
「天候の塔」と呼ばれるその遺跡は岩山のふもとにその入内をひっそりと開けていた。
「『天候の塔』と言う割には普通の迷宮っぽい入り口ですね?」
見た感じ「塔」っぽくないので私は素直に感想を述べる。
「まあ、古代魔法王国時代の天候を操る施設ですからね、伝承ではこの岩山自体が塔になっているらしいですね」
私の疑問にネッドさんは答えてくれる。
まさかこの岩山自体が塔だったなんて……
「ん~、じゃあこの入り口は上に行くための物なの?」
ルラはそう言いながら岩山の上を見る。
そしてこの岩山自体がそこそこ高い。
「まあなんにせよ入ってみない事にゃ分からんよな?」
「そうそう、まだ誰も水晶の所までたどり着いていないのだろう? じゃあ他にもお宝があるかもしれないもんな!」
トーイさんもザラスさんもお気楽な事言ってる。
「だからと言って注意を怠らないでね。古代魔法王国の魔法の罠って本気でヤバいんだから。リル、頼りにしてるわよ」
カリナさんはそう言って私にウィンクする。
途中でも話があった面倒な魔法の罠は全部私のチートスキル「消し去る」で消してもらいたいらしい。
確かに魔法の罠なんてどうやったって見つける事は難しい。
だから最初から私のスキルに頼るのも分からなくはないけど……
「私のスキルだって万能じゃありませんからね? 対象は認識範囲やそれだけで他のは同時に消せませんから普通の罠とかには気をつけてくださいよ?」
「分かってるって、じゃあ早速入りましょうか?」
本当に分かっているのかどうか怪しいカリナさんはにっこりと笑いながら先頭になって遺跡に入って行くのだった。
* * *
「魔法の罠を『消し去る』!」
もう何度目だろう?
遺跡に入っていきなりカリナさんが魔法の罠にかかった。
警告的な軽い罠なので事無きを得たけど、まさか入り口に入ってすぐに魔法の罠が作動するなんて誰も思いもしなかった。
【麻痺】という魔法の罠で三十分くらいでまた元の状態に戻ったので本当に助かった。
「なんでこんな入り口に魔法の罠が仕掛けられているのよ!!」
「流石にいきなり来るとは思いませんでした。軽い罠なので記述にも無かったので驚きましたよ」
ぷんぷん怒っているカリナさんにネッドさんは申し訳なさそうに言うけど、自分で気をつけろとか言っていたカリナさんが最初に罠にかかるとは思いもしなかった。
「取りあえず見えるあの先の場所までは魔法の罠は消し去りましたけど、他のはまだですからね?」
「リルのスキルは便利だが、流石にその都度解除してたら上に行くまでにどれだけかかる事やら……」
「とは言え、リルの話だとどれもこれも厄介この上ない罠ばかりじゃないか?」
魔法の罠を消し去って皆さんにそう言う私にトーイさんもザラスさんもうんざりとしている。
だってここから見える廊下は突き当りの場所までたったの二十メートルくらい。
でもそこに仕込まれた魔法の罠は何と十個もあった。
そして消し去る時に認識すると、ガスが出たりテレポートしたり石化したりと致死確率がもの凄い罠のオンパレードだった。
「これは失敗しましたね。これだけの罠を張りめぐらせているのだ、入り口あたりに罠の解除する何かがあったかもしれませんね?」
ネッドさんは古文書を見ながらそんな事を言っている。
するとカリナさんは憤慨して言う。
「あーっ! まったくもう、この塔を作った魔法王国の奴はサディスティック過ぎるわよ!! 何この異様な罠は!!」
「それだけ重要な施設という訳ですよ、カリナ」
怒って地団太踏むカリナさんにネッドさんは苦笑しながら言うけどちょうどカリナさんが踏んだ床がガコンと音が鳴る。
「へっ?」
ごごごごごごごごごぉ……
青ざめるカリナさんの耳にはきっとこの嫌な音が聞こえているだろう。
だって私にだってちゃんと聞こえるのだもの!!
「やべっ! 石の玉が転がってきやがった!!」
「おいおい! この通路一通だぞ!!」
緩やかにらせん状に上に昇っているこの通路、一本道で今の所部屋らしきものも無かった。
その通路に天井まで埋め尽くす大きな石の玉が転がって来るのだ、このままではみんな押しつぶされてしまう。
「逃げるわよ!」
「どこへだよ!?」
「とにかく後ろに走れ!!」
カリナさん筆頭にトーイさんもザラスさんも走り出す。
「あたしは『最強』!!」
しかし迫り来る石の玉にルラはチートスキル「最強」を発動して突っ込む!!
「はぁっ!」
ばごーんっ!!
ルラは迫り来る石の玉に拳をぶつけあっさりと粉砕してしまった。
そしてふり返り言う。
「ふう、片付けたよ~」
「ルラっ! 前、前っ!!」
額の汗をぬぐうようなしぐさのルラに私は前の方を指さし叫ぶ。
だって粉砕したすぐ後ろにまた石の玉が転がって来るのだもの!!
「うわっ! あたしは『最強』ぉ」
「【防壁魔法】!!」
気を許したルラに迫る石の玉を間一髪ネッドさんの魔法が発動してそれをせき止める。
どごんっ!
「ふう、呪文詠唱に時間がかかりましたが一個目の後にも呪文を中断しなくて正解でしたね?」
「ネッドさんありがとぉ~」
流石のルラも驚いたようで少し顔を赤くしながらネッドさんにお礼を言っている。
そんな二人の所へカリナさんたちも戻ってきて言う。
「本当にこの罠仕込んだやつ性格悪過ぎよ!!」
「普通連続であんな大きな石の玉が転がって来るなんて思いもしないもんな……」
「いや、まだ性格の悪いのが続いてるぞ!! 石の玉がロックゴーレムになりやがったぞ!!」
ザラスさんが最後にそう叫んでネッドさんの防壁を見るとせき止められた石の玉が変形してロックゴーレムになっている。
ロックゴーレムはその拳でネッドさんの魔法の防壁をぶち破って私たちに襲い来るのだった。
* * * * *
「はーはー、どうにかここまで来たわね、後どのくらいかしら?」
「はぁはぁ、半分、と言ったところでしょうか?」
「まだ半分もあるのかよ!」
「しかもやばいゴーレムまでたどり着いていないらしいもんな……」
あの後私たちは様々ないやらしい罠をかいくぐりここまで登って来た。
正直考えられる罠を上回るいやらしい罠が多かった。
しかも魔法の罠を解除されるのを前提に仕掛けられたモノばかり。
例えば足を踏み入れると発動する魔法の罠を消し去ったその先に落とし穴があるのは当然で、下にばかり気を取られていると上から槍が降って来るとか。
もうこの罠を設置させた人の人格自体を疑う。
それ程いやらしい罠ばかりだった。
特に私の腹が立ったのがそれほど相手の裏をかくような罠なのに時たまもの凄く幼稚な罠も仕掛けて来る。
何あれ?
連続で緊張している罠をかいくぐりその先に行ったら罠の中から更にびっくり箱のように玩具の虫が飛び出すって!!
思わず悲鳴を上げてしまう私だったけど、それだけで他には何も無い。
まさしく精神的なダメージを伴う罠だった。
「カリナさん、いっそこの塔事消し去ってもいいですか?」
「落ち着けリル、そんなことしたら魔法の道具までおジャンじゃないの! 今回はクエストじゃないんだから戦利品で稼がないと大赤字になるわよ!?」
目元を暗くして静かに言う私にカリナさんは大慌てで止めに入る。
しかし本音ではみんな同じに思っているだろう。
誰もがそんな不満を抱えながら私たちはだんだんと言葉少なく先を進むのだった。
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