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腹ぺこエルフの美食道~リルとルラの大冒険~  作者: さいとう みさき
第六章:ドドス共和国
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6-5悪天候?

エルフのマズ飯は鉄板!

ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。

そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……

エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。


もしかして梅雨?? (リル談)


 昨日は危なかった。


 どうやらあのヤシの実みたいな飲み物、酩酊成分が自然発酵することがあるらしくトーイさんたちの言っていた「当たり」とはその事を意味しているらしい。



「びっくりしたよ~、お姉ちゃんいきなり倒れるんだもん」


「ううぅ、ごめん。まさかあれってお酒になってるのがあるなんて思いもしなかったから……」



 カリナさんは大笑いしていたそうだけど、トーイさんたちが私を背負って宿まで連れて来てくれたらしい。

 ルラと一緒の部屋に寝かしてもらって気が付いたら今朝だった。


「でも不幸中の幸いだったわ。カリナさんに変ないたずらされなくてよかったぁ」


「あ、でも昨日食べたのってほとんど魔物とかなんだって~」



「へっ!?」



 ルラは指を折りながら一つ一ついう。


「え~と、最初のドラゴンフライって大きな魔物のトンボのお腹の部分なんだって。それとねぇ~」


 聞けば聞くほどだんだんと青ざめてしまう私。

 何でって、虫や魔物を知らずに美味しくいただいていただなんて!!



 なんか気持ち悪くなってきたぁ!!



「でもね、ここは冒険者の街なんでああいった食事が当たり前なんだって。だからここユエバの街って食料が不足する事が少ないってカリナさん言ってた~」


 確かに、このイージム大陸は土地が瘦せていて作物の出来が悪い。

 その代わりに森とかにはやたらと危険ではあるけど手を加えれば食べられるものが多い。


 こっちにいる一角ウサギなんて見た目は可愛いけど危険を察知するとその角で突っ込んでくるので結構危ないらしい。

 しかも雑食で場合によっては集団で襲ってくると食べられてしまうとか。


 そんな過酷なイージム大陸、確かに食料確保に悠長な事言っていられないかもしれない。


「結局カリナさんはそれを狙って露店で食べ歩きでもしてたっての?」


「さあ、でもトーイさんたちが言うにはカリナさんああいった露店で食べ歩きしながらお酒飲むの好きなんだって~」


 カリナさんらしいと言えばカリナさんらしい。

 それにエルフは虫を食べる習慣があるから余計にゲテモノに対しての耐性が有るのだろう。



 もしかしてさなぎの油揚げとかも好きなのかな?



「うえぇ、もう露店で食事するのやめよう……」


「なんで? 美味しかったじゃん~」


 ルラはきょとんとしているけど、流石に好んで食べるものでもないだろうに。


「とにかく、今後はなるべくちゃんとしたもの食べよう。うん、そうしよう」


 私はぐっとこぶしを握りそう言うのだった。



 * * *



「あら、おはよう。よく眠れた?」


「……おはようございます。カリナさん、わざとですよね?」



 朝食をとりに下の階に行くとカリナさんたちがすでに来ていて朝ごはんを食べていた。

 にっこりと笑うカリナさんにジト目で私はそう言う。


「わざとなわけないじゃない、あれは本当に私のおすすめだったのよ? 飲み物で当たりはずれは飲んでみなきゃわからないからわざとなわけないじゃない?」


「そ、それはそうですが……」


 確かにルラは酔っていなかった。

 ルラにも聞いたけどあれって酩酊成分が発酵しているかどうかは運しだいだとか。

 なのでこれ以上文句の言いようがない。



「まあ、ユエバの街の特徴と言えば特徴ですね、ああいった食べ物は」


「冒険に出てるとよく食う食材もあったがな」


「仕入れは自分で行けばタダだからな。魔物の身体は場所によっては売れるしな」



 ネッドさんやトーイさん、ザラスさんも笑いながらそう言っている。

 そう言えば「エルフの剣」の皆さんはここでは有名な冒険者だった。

 だから当然ダンジョンとかでも自給自足で魔物を食料とすることもあるのだろう。



「でも、できれば虫系は勘弁してもらいたいです。お父さんが美味しそうにさなぎの油揚げ食べるの思い出すので……」


「あら? あれって美味しいじゃない?? リルは嫌いなの?」



 ここにもいたよ、虫食いがっ!!


 えーんがちょっ!

 バリアーっ!

 もうカリナさんに近付かない!!



「あんな動くモノ気色悪くて嫌ですよ! しかも知らずに食べさせられたけどすっぱいし!!」


「あら、それって蛾のさなぎね? 他のは甘いのとかミルクみたいな味するのもいるのよ?」


「いえ、とにかく結構です。食べた後にあんなうねうね動くモン見せられたら鳥肌モノですってば!!」



 小さな頃のトラウマが蘇る。

 あれ程に驚かさせられてお父さんを恨んだ事は無い。



「ねえ、なんか雨強くなってきたね?」


 私とカリナさんがそんな話をしているとルラが外の様子を見ながらそんな事を言っている。

 つられて外の様子を見ると、確かに雨足が強くなってきている。


「今日は大人しくしているしかないかな?」


 カリナさんは窓の外を見ながらそう言うのだった。



 ◇ ◇ ◇



 あれから三日が経った。

 外は相変わらずの大雨のまま。

 私たちは今日もこの宿屋の一階食堂で暇を持て余している。



「リル、いるか? 今ついでに商業ギルドに行ってきたんだがキャラバンのドドス共和国行きは当面中止だ」


 

 ザラスさんが買い出しから戻って来て扉の所でフードを脱ぎながら私を探してそう言う。


「えっ!? 延期で無く中止ですか!?」


 毎日こう大雨が降っていればキャラバンの運行は無理だと嫌でもわかる。

 しかし延期はあっても当面中止ってよほどの事だろう。


「川の氾濫が収まらないどころか、近くの小川でさえ水があふれ出しているって話だ。ユエバの街なんかはもう三日も狩りに出られなくて騒ぎ始めている」


 食糧の自給率が低いこのユエバの街。

 当然その食材は近隣の森とかに頼っている。

 しかしこの大雨だ、狩りも森の植物の採取も出来ない。


「ここまでの大雨が長く続くなんて私も初めてね。大抵はに三日くらいで止むと言うのに、その気配が感じられないわ…… ん?」


 カリナさんはそう言って空を見て首をかしげる。



「んん~??」



 そして雲や空の様子を凝視する。


「なんか精霊の動きが変??」


「え? 精霊って、風の精霊とか水の精霊ですか?」


「うん、なんか不自然な動きなのよね……」




 カリナさんのその言葉に私も目に魔力を込めながら空を見るのだった。  

 


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