空飛ぶ冒険者
弟は魔法を使わずに空が飛べた。
@短編その71
ワシ的想像ドラゴンサイズ>> シルバードラゴン両翼広げて横20メートル
ブロンズドラゴン両翼広げて横14メートルくらいを想像。
「きゃー!チーノ、なにしてるの!!」
アニキは気が動転するとカマっぽい口調になる。やめろ。
なにをしているかって?
そりゃあ・・・高い木に登って、降りられなくなった猫を助けているんだ。
オレは体を浮かせて、猫がいる枝までふわりと昇って、そして震える猫を優しく掴んだ。
腕の中でニャーニャーか細い泣き声の猫が、温もりを感じたのか大人しくなった。
「よしよし、降りるからな。じっとして」
「ばかーー!!今の見られたらどーすんのっ!!」
猫を地面に下ろしてると、アニキがこっちに猛ダッシュで駆けてくるから、猫は泡食って逃げていった。
「アニキ、逃げちゃったじゃんよー、ニャンコ」
「本当、ダメよ。見られないようにしなきゃ・・」
「・・・うん」
そしてオレを抱きしめて、ぐずぐす泣き出したんだ。
凄く勇気があり、行動力もあるのに、優しいアニキなんだ。
オレはカプチーノ、13歳。アニキはエスプレッソ、16歳。
二人は冒険者だ。
本日の依頼も終わり、宿屋に戻る道すがら、猫を見つけたんだ。
オレは珍しい『浮遊』が使える。
魔法で飛ぶんじゃない、オレの意思で飛べるんだ。
こういうこと出来る奴、珍しいんだそうだ。
だから親はオレを大金と引き換えにした。
アニキはオレを助け、一緒に逃げたんだ。
二人で逃げる旅は、もう2年になる。
逃げる途中で、アニキはギルドで冒険者に登録、それで得られる金銭で旅をしている。
去年12になったオレも、冒険者になった。
オレ達がいた国から随分離れた。
でも追手がまだいるかもしれないと、アニキは黒、オレは赤に毛を染めている。
そして帽子も被っている。今は夏だから、麦わら帽だ。
前を歩くアニキの麦わら帽のリボンがひらひらと靡く。
アニキには悪いことをした、今はそう思う。
オレのせいで、国を逃げる旅をさせてしまった。
アニキは凄く頭がいい。
国の文官になれると、14歳には言われるほどだった。
アニキもそのつもりで、一生懸命勉強していた。
文官になれたら、給料も良い。そしたら暮らしも楽になる。
なのにクソ親は、目先の大金に目が眩んで、オレを売ろうとしたんだ。
アニキはいち早くそれに気付き、オレを引きずるようにして逃げたんだ。
オレはそのときは、オレで金になるなら、そう思った。親孝行した気分でいたんだ。
だが違っていた。
ただ売られるだけではなかったのだ。
人体実験をされ、もの凄く苦しい目に合う。痛いでは済まされない事になると、アニキが泣きながら言った。
「ここまでクソだとは思わなかった、我が親がここまで金の亡者とは思わなかった」
賢く、目先が分かるアニキのお陰で、旅を始めた頃は追手に何度も襲われたが、うまく切り抜ける事が出来た。
今は追手に出会す事も無い。
「だが、用心に越したことはないな」
同じ場所には2日と居なかった。足がつくのを嫌った為だ。
旅をしながら、オレはアニキと魔法を学んだ。
アニキはすぐに覚え、中級の魔法を独学で学んでしまったが、オレは浮遊に特化した。
「魔法で飛んでいると誤魔化せるから、チーノはそれで良い」
「じゃあ、オレは剣でも覚えるとするかー」
「うん、そうしなさい」
ギルドで大量発生した魔物退治の依頼を受け、魔法と剣の稽古を兼ねる。
アニキが魔物を痺れさせて動きを止め、それをオレが切る。この繰り返しだ。
そのうち痺れさせる魔物が半分の数に、最後に痺れさせず、オレだけで倒すようになった。
簡単な攻撃魔法『火球』とか、『睡眠』もアニキが教えてくれた。
「お前一人でも、生きていけるようにしてやらないとな」
「何言ってんだよ。アニキと離れろって事か?」
「いや、もしも俺が病気とかになって、お前一人になった時の為だ」
「そうだけど・・・嫌なこと言うなよー。アニキ」
嫌な事は、現実となった。
立ち寄った村の側の川が氾濫し、崖崩れが起きて。
大雨の中、オレとアニキは村人達の救助を手伝って。
そこに鉄砲水、土砂と大量の水は山の木々も運んできた。
救助した人々を一気に飲み込んでいく。
「チーノ!!お前だけでも逃げろ!!飛べ!!!」
オレはアニキの手を取り、浮く。
アニキも助からないなら、オレは・・・
濁流が木々を持ち上げ、オレ達に迫る。オレはなんとかアニキを引き上げるが、大木が目の前に・・
その時、アニキはオレの手を叩いた。
思わず手が緩んで・・・アニキは下に落ちていった。
アニキの重さが急に無くなった所為で、バランスを崩したオレはきりきり舞いで吹っ飛ばされて・・
気がつくとオレだけが生き残っていた。
アニキの遺体は見つからなかった。
大丈夫、アニキ・・・
アニキが仕込んでくれたお陰で、オレは一人でも生きていける。
とまあ、湿っぽい話になっちまったが、オレは元気です。
そうなんだ、一昨日までは、悲壮感漂う、不幸な少年だったんだ。
アニキと逸れて1年、今は14歳。
実は・・・
アニキ、生きてた!!
え?知ってたって?そうじゃないかな〜って思ったって?
まあ、あの有能なアニキが死ぬはずはないよなーー。
オレはもう、わあわあと泣いたわけだ。アニキはもっと泣いていた。泣き虫だしね。
だけど、足が動かなくなっていた。
それでも、死んでいるのと生きているのでは雲泥でしょ?
アニキと再会したのが、その一昨日なわけだ。
あの濁流で死ななかっただけでも奇跡だけど、助けてもらえたのも奇跡。
現場から500メートルほど下流に流され、川の様子を見にきた領主のお嬢様に助けられたんだとさ。
で、恋仲になったと。
直すには、シルバードラゴンの新鮮な肝(胆嚢)が必要なんだと。
「まかせろ!」
オレはアニキと彼女に言ったのだ。肝はオレが持ち帰るってな!
アニキが生きていたし、彼女もいて幸せそうだし、オレ的にはもう幸せいっぱい!!
それにこの彼女がまた性格のいいお嬢さんなんだ!美人ではないけど元気で気持ちの良い人なんだ!
この人のためにもアニキの足を直さなくちゃね!
シルバードラゴンの新鮮な肝とは、死んでから1時間以内だそうだ。
アニキ達が住む領地は山の中で、捌く場所がない。と言うか、こんなところでドラゴンと殺し合いなんかしたら、領地ボコボコですな!
だからアニキが言うには、ドラゴンを倒したら速やかに解体、そして凍らせる魔法で肝を冷蔵保存して運ぶ。
冷蔵しても3日が限度だそうだ。
アニキのために、オレはやる!!
だが、ドラゴンでも上位に強いシルバードラゴンを、どう狩れば良いのか。
オレの腕ではまだまだだ。
そう。
冒険者の天辺の実力にならなければ!!
ここまでが前置き、あらすじで紹介だ。
え?
『ゲガして動けない兄のために、ドラゴンの肝をとるために強くなる主人公の話』で説明出来た、だって?
ああ、なんて風情のない・・・こういうことを踏まえて、は必要だろ?いいから聞け。
とにかくドラゴンを倒せるくらい強くなって、出来るだけ領地近くでドラゴンを倒して、肝をアニキのところへ運ぶ。これだ。ようやく冒険が始まったというわけだ、待たせたな!
ドラゴンを倒すには、誰か強い奴とパーティーを組むのが手取り早いんだが・・・
オレは・・・
実は人見知りだったりする。知らない人が話しかけてくると、ひょーんって物陰に隠れてしまう。
簡単に人を信じるな、を信条としてたからな。追われる身だったし。
だから、『もしかして追手と繋がりがあるんじゃ?』なんて思う時もあるんだ。
今まではそういう判断をアニキがしてくれていたから、今も他人を信じていいものか迷う。
ま!そう簡単には捕まらないように、逃げ足だけは鍛えまくっているんだ。
ギルドで簡単な依頼をこなし、報酬待ちをしていると噂話が耳に入る。
何処かの王子と護衛がドラゴン退治をしたとか、どこぞの国をドラゴンが襲ったとか・・・
最近ドラゴンや魔物が大量発生しているから、ギルドでも退治依頼が掲示板に貼られている。
さあどうする?
何処かのドラゴン退治のパーティーに加わって、経験値を稼ぐとか?
あ・・・そうだ。
オレは空を飛べる。
オレが囮になれば良いんだ。
スピードには自信がある。魔法で最近は飛んでいるが、本来の飛ぶ能力と同時にすると、ブーストが掛って倍の速さになる。よし、売り込むぞ!!
オレの売り込みは意外と早く認められ、あっさりパーティーに入れてもらえた。
Sランクパーティー『カメヤ』、パーティーメンバーはリーダーと副リーダーだけで、二人は夫婦だそうだ。
なんでも凄腕のドラゴンスレイヤーだとの事、早速面接だ。
「14歳なんて、弟みたいなもんよねー。かわいいー」
と、副リーダーさんがにこにこしてるし、リーダーもニカっと笑っている。
「オレ、2年前に15匹のドラゴン倒したから、今回は20匹を目指してる。頑張って囮になってもらうぞ」
「ひえっ!!」
「もーー、コスト度外視、儲けなし、記録だけを目指すんだもん〜、キットさんってばー」
ニコニコ顔の副リーダー、ワイヒューさんが奥さんだ。でもボクっ子で男装している。
キットさんがリーダー、可愛い名前なのに、190で大剣使いのがっしり体型だ。
「やめろと言わないんで?止めさせるという選択肢は?」
「もうこうなると、好きにしなさーいって感じ〜。さあ、あなたを雇ったのは、前回大剣がバキバキ折れて、ギリだったのよね〜。だから、荷物持ちの役割もしてもらうから!ポーションとか、食料とかも持っていくわよ。前回は、替も合わせて大剣7本、ポーションは17本使ったのよね。小柄なブロンズドラゴンも、数出ると結構大変〜。討伐に、2日掛っちゃったのよね」
「2日で済んだとか!!」
さ、さすがたった二人だけど、ふたりSランクハンターパーティーだぜ。
これは勉強になる!
でもポーションってバカ高いんだよな。それを17本って!金貨70枚で1本だったかな・・・
ブロンズドラゴンは、1体で買取価格が金貨60枚・・・大剣は廉価版が一振り金貨30枚。
わはは、全然赤字だ!!!
本当、面白い夫婦だなー!いつもは人と話すと緊張するんだけど、すぐ馴染んでしまった。
この二人がとても良い人達だからだろうなー。
こうしてこの二人と一緒に、ドラゴン退治の依頼を引き受け、コツコツと経験を積んだんだ。
キットさん、鬼神の如く強い。ズバン、と大剣で一閃です。
奥さんのワイヒューさんは、簡単な治療魔法も使える武闘家兼サポーター。
キットさんのフォローがメインです。怪我を治したり、剣の交換をしたり、隙あらば一撃を喰らわせます。
そしてオレの仕事は、剣士アンド囮。双剣でちょこちょこ走り回り、サクサク切りつけ、撹乱するんです。
もちろんワイヒューさんのサポートもします。メインは荷物持ちです。
戦いの最中は荷物を隠して置き、必要に応じてワイヒューさんに渡すって感じです。
でもワイフューさん、大剣を背中に1本背負って動き回っています。凄いです。
キットさんが全力を出せるようにサポートしています。阿吽の呼吸、ふたりでSランクは納得です。
仲間に入れてもらって3ヶ月。
遂に、ドラゴン退治の依頼が来ました。
まあ数は前回の15匹には及びませんが、8匹は大仕事です。
足手まといにならないように頑張るぞ!
前回の経験を踏まえ、まず綿密な計画を練ります。
荷物をどのくらい持っていくか、現地の地形とか、そしてオレは今回囮役デビューです。
囮になって、どこで迎え撃つか。
地図を見ながら、3人でしっかり打ち合わせます。
すごいなー。
二人で前回ブロンズドラゴンを15匹倒しただけあるなー。
そして、当日。
仮拠点に、荷物を置き。いざ!!
「おおお!凄いな!」
初お披露目!二人の前で飛行して見せます。
オレが飛べることは、面接でも打ち明けています。そして、秘密厳守を守ってくれています。
まずは肉の塊をぶら下げて、ドラゴンを引き寄せるためにすい〜〜と付近上空を飛んでいると・・・
ギャアウッ!
鳴き声だ!鼻がいいな、腹が減っていたのか?もう寄ってきた!!
おおお、すげえ!!もう目の前だ!!
「かぷちー!!」
この夫婦、オレを『かぷちー』って呼ぶんだ。アニキは『チーノ』と呼ぶんだけど、変な呼び方!
そんなに切羽詰まった呼び方しなくて大丈夫だよ!そっちへ追い込むからね!
『ブースト』
魔法で飛んでいたオレは、本来の能力で飛ぶのを加算、一気に加速。
両方の力を使うと、キラキラと光る霧が尾を引くんだ。しゅーーーってね!
「わあ!綺麗!!シューティングスターだ!!」
ワイヒューさんが嬉しそうな声を上げたのが聞こえた。
シューティングスター、か!かっこいいね、その呼び名!それ、貰った!決まり!
「そっち、行きます!!キットさん!」
「おうよ!!避けろよな!!」
大剣を構え、迎え撃つ気バリバリのキットさんの目の前まで飛んで、急上昇。
後ろを追っていたドラゴンの前に、キットさんが躍り出て、頭を真ん中から真っ二つに斬る。
「よし!1匹切ったら、次々来るぞーー!気を抜くな、かぷちー!」
「はいっ!!」
「3匹斬ったら剣交換だよ!」
「了解!頼むぜマダム」
仲間の血の臭いに煽られ、怒りを纏ったドラゴンが急接近。
オレはブースト状態で目の前を横切り、囮となる。よし、食らいついた!
追われるまま、キットさんのところに向かって飛ぶ。
その後もオレは次々ドラゴンを呼び寄せ、キットさんの元へと連れていくと、大剣でバッサリ。
「いやあ!!囮がいると、なんて効率がいいんだか。空を飛んでいて、なかなか降りてこないドラゴンが攻撃範囲に寄ってくると本当ラクだった!!かぷちー、ありがとうな!」
「ポーションは2本しか使わないし、剣も3本で終わっちゃった!ローコスト!!かぷちーにもご褒美いっぱいあげられるよ!」
ラクだったか?
結構飛び回って、ドラゴンと戦っていたじゃん。前は15匹で二日って言ってたな。
本日、3時間で終了だもんな。ラクか。
飛んでいるドラゴンを降ろすのが一番大変だというから、囮役で時短出来たそうで。
「でもキットさんつえー!ワイヒューさんもアシスト凄かったです!」
「まあ、一緒にいて5年近く経つし」
「そうそう」
成果は上々、オレ達は下山して近くの村の宿に一泊したのだった。
晩ご飯もたっぷり食べたよ!
オレは1年キットさんとワイヒューさん夫婦のパーティー『カメヤ』で修行を続けた。
時々アニキの所に行って様子を伺うと、元気そうで頑張って動く練習もしていた。
すごいや。さすがオレのアニキだ。
恋人のルーミイさんが、献身的にアニキを看護してくれるのもありがたい。
ブロンズドラゴンはちょくちょく現れるけど、シルバーは年に2〜3度見かけるレベルだ。
アニキのいる所の、近くに現れてくれるといいんだけどな。
・・・なんて思っていたら。
4回目のお見舞いに行ってみたら、ルーミイさん、お腹が・・・ぽこっとしていた。
アニキとの子だそうだ。
オレは・・・オレは・・・
「おめでとうっ!!アニキ!!ありがとう、ルーミイさん!!」
嬉しくて、嬉しくて、わあわあ泣いてしまった。
アニキは照れ臭そうに笑っていて、ルーミイさんも顔を真っ赤にしてへにゃっと笑った。
アニキはオレの所為で幸せを手放してきたんだ。
アニキには幸せになって欲しかったんだ。
だから、すごく嬉しかった。
絶対、早くドラゴンの肝を手に入れて、いつか家族で歩いてピクニックに行けるようにするんだ。
おめでたって、続くものなのかな?
なんとワイヒューさんもご懐妊!
なのでオレとキットさんで依頼をこなす事となった。
「行ってくる。・・いってきまーちゅ、ままとおるちゅばんちててねー」
朝出掛ける時、キットさんはワイヒューさんのお腹を撫で撫でしながら言うんだよ。
「キットさんー、それやめぃ」
「お前もそろそろオレをキットさんって呼ぶな。夫婦なのに」
「・・・照れるー」
「なんでだよ」
本当仲がいいです。
子育ても含めると、ワイヒューさんの復帰は数年後です。
なので、オレにそのままパーティーにいて欲しいと二人に頼まれたのです。
見舞いに帰るたび、アニキ達とキットさん、ワイヒューさんは話す機会が増えて、今ではいい友達です。
しかも子供は同い年。
そのうちお前のアニキのところで子育てもいいかもな、なんて言っています。
とてもいい環境ですからね、あの領地は。
オレはまだ二人に言ってなかったんです。ドラゴンの肝の話。
「もっと早く言え!」
キットさんには小突かれ、ワイヒューさんには頬を抓られました。
元々一人でやるつもりだったんだ・・・
でも二人は親身になってくれたんだ。
「よし、ワイヒューが動けないうちに、サクサクっとやっちまおう」
まずは、シルバードラゴンの生息地や頻繁に出没する場所をリサーチから始めました。
キットさんがギルドや情報機関などの伝手を利用してくれて、領地に近い出没場所をいくつも特定していきます。
こんな事、オレ一人では出来なかった事です。さすがSランクです!
ドラゴンを倒し、冷蔵保存加工して肝をアニキの元へ運ぶ計画は、着々と進みました。
「なあ、チーノ」
「ん?何アニキ」
「お前、ちょっと礼儀正しくなったなぁ」
「そう?」
「前はもうちょっとやんちゃだったのになぁ。大人になったんだなあ、って思うよ」
「まあ、オレも人生にもまれたって事だね」
「悪かったな。俺の足が不自由になったせいで、お前に迷惑をかけている」
「なにいってんのさ。まかせてよ、足、絶対に治すから」
アニキが死んだと思っていた1年は、本当に辛かった。
だから、生きているとわかってどれだけ嬉しかったか。
絶対に、シルバードラゴンを倒して肝を手に入れる。
「でもアニキもおねえっぽい喋り方しなくなったね」
「ルーミイに笑われたくないからね」
「そだね」
今は車椅子のアニキだ。
またアニキと歩きたいんだ。
オレの手を繋いで、国から逃げた。ふたりで一緒に、歩いて歩いて・・・
雨の中
雪降る滑る道
真夏の茹る暑さの坂
ふたりきりで、旅をしたんだ。
兄貴がそばにいてくれた事で、どれだけ心強かったか。
だから待ってて。絶対に治すから。
注目していたドラゴンの出没場所の一つに、シルバードラゴンが現れたと報告があり、オレとキットさんは現地に向かった。
空高く滑空するシルバードラゴンを、オレ達は目撃。
「さあて、一発で成功させるぞ!かぷちー」
「はいっ!キットさん!」
この時のために、何度もシュミレートしてきた。
キットさんは片手に大剣、そして替の大剣を背に駆け出した。
オレは空へ魔法で浮遊、いつものドラゴン寄せの餌を手に、ドラゴンに近寄る。
ほーら、特別製の高級肉だぞ。
あ。なんか目があった気がする。
ぶら下げている肉もだけど、オレも餌なんだろうな。
さあ、凄い勢いでこっちに向かってくるぞ。シルバードラゴンはドラゴンの中でも速さが特徴だ。
オレ、負けるな・・・・『ブースト!』
ピューーと飛んでいたオレは、一気に加速!
キラキラと霧状の光を流し、まさにシューティングスター。
ドラゴンは一瞬びっくりしたのか空中で停止したが、すぐに加速してオレを追ってきた。
さあ、キットさんの所へ、行け!!
大剣を構えるキットさんの間近へ急降下、そして、地面に肉を転がして、急上昇!!
オレと入れ違いで、キットさんが前に出てダッシュ、そして迫るドラゴンに向かって大剣を振りかぶり、右翼を斬り落とした。翼を失ったドラゴンは、錐揉みしながら地面を滑っていく。
斬ってすぐにUターン、ドラゴンに向かってキットさんは走り、高くジャンプ、斬り!!
ドラゴンの首がザックリと斬られ、頭がずるんと体から両断されて転がった。
「かぷちー!肝を切り出すぞ!!」
「はいっ!!」
着地して、オレはドラゴンの体に取りすがり、ナイフを突き立てた。
「硬いです!!」
「待ってろ、切れ目を入れる!」
「あまり深く斬らないでください!肝が切れるかもしれません!」
「まあ任せな!!はあっ!!」
キットさんが大剣で腹に真一文字の切れ目を入れた。
オレはその肉の切れ目に潜り込み、肉をナイフで切り、奥に進む。
内臓が見えた。腸だ。でかい。
鳥、ゴブリン、これは・・人間?腸の内臓物が透けて見える。
ええい、今は無視だ。
キットさんも、長い腸を引き摺り出してくれる。引き出していくと、やっと肝が見えた。
オレは手早く肝を切り、教わった冷蔵魔法を掛ける。
肝が見つかった時点で、キットさんが保冷袋を取りに行ってくれて、冷蔵魔法が掛かったタイミングで袋の口を開けて、
「ほれ、入れろ!」
「はい!」
ぼとんと音を立てて内臓が袋に落ちた。
2日目には肝はアニキの元に届き、薬が調合されて・・・
「アニキ、大丈夫かーー」
「大丈夫だ」
館の中庭にて。
ルーミイさんに支えられ、アニキがゆっくりと立ち上がった。
そしてよろよろと、一歩一歩歩いていく。
「あ、だめだ・・筋肉が、馬鹿になってる・・・」
そして、ゆっくりと座り込むのを、ルーミイさんが支えるも、二人でぺたんとしゃがんだ。
「すごいよ!歩けたよ!やったーー!!」
少し離れたところで見ていたキットさんとワイヒューさんも近寄って来た。
「おめでとう!エスプレッソ!歩けたな!」
「ああ、でもこれから暫くはリハビリだ。でも歩けるのはいいね」
アニキに寄り添うルーミイさんも、涙を零して喜んでいる。
もうすぐ出産、喜びひとしおのアニキ達夫婦に、オレももらい泣きだ。
ワイヒューさんも、それより4ヶ月後に出産予定だ。
ワイヒューさんもルーミイさんとアニキが住む館に住む事となり、オレとキットさんは相変わらずギルド依頼をこなしているわけだが、そろそろ出産も近くなったので、過保護なキットさんはお嫁さんの傍にいると言うので・・・
オレは一人で旅に出掛けることにした。
オレが居たって何も出来ないしね!
ふわふわと空を飛び、気ままな旅。
やっとオレの『任務』が終わったんだ。
と言うか、オレの冒険は、ここからだよね!
オレを売っ払おうとしたクソ親はどうなったかは気になるが、ほおっておくかな。
オレを追い回した奴らは、結局誰だったんだろう?
いやいや、もう関わらないほうがいいよね。アニキもきっと『やめとけ』って言うね。
うん!!たしかに!!
『ブースト』
オレは霧状の光を残して飛び去った。
シューティングスターという名の冒険者が、人の話題に上るのは、もう少し先の話だ。
思いつくまま、ほぼ1日1話ペースで書いています。
目標は365話。
お題が欲しいので何かください。




