第1幕ー1 新たな世界
エスポル暦3015年、エスポルアースを震撼させたゼトの襲来から15年の月日が流れたのであった。地上の世界から通じる穴から、やってきた使徒であるゼトにより家族や友人を殺された為に多くの人々の心の傷は癒えていなかったのである。
エスポルアースの地底国バグミュダット公国の首都ルズトゥンベルトでは空前規模の大爆発が起きた事により、主要都市は壊滅的な被害を受けただけでなく世界の滅亡まで危ぶまれた。リヒュテイン公国やエリュレヘン公国含む、ファンダルフォ三国は、壊滅的な被害から防衛線を張り巡らし、空母や艦隊を増援した。
ゼトの襲来を人々は破滅の日と呼称して、現在も教科書に乗る程、人々の脳裏に刻まれた。
約1000年前にもゼトは、地上から襲撃している。そのおかげで地上の人類は絶滅し文明は終わりを迎えた。地上の人類を破滅に追い込んだ使徒は、巨大な穴を通して、地底大陸の国へと侵入した。そして、何十体もの使徒が地底大陸を襲撃した事で、何十億人もの人が死亡したのであった。そして二度目のゼトの襲来から、次々とゼトは、地上の国から地底国へと襲撃していった。エスポル歴3017年のゼトの襲来を得て、地底防衛軍は、ゼトに対抗する巨大なロボットを製作したのであった。そのロボットの名こそエクシレムファルコンと言った。
15年前に突如巨人へと進化した龍太郎は、ゼトの心臓を砕きゼトを倒したのであったが、その後は人間の姿に戻り眠りに着いたのであった。その後、龍太郎は、15年間、目を覚ますことは無かった。
龍太郎は、今、現在も地底防衛軍の地下基地で眠り続けている。そしてそんな中新たな物語が始まろうとしていた。
「あー、地底を救った英雄だってさ、確かにこんなのすげぇとは思うけどさ、未だにこんなの、信じらんねえよな。ファルマ聖騎士団になって、ゼトの1型を倒したんだからさ」
17歳の男子高校生であるアビト・オスヴェルールは高校の教科書に書かれているその話を信じていなかった。何故ならその時彼はまだ2歳であったのだが人間が巨人になる姿などこの目で目撃していなかったからだ
現在レオンハルト高校に通うアビトは15年前家族と逃げている時に、ゼトと戦う、巨人の姿を確かに目撃していた。
「あの謎の巨人がいきなり姿を現して、使徒をぶっ倒す。その巨人がファルマ聖騎士団って名前で、その正体が人間??そんな話が信じられるか?。確かに俺は覚えているけどあいつはただの巨人だったぜ。」
「ファルマ聖騎士団って何よ??」
アビトの友人であるオズレインは、そもそもこの事実すら知らなかった。教科書に書いている事をすぐ忘れてしまうオズレインにとって、正直どうでも良い話であった。だがその時は興味があったので、アビトに聞いたのであった。アビトは、覚えている記憶を頼りに言った。
「ハーメルンの書の神話に伝えられし伝説の巨人の事さ。1000年前のゼトの襲撃の際も、復活しこの世界を救ったとされているからね。地底防衛軍は、それを元にファルマ聖騎士団を復活させたんだけど、まさかその1人が地球人だとはね。」
アビトは幼少期家の書斎に置かれていたハーメルンの書という神話を熟読していた。ハーメルンの書では、ファルマ聖騎士団と呼ばれる伝説の巨人が確かに出てくる。1000年前に地上の人類を絶滅に追い込み、その上で地下人類を襲撃した使徒を殲滅した伝説の巨人である。その巨人は穴を使い、地上へと姿を消したとされている。オズレインは得意気に語るアビトに対して感激したのであった。
「お前やっぱりすげぇな。物知りは違ぇ。」
「まあな俺みたいなマニアは中々いねえからな。まあ偉大なる俺の親父が俺に教えてくれた事で、ここまで物知りになる事が出来たんだよ。でもまあまさか地球人にその巨人の生き残りがいたなんて話は本当に信じられんのかって感じだけどなあ。まあ、、噂に聞くけど、防衛軍がなんか裏で絡んでんじゃねえかって話だけどよ。」
アビトは、オズレインから褒められて少し嬉しそうだ。そのハーメルンの書とは地球の日本で言うところの古事記や日本書紀のような伝説的な神話である。そんな中で龍太郎が眠り続けている事を、大っぴらに否定するアビトの友人は、アビトの発言を根本から全否定したのであった。
「お前まだそんなヒーローに憧れてんの。そいつはとっくに死んだんだよ。巨人だかなんだか知らんがどうせ大した事ねえんだろ、大体神話に出てくる巨人が実在する訳なんかあるかってんだよ。結局な家族は死んだんだ。そんなデマなんか俺は信じねえからな。」
アビトの幼馴染みであり友人でもあったリオン・ステインは、かつて家族をセカンドインディペンデンスで亡くしていた。父親も母親も妹も、ゼトに殺された。あのゼトの襲来で家は押し潰されて急死に一生を得たのであった。リオンは、アビトを羨ましがっていた。
「お前はいいよな。家族全員助かったんだからな。俺はな、家族みんな全員殺されたんだよ。地底防衛軍なんて信用しねえ。あいつらがもっとちゃんとしてりゃ家族だって死なずに済んだ。」
リオンの目はいつも青ざめている。常にクールで周りの人を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。家族もいない天涯孤独な中で育った為に、リオンの心は常に虚無であった。対照的な態度を取るアビトを睨め付けるように言われた事に対してアビトは腹を立てると言い返したのであった。
「お前、なんで睨んでんだよ。俺のせいみたいな言い方しやがってよ。俺がそんなこと言ったから??ふざけんなよ。お前よ。」
アビトは逆上して、リオンの胸ぐらを掴んだ。するとリオンは、アビトの顔面を殴り付けた。殴り付けられた事に逆上したアビトはリオンに対して殴り返したのであった。オズレインとアビトのクラスメート達は殴り合いの喧嘩をする2人に近寄ると、アビトを止めたのであった。
「アビトやめろ、リオンも落ち着けって!!」
「俺は地底防衛軍なんか許せねえ。あいつらなんか信用しねえからな。」
リオンは、無理矢理喧嘩を止めた友人達によって強制的にアビトから止められ引き剥がされると、吐き捨てるように言い散らしたのであった。リオンは、地底防衛軍を激しく憎んでいた。防衛軍が事前にゼトの襲来を予想していれば今回のセカンドインディペンデンスをもう少しちゃんと対処すれば防げる筈だったのに。
そのせいで家族は死んだ。
(なぁ、何が生贄だよ。そんなことする必要があったら、親父や母さんや、俺の妹を助けるべきだったんじゃねえかよ。)
リオンは、心の奥底に於いて常に葛藤を繰り広げていた。文部省が製作した歴史の教科書には、こう記されていた。ゼトの生贄として選ばれたのは人間。人類を喰い尽くす使徒に対抗する為に、地底防衛軍は、人類を生贄として捧げる事で地底人類は救われると人々に信じ込ませたのであった。地球に存在するキリスト教で言う所の最後の審判のような者だ。実際防衛軍は、最後の審判を催すように生贄を十字架に張り付けて処刑を行なっていたのは紛れもない真実であったのだ。
「なあそれよりホントなのかよ。その英雄って、実はまだ生きてるって噂って。」
オズレインは、話を遮るようにはふと言い始めたのであった。どこかで聞いた事があった。と言うよりアビトやアビトの彼女であるミリアがよく話していたのだ。英雄は基地で培養液の中で只管眠り続けていると、もしそうなら、龍太郎は死んでいないという事になる。
「生きてる??一体どこに??」
「地底防衛軍の第2地下基地にさ。」
アビトのもう1人仲が良くよく絡んでいる友人であるユーリンもハーメルンの書の秘密をよく知っていた。ユーリンもまた幼少期に家庭でハーメルンの書の熟読していたのであった。ユーリンは、興味深々であったのでアビトに尋ねた。
「なあ行ってみねえか??」
「え?基地にか??やめとけよ。地底防衛軍なんて警備は厳しいし、みつかったら捕まるぞ。」
だがアビトは、内心では、基地で眠る英雄の事が気になった。もし本当に龍太郎が生きているのであれば、教科書に乗っている事実は、真実であるという事になる。その思いを胸に、アビトは口を開いた。
「でもさ、なんかさ、見てみたい気もするんだよね。俺の家族の命を救ってくれた英雄中山龍太郎!!。」
英雄を信じていない、アビトであったが、オズレインからの誘いに対してより乗り気になったのであった。その日の放課後、アビト、オズレインは、下校後集合したのであった。
「行こうぜ!!」
3人は、地底防衛軍の第2基地へ向けて走り出した。
学校から歩いて、20分、海から近く所に地底防衛軍の第2基地が存在する。そう、15年前、ゼトが倒れた場所。ここでゼトは倒れ、爆発した。世界の終わりの場所。
「なあここでゼトが爆発したんだよな。そうここで全てが壊れたんだよな。世界の運命が変わったんだよね。」
そうここで新しい出会いが巻き起ころうとしていた。




