勝負八「女の敵」
「どうだった?反省室は?」
「最悪でしたよ・・・伊藤先生は無知ですね、ああゆうタイプの人は嫌いです」
生徒会室に戻ってきた幸介を出迎える男子生徒。
彼は副会長の書記、藍同卓。
アイドル顔で女子からの人気が高い。
その所為か、彼の女癖はかなりひどい。
「副会長はそう思うんだ〜、僕は好きだよ、伊藤先生」
「お前の場合は女子全員が好きなんだろうが」
そう言った幸介、そして、卓が黒い笑みを浮かべた。
「なんだったら、伊藤先生を手なずけてあげようか?」
いくら顔はよくとも、その性格は外道で、最低なものの様だ。
「・・・じゃあ、頼んだ」
幸介は当然だと言わんばかりの態度で、そう言った。
「思い出すなぁ、うみちゃんの時と似てるよ」
「・・・あぁ、そう言えばそうだな」
「無知な女の子ほど、傷つき易い子はいないからね」
あざ笑う卓、いつもと同じだ、また女の子で遊ぶ。
そう思っていた卓だが・・・。
今回はそうも行かなかった・・・・。
屋上にまだいる一同、だが、雰囲気は最悪だった。
うみが黙り込んで、あゆむも怒った顔をして、
やしゃは少しは気力を戻したようだが、まだ完全ではない。
そして気まずさに飲み込まれている亜鹿と純、
「・・・どうしたお前ら?」
やっと晶が弁当を食べ終わり聞く。
だが、誰も反応しない。
「・・・・よし、さっきの眼鏡野郎をボコボコにして吐かせるか」
立ち上がる晶を必死に止める純と亜鹿、
そんな光景を見て、うみが言った。
「な、なんでもないよ、気にしないで」
「・・・・・」
「・・・・・」
元気のない笑いをするうみ、案の定、やしゃとあゆむは辛い顔をした。
「・・・そうか」
晶は気付いた、この話は、うみの前では話せないということを。
帰り道
「おいあゆむ」
「はい?」
晶が走って前にいたあゆむに追いつく。
「聞いても良いか?」
「・・・あまり話したくはありませんが、話すべきだと思うので、いいですよ」
眼鏡を指で上げるあゆむは、歩きながら話した。
「・・・あの生徒会副会長、城東には、書記が付いているんです、藍同卓、この藍同が最悪な奴なんですよ、容姿端麗なのをいいことに、周りの目をつけた女性を遊びに使うんです、甘い顔をして近づき、自分が遊びたいだけ利用すれば、すぐに捨てる、そして、うみも目を付けられたんですよ」
「・・・・・」
「うみもまた藍同の罠に掛かり、遊ばれ、捨てられた」
「・・・・・」
「・・・残念ながら、まだ報復はできていない、なぜなら、うみは今だあの藍同を好きでいるから・・・」
「・・・・そうか」
晶は物静かに返事をする。
「・・・晶さん、藍同に手を出すのは危険です、あいつは女性であれば先生にまで手を出す、この学校にいる女性の先生は全員彼の味方と考えた方が良いです、更に言うなら、あいつは女子生徒を巧みに操りこっちの弱みを握ることだって」
「・・・そんな事はどうだって良い」
「・・・晶さん?」
「その藍同とかいうやつは男として最低の行為を犯した、あいつに関わればどうなるだのそんな事を気にする前に、男として、そんな奴をオレは、無視するつもりはない」
「ですが、うみの気持ちだって考えれば」
「・・・誰かがそいつを止めなきゃ、うみを含めて、何人もの女の涙が流れ続ける事になる」
「・・・・・」
「女泣かせる奴は、どんなにカッコよくてもな、最低な男だよ」
久しぶりに、晶の表情が鬼も逃げ出すような恐ろしい顔をしていた。
職員室
「伊藤せんせい♪」
「・・・藍同くん・・・だっけ?」
伊藤に笑顔で近づく藍同、
「せんせい〜、この問題がよくわからないんですよ〜」
「え?どれ?」
古典の問題集を差し出して聞く藍同、
伊藤は丁寧に教える。
「へぇ〜、やっと理解できました〜」
「そう、それはよかったわ」
「・・・せんせい、今度先生の家に行って授業受けて良いですか?」
「え?」
「だってせんせいの教え方丁寧でわかりやすいですから、では、今週の日曜日に!」
「え?ちょと」
藍同は伊藤の返事も聞かず職員室を出る、
だが伊藤は別に良いかと思った、
だが、これが藍同の手口だった。
しかし、藍同はこの後、恐ろしい仕打ちがあるなどとは思ってもいなかった。
昼食時間
この時間は、藍同は多くの女子を連れて校庭で女子が作った弁当を食べる。
「卓くん!この玉子焼き食べて!」
「卓く〜ん、こっちのおにぎりも食べてよ!」
10人近くの女子が藍同を囲んでいる、
そんなハーレム状態の藍同、
そこへ、内気そうな女子生徒が寄ってきた。
≪・・・ん?・・あぁ、前から好きだとか言ってたあの子か≫
長髪の少女は手に弁当を持ってハーレムの中に入った。
「あ、あの、卓くん、このお弁当食べてくれるかな?」
≪あぁ〜、こういう子たくさんいるんだよな〜、めんどくさいし、捨てるか≫
「いらない」
藍同は何の躊躇もなく言った。
お弁当を持っていた少女はショックを受けたように、固まる。
「え、でも・・・折角だし、食べて・・・欲しいんだけど」
「いらない、それ捨てて」
「え?」
「君も、名前知らないし、誰?今度から話しかけないでね」
笑顔ではっきり言う藍同、
「でも、でも」
「あんたしつこいよ〜、卓くんは要らないって言ってるんだから捨ててきなよ」
女子達まで文句を言ってきた。
女子生徒は体を震わせながら、弁当を落とした。
そのまま走り去ろうとした時、
晶がその女子生徒の後ろに立っていた。
「・・・・なに?誰君?」
「・・・・お前に言っても無駄だ、教える気はない」
晶は、冷たい表情で言った。
晶の怒り爆発。




