表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スマホ世代の魔王と中年勇者

スマホ世代の魔王はカセットテープに封印された

作者: こだれ

「フハハ! そこの人間よ! 我を再生したのが運の尽きだったな!」


 実家のラジカセから聞こえたのは、自らを魔王と名乗る声だった。

 停止ボタンを押しても止まらないその声は、先日道端で拾ったカセットテープから再生されている。


「聞け! なんかうだつが上がらない感じの人間よ! 我が封印されし、その時を!」


 興味本位で実家まで来て再生してみたが、つか初対面でうだつが上がらない感じってなんだ失礼だぞ。


 どうやら若くて勢いのあったこの魔王は、スマホとネットとサブスクを駆使して世界征服を目論んでいたが、冴えないおじさん勇者が使う見たことが無いアナログ機器に油断し、このカセットテープに封印され今に至るという事だ。


「だってえー、我、知らんじゃん。あんなー、画面も無いプラスチックの四角いヤツにぃー、音楽データ入るとかさー」


 封印された魔王は、カセットテープに封印されたものの、その漏れ溢れる能力で、カタツムリ並みのスピードで移動したり、こうやって再生したら停止ボタンを押せないとかいう微妙な能力で、どうにか処分されずにこれまで生き残ってきたそうだ。しぶとい奴だ。


「更にこのカセットテープに封印された時、ツメなるモノを折られた為に、我はな、こうやって話す事しか出来なくなったのだ」


 まあ、確かに再生しか出来なくなるな


「なので、そこのモブ顔おじさんの人間、我をもう一度元の姿に戻す方法を調べる任を与えるぞ」


 いちいち一言余計だなこの魔王。しかし。


「ああ、俺は、元に戻す方法を知ってるぞ」


「な、なんと!? さすれば早く元に戻すのだ!」


 そう宣言したカセットテープ魔王は、ラジカセから勢いよく出てきた。

 久しぶりでうろ覚えではあるが、ひとつ作業する。


「さてさて雑魚人間! これからどーするのじゃ?」


 勝手にラジカセに戻りしゃべり始めた魔王をなだめ、後は自分が操作しなければならない事を伝える。



 カセットテープ魔王は、ツメ部分にセロテープを貼られ、ラジカセにセットされた。


 録音と再生ボタンを同時押ししたラジカセは、キュルキュルと音をさせながら、遠くでついてるテレビの音と外のバイクの走る音、そして下の階でオカンが呼ぶ声を、録音できる姿に戻ったカセットテープに上書きしていった。

同じ世界観の短編集を作りましたのでよかったら是非。

https://ncode.syosetu.com/n7955hk/

一番上のシリーズからも見れます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 カセットテープは、MDよりは長生きしてますよね。 MDは再生する装置すら、もう販売されていないとか……。
[良い点] めちゃめちゃ面白かったです。電車の中で思わず声を出して笑いそうになりました。設定の意外性、それを活かした物語の運びに唸りました。そして衝撃のラスト……!すごかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ