プロローグ 1
空には雲ができ、雨の降りそうな空模様の日の朝。
[剣鬼]ジョセフが初めて傷を負った日の話。
ジョセフは、右肩に負った深い切創を自身のマントでおで押さえながら、辺境近くの村へと歩いていた。
「ぐっっ。はぁ..はぁ、まさか..あの、[呪い]の力がこれほどまでとは...。フッ、私もすっかり気を抜いていたものだ。」
その声は、少しかすれてはいたが、同時に妙な安堵感も孕んでいた。
「まだだ..あの村にさえたどり着くことが出来れば..まだ...国王陛下をお救いすることが..できる」
そう呟いて、ジョセフは村へと歩き続けた。
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30分ほど経ち、村の門が見えてきたが、ジョセフはすぐそばの木にもたれかかった。
初めは15センチ弱しかなかった傷は、既に1メートルに達するほど大きくなっていた。そのため、歩くことすらままならないほどだった。
「フフッ......。まさか[呪い]の浸食がこれほどまでとは...これで命を落としたら、私は誰にも顔を向けられないだろうな」
ジョセフの意識が飛びかけそうなとき、彼の正面から声がした
「オイ、お前、大丈夫か?」
少年の声だった。
「うわっ、随分と派手に怪我してんじゃねえか。ちょっと待ってろ、今助けを呼んでくるからな」
ジョセフは声を出そうとしたが、傷の深さのせいか、舌が回らず声が出せなかった。
すぐに村の男たちが駆け付けた。
ジョセフは意識を失くす瞬間、村の男たちが、「この方は、もしや...ではな...のか...」
所々何を言ったのかは聞き取れなかったのだが、自分を見て、傷ではない何かに驚いているかのような声をしていたのは分かった。
そしてジョセフは、意識を失った。