第2幕ー7 マリアの思い
一方その頃戦艦では、マリアは相変わらず牢屋へ捕えられていた。いつしかエミリオが助けに来るだろうと信じていたが、もう捕えられて何日も経つ。もしかして、七眷属に殺されたんじゃないかと心配になった。
(エミリオお願い無事でいて!!)
心の中の願いはそれだけだった。
そんなマリアの元へギラが現れた。
「あんだけ痛みつけたのにまだ生きてられると大した生命力じゃねぇか。」
「エミリオはどこなの???いい加減に教えなさいよ。」
「奴は、ガルドと戦ってる。バルトアの森でな。無駄だ。ガルドは死刀の使い手。奴に勝ち目はねえよ。」
「エミリオが負けるはずがない。あの人に限ってそんな。」
「まあせいぜい牢屋で願っているがいい。仮にガルドが負けたとしても俺がぶっ潰すだけだがな。」
ギラはかつて人切りとして多くの人を殺した大罪人たった。その腕前はバクミュダット最高クラスとされ、彼と剣を混じえて勝って生きたものはいないとされている。
「まあせいぜい牢屋で今のうちに思い出に浸ってろ。」
そして話は過去へ溯る。
マリアとエミリオは幼馴染だった。
小さい頃から常に一緒にいた。ミカエル市で産まれ、エミリオは、リヒュテイン小隊の隊長の父を持っていた。マリアは、村の役人の娘として産まれた。
エミリオは父のような立派な国を守る剣士になりたいと思い、剣士を目指す為に士官学校へ入学。
マリアは人を助けたい思いから、医療術学校へ入学した。
村人達が病気や、怪我で苦しんでいる姿を見たくないと思った彼女は、医療術を使える一人前の医師になりたかった。
エミリオと結婚して、エミリアのことを治療しながら幸せな生活を送りたいという願いだけだった。
エミリオがマリアにプロポーズしたのはエミリアが士官学校を卒業して、第1小隊へ入隊して半年過ぎたくらいの時だった。
「マリア、私は昔からそなたの事が好きだ。そなたはいつも私のそばにいてくれたな。だから私と付き合ってくれ。」
口下手なエミリオはそのような事が中々言い出せず、シンプルに結論から言ってしまった。
ふふっと、マリアは笑った。
「エミリオ、あなたは緊張するといつもそんな喋り方になってしまうのね。でもありがとう。そんなふうに思ってくれたのね。私もよ。あなたしかいないの。だから、エミリオ私、あなたと一緒にいたい。あなたが傷ついたら、助けたい。だからたとえあなたが国のために戦っていて、家に帰ってくるのが死ぬほど辛くても、あたしは待ってるわ。だからお願い、私の傍にずっと居て下さい。」
マリアはエミリオへの思いを告げられて、とても胸が軽くなった気分だった。
「マリアありがとう。」
エミリオとマリアは沈む夕焼けを背景に愛を誓い合った。そんな平和な日常がたったあの1日で崩れた。
ミカエル市民大量虐殺事件。
バクミュダットのハルト3世が率いるバクミュダット国軍により、エミリオとマリアが住んでいた街は焼け野原となった。
その時、街を滅ぼしたのは炎の神龍アトラス。
そしてフェムシンム、煉獄の7眷属率いる、バクミュダット傭兵部隊。そして巨大戦艦、炎獄。炎獄から飛び立った飛行機はミカエル市街を空爆、街は炎の海となった。村を奇襲した七眷属によってマリアは誘拐されてしまった。
村の捕虜として捕まった、村人は村の決まった場所に連れていかれて、縛られると、ガソリンをかけられて焼かれた。その日、マリアとマリアの父親、母親は普段通りの何気ない日常を送っていた。しかしその夜、家に火が放たれた。放ったのは、バクミュダット連合国軍、それを指示したのは煉獄の7眷属のギラだった。
マリアの父親と母親と大勢の村人は、村の外へ連れていかれると生きたま焼き殺された。ギラはマリアの事を生贄として誘拐した。ハルトはその翌日変わり果てた村を見て涙した。自分の家が、焼け、父と共に村を守れなかった後悔に沈んだ。エミリオは、リヒュテイン新政府軍本部、本部長ライェデンバッハに会い、事件の詳細を詳しく聴いた。
「総隊長、私どもの村を襲撃したのはエミニュエルハルトの指示で間違いないのでしょうか。」
ライディエンバッハは、言った。
「エマニュエルハルトは、我々リヒュテイン国軍に、母親と父親を殺害された。15年前、奴はバクミュダット国軍の将校として活躍した。若き将校だった。しかしな、バクミュダット人の血を持つ奴は我々の同胞の多くを殺した。戦争で奴は勝利し、軍人から政府へとのし上がり、今や、バクミュダットの国王にまでなっちまった。だかな奴には人を思いやる心など良心はない。わがままで自分の思うがままの政治を行い。気に入らなければ抹殺する。
奴は、我々リヒュテイン連合軍を転覆させるつもりだ。奴はその見せしめにこの国の大勢の村を襲い、村人を殺した。それだけではない、奴はヘルヒュート大陸のフェムシンムと手を組み、一大勢力を結成した。恐ろしい核兵器を作り出し、この国を滅ぼすつもりだ。もう残された頼みは我々リヒュテイン小隊だけだ。これより命令する。エマニュエルハルトを及びバクミュダット連合軍を暗殺せよ。」
「冗談じゃない。いくら国と為とはいえ、そんな化け物みたいな連中を我々だけで殺せというのですか?総隊長、」
エルエラは、ライディエンバッハの意向に反対の意見を示した。
「今までは、何年間奴らと戦ってきた。しかしな奴らに勝てるのはエミリア、お前しか居ないんだよ。リヒュテイン小隊の中でもトップクラスの戦闘クラスを誇るお前しか居ないんだ。」
ライディエンバッハの最後の頼みの綱は、エミリオだった。
「お前が国に居ない間にこの世界は大きく変わってしまった。滅ぶか残るかどちらかの世界へとな。滅びへのカウントダウンは近づく一方だ。」




