6-1大災害
エルフのマズ飯は鉄板!
ひょんなことからそんなエルフに転生した二人はひょんなことから知らない場所へと転移で飛ばされます。
そして美味しいものを探しながら故郷のエルフの村へと旅を始めるのですが……
エルフの双子姉妹、リルとルラの物語です。
お、男って……(リル談)
「止まない……」
大雨の為、たまたま岩場に有った洞窟で雨宿りをしているけど既に三日が経った。
本来ならそろそろユエバの街に到着している頃だけどこの雨の中無理して進むわけにもいかずもう三日もここで雨宿りしている。
「本当に珍しいですね、ここまで大雨になるとは」
ネッドさんはそう言って【炎の矢】で土を素焼きで作ったお風呂に張った水を温める。
「準備できた? お、いい感じね。それじゃあ先にお風呂いただきますか。ネッド、昔みたいに覗いちゃだめよ?」
「の、覗きませんてば//////!!」
そう言いながらカリナさんはカラカラ笑ってカーテンを閉めて服を脱ぎお湯につかる。
ざばぁ~
「ふう、いいお湯~」
あまりにも暇なのでカリナさんの指導のもと精霊魔法でこの洞窟を改造していた。
土の精霊たちを使って地面からせり上げたベッドや仕切りを作って風呂場を作り炎の精霊で焼いて素焼きに近い湯船を作ってお風呂に入れるようにしたりと快適さがどんどん増している。
かまどとかも作っているのでお料理も楽になっていて、なんかこのままここに住めそうな位になりつつある。
「はぁ、カリナのやつよくこんな状況で風呂入りたがるよな」
「ま、まあそうなんだけどな」
「カリナはきれい好きですからね」
そう言いつつもトーイさんもザラスさんもネッドさんもちらちらとカーテンの方を見ている。
「こほんっ!」
びくっ!
びくっ!
びびくっ!!
私が咳払いすると三人は一斉にビクつく。
そんな三人をジト目で見ていると勝手に喋りまくる。
「の、覗こうとかしてないぞ!?」
「ち、小さい頃一緒に入ったから単にそれを思い出していただけだぞ!?」
「わ、私はほら、お湯が冷めていないかどうか気になっただけで!」
あたふたとする三人を見て私は更にジト目になる。
「どうでもいいですけど、覗いちゃだめですよ?」
「「「覗かない(です)!」」」
まあ、三人ともカリナさんが好きだってのは知ってるけど。
分からなくはないけどこの後私やルラもお風呂を頂くのだ。
こう言う事ははっきりとしてもらわないといけない。
「うーん、土の精霊さん、こっちに排水の溝作ってぇ~」
向こうではルラがまだ精霊魔法でお風呂の排水の溝を作っている。
土の精霊を使って外にまで流れ出すお湯を誘導する為の溝だ。
だってこのままだと洞窟の中が水浸しになってしまうから。
エルフ語で土の精霊魔法を使い何とかルラは溝を完成させる。
にっこりと笑って額の汗をぬぐう。
「お姉ちゃん出来たよ~。はぁ、やっぱりあたしには精霊魔法を使うのは難しいなぁ」
「でもちゃんと出来たでしょ? うん、いい感じに排水が流れていくわね」
出来あがった溝には先程のカリナさんが湯船に入った時のあふれ出したお湯が流れ出していた。
湯気を上げながらだんだんと洞窟の外まで流れて行く。
これで洞窟の中が水浸しになる事は無いだろう。
「ネッド、お湯がぬるいわよ? 【炎の矢】を追加して」
ざっ!
「うほっ♡」
「おうっ♡」
「カ、カリナ//////!?」
お湯がぬるいとカリナさんはいきなりカーテンを開いてその白い肌をあらわにする。
「カ、カリナさん! 見えてる、見えてるっ!!」
「あ、まあいいか、この子らは小さい頃から一緒にお風呂入った仲だしね~」
「そうだけどそうじゃないっ! もう皆さん立派な大人なんだから!!」
慌ててそう言う私にカリナさんはカラカラ笑いながらカーテンで体を隠し端に移動する。
なんかぶつぶつ言ってるネッドさんは湯船に向かって【炎の矢】を打ち込むとジュっと音がして湯船の湯気が増える。
「んっ、ありがと。ちょうどいい温度になったわ」
そう言いながらカリナさんはネッドさんの頭をなでてやるとネッドさんは真っ赤になってしまう。
すごすごと前かがみでトーイさんやザラスさんの所へ戻るネッドさん。
いや、残りの二人も何故か前かがみだ。
男って……
「ねえ、お姉ちゃん次あたしたちがお風呂入って良いんだよね?」
「そうだけど、って! ルラっ! ここで脱ぐなっ!!」
「え~? カリナさんだって裸みんなに見られてたじゃん。村で水浴びしてたのと同じなんだから別にいいじゃん、めんどくさいし~」
「駄目ったら駄目ぇっ! お、女の子なんだから男の人の前で裸になっちゃダメぇっ!!!!」
更に前かがみになる三人を横目に私は服を脱ごうとするルラを止めるのだった。
* * * * *
翌日雨は上がって嘘のように青空が見えていた。
「うーん、やっと雨が上がったか。久しぶりの外は気持ちいいわね~」
「いや、カリナさんのせいで昨日は緊張してよく眠れませんでした……」
昨日の夜はやたらとごそごそ音がするのでその都度気になって目が覚めてしまった。
なにが有ったかはあえて言わないけど、よくもこんな状況でカリナさんとルラは眠れるものだ。
トーイさんやザラスさん、ネッドさんを疑う訳では無いけどやはり異性と一緒に旅をするのだから境界線はしっかりと保ってもらわないといけない。
そんな私の心配事に対して何故か今朝は三人ともテカテカで肌の色つやがやたらといいのが理解できないけど……
「さてと、足止め喰らった分急ぎましょう」
カリナさんのその言葉で私たちはこの洞窟を後にするのだった。
* * * * *
「何これ……」
カリナさんは目の前に流れている濁流の川を見て驚いている。
もともと小川が有った場所らしく、橋なんかない場所だったらしい。
小川を渡るのは歩いて行けるほどの浅瀬だったのに、今目の前に流れている濁流は流石に足を踏み入れられるような状態ではない。
「ここは窪地でしたからね。ここ数日の雨が流れ込んでいるようですね? しかしこれでは渡る事が出来ない」
ネッドさんはそう言いながら周りを見る。
場所によっては大木が流されているほどだ。
「うーん、流石にこれは無理ね。迂回路と言ってもこの近くには他に道は無いし、これが収まるまでまた野宿でもしなきゃかしら?」
大自然の驚異を目のあたりにして流石に私たちはどうしようもない状態だった。
あんな大木まで流されるのだもの、ここは大人しく水が引けるのを待つしかない。
となると下手するとまた数日この辺で野宿となるのかぁ……
「ねえ、お姉ちゃんの秘密の力でこれ消せないの?」
「いや、流石にこんな濁流の凄いの消せないでしょう……」
ルラにそう言われ私は目の前の濁流を見る。
真茶色の大量の水が勢い良く流れている。
ダメもとで私はその濁流に手をかざしチートスキル「消し去る」をロックしてみる。
するとなんと頭の中で「消し去る」を実行するか否かの最終確認が浮かんでくる。
「へ? 出来るのこんな川の氾濫みたいな濁流を消し去るだなんて……」
「なになに、リルのスキルが仕えるの?」
「そう、みたいですね…… やってみます、『消し去る』!」
まさか消える事は無いだろうと思ってチートスキル「消し去る」を使ってみるとなんと目の前に流れていた濁流が一瞬で消え去ってしまった!
「おおぉっ! すっげぇ―っ!!」
「まさか、ここまでとは……」
「おい、本当かよ? あの濁流が消えたぞ!?」
トーイさんやネッドさん、ザラスさんは目の前で消えた濁流に驚いている。
いや、消し去った本人だって驚いている。
「さっすがお姉ちゃん~。これでユエバの街に戻れるね~」
あっけらかんと言うルラをぱちくりと瞬きをさせて私は見る。
このスキル、こんなに凄かったっけ?
「はぁ~、エルハイミさんやシェル見てるから大概の事は驚かないけど、リルも大概だわぁ。あんたたち、この力むやみに使わない様に気をつけなさいよ?」
「ううぅ、分かってますよ。まさかこれほどまでとは私だって思わなかったんですから……」
驚きとちょっとショックだったりもする。
凄いのは凄いけど、これってやっぱり秘密にしないと面倒事に巻き込まれそうな力だ。
「んっ?」
私が自分の手のひらを見ながらそう思っているとカリナさんが森の奥の方を見る。
「気の、せいか…… まあいいわ、さ、先へ進みましょう」
そう言ってカリナさんは消え去った濁流の後を先に進むのだった。
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