第1幕ー1 バクミュダット公国
(え?ここどこよ?、俺は、旅行へ来たはずなのに)
もしかしてもうドイツなのかと錯覚した。見覚えのない小屋にいた。木でできた小屋の中には、ベットがあってそのベッドに自信は寝ている。俺は、ついさっきまで航空機の中にいたのに、目が覚めたら別の場所にいたのだ。ありえない事態に龍太郎は困惑した。まさか、自身は連れ去られたのだろうか。ベットのある部屋から外へ出ようとドアの所に向かった。するとその部屋に見知らぬ男が2人いたのだが
1人は中年で髭を生やした男だった。もう1人は、ガタイの良い若い男であった。龍太郎は、恐る恐る男達に質問した。
「あのーここはどこですか?、俺達が乗ってた飛行機、ハイジャックされたんですけど、あなた達は一体?」
するとその声に振り向いたのか、中年の男が龍太郎に話し始めた。その男は落ち着いた雰囲気がしており、先程のテロリストとは対照的な態度であった。全く、怖い雰囲気が、感じられない中年男は、龍太郎の質問を遮るように、喋り始める。
「君は中島龍太郎君だね?」
いきなり名前を当てられた上に、龍太郎は恐怖感を抱いたのであった。自身が所持していた、パスポート類の身分証明書類を落としたのではないかと確認して、ポケットを漁った。しかし、何も入っていない事実に気が付いた龍太郎は、中年男に聞き返した。
「ちょっと、、なんで俺の名前知ってんですか?、あんたらなんなんですか?、峯岸は?、もしかしてテロリストの仲間か?パスポートもないし、、ってかここどこなんだよ一体??」
「一緒にいた友達は、隣の部屋で眠っているよ。」
「なんだと、峯岸、峯岸に何したんだよ?
ここはどこなんだよ?、あんたら何者なんだ?」
隣の部屋に眠っていると言われて、終始疑いが隠せなかった龍太郎は、飛び起き隣の部屋に向かった。急いで隣の部屋を見ると、そこには、眠りこける峯岸の姿があった。先程のテロが嘘のように思えるくらい峯岸は安心した表情で寝ていた。ほっと一安心した龍太郎だったが、すぐに男達の方に視線を向けると睨みつけた。すると中年男は、歩きながら喋ったのであった。
「我々は、地底人だ。ここは地底国バクミュダット公国の首都ルズドゥンベルトだよ、私の名は、レミュシー・ロズワルドだ。君は、地底国バクミュダット公国の、旅行権利を得た。これから1週間バクミュダット公国を旅行することが出来るのだよ。」
「地底??、、いやちょっと待て、、あんた何言ってんだよ??ここは陸上だ。どこか別の国じゃねえのか??」
龍太郎は、信じられないような事実を口にするレミュシーと名乗る男に、近寄ると問い詰めた。龍太郎は今自分がいる場所が地底だと信じられなかった。慌てて外を見渡した。その外にはアルファベットで記された看板があった。その看板は見知らぬ言語であったが、Lで始まる文字で書かれている。そしてローマ字で読んだ時にレオンハルトと読めた。男は正解を言い当てた。
「ここはレオンハルトだ。君が今いる世界は、地底の国だ。」
「そんな馬鹿な、俺は、、本当に地底国に来てしまったのか??」
「心配するな、地底国は、地上の国と、時間が繋がっていない。ここでは何年過ごしても元いた地上の国へと帰ることが出来るのだよ、つまり君が、出発した日へとね」
誰を信じれば良いのだろうかわからなかった。この男の言う事はまだ信じられないが、この男は助けてくれたのであろう事だけは理解した。龍太郎は安心したのか、レミュシーに聞いた。
「じゃあまたドイツへ行けるってことか?」
レミュシーは、頷き龍太郎の質問に答えた。その口調はとても落ち着いた雰囲気だ。
「そうだよな。君の友達である、峯岸君と君は、バクミュダットの旅行する権利を得たんだ。2人で行ってきな。」
龍太郎は隣の部屋へと入った。峯岸はが、ベットで横になっていた。疲れているのだろうか。しばらくすると目を覚ました。
「龍太郎、良かったー、お前も無事だったんだなー、俺もさっきレミュシーから話は聞いたよ、一緒にさ、バクミュダット回ろうぜ」
龍太郎は、安心した。
「そうだなー、絶対楽しいだろうなー、でもびっくりしたなぁ、地底国なんてほんとに存在してたんだなー」
レミュシー・ロズワルドは悪い男ではなさそうだった。
「レミュシーさん、あの俺らが乗っていた飛行機にテロリストが乗っていたんですよ、あいつらってどうなったんですか?、あと他の乗客達は?」
レミュシーは言った。
「それなら心配ない、あのガスが撒かれた時に私達が、時間を止めて、乗客達は全員地底国へと避難させたよ、今現在飛行機の乗組員以外の乗客達は皆地底国にいる。テロリスト達と乗組員は空の上で時間が止まったままなので、停止中という事だ。そこは心配するな、私達は、あのテロリスト達を殺すつもりもないからね。」
「良かった、じゃあ俺らの荷物は、無事なんですか?」
「もちろんだ、乗客の荷物達も私達が、移動させておいたよ、君たちの荷物も無事だ。」
そう言われて見ると、部屋の隅に旅行の荷物が置いてあった。
レミュシーの隣にいた、若い男が話し始めた。
「俺はガインだ。よろしくな、これからバクミュダットの地図を渡す。これからここを出て港へ向かうんだ。そこに、フェリーがある。2時間ほど乗ると最初の都市、レオンハルトへ着く。そこからは自由散策だ。いいな、レオンハルトには、バクミュダット最大の秘境ロズの秘境がある。そこはいいぞ、観光地としては最高だ。それからこれを渡す。これはオールマイティパスだ。全て船、飛行機、電車がタダで乗れる。すぐれものだ。だだし、1週間で使える回数は40回だ。それを超えると、使えなくなってしまう。いいな、くれぐれも落としたりしたら再発行は出来ないからな」
ガインはワイルドで、強そうな男で一見すると怖そうだった。龍太郎と峯岸は、ベットから起き上がり、着替えた。
これから、一日かけて、レオンハルトを観光する。これまで、恐怖だったものが、ワクワク感へと変わっていくのを感じた。レミュシーが笑顔で、言った。
「それでは、楽しんで来なさい。」
龍太郎はお礼を言った。
「レミュシーさん、ありがとうこざいます。」
峯岸と龍太郎は手を振った。ドイツへ行けるだけではなく、地底国へ旅行出来るのなら、最高じゃないか、龍太郎は嬉しさがいっぱいだった。とにかく海外へ観光したかったのだ。龍太郎は、現地人の人っぽい名前に変えた。