勝負六「教師vs晶」
「三城君、ちょっと良いかな?」
そう言ってよってきたのは、伊藤先生だった。
放課後職員室に呼び出された晶、伊藤先生はすぐには話しに入らなかった。
「・・・あの、何か用でしょうか?」
「・・・・・・」
「・・・あの〜?」
「・・・・・・」
「・・・もしも〜し」
「あなたは、いじめが嫌いなのよね?」
唐突に口を開く、しかもよくわからない質問に少し苛立つ晶。
「・・・はい、そうですけど?」
「いじめって、どうすればなくなると思う?」
「いじめている奴に釘をさすしかないでしょ」
「それではダメなのよ」
はっきりと言う伊藤に、晶は面白いと思った。
少なくとも他の教師から三城家について話は聞いたはずだ、
それでも平気で話しかけるどころか反論までしてくる。
それほど自信があるということなのだろう、
「では先生、どうすればいいんですか?」
晶は逆に質問をぶつけた。
「簡単よ、殴る相手に殴ったって仕方ないわ、だからこそ私達には言葉という手段があるの、話し合いで解決するのが一番よ、誰も傷つかないから」
「・・・それだけ?」
「えぇ、それだけ、少し気性の荒い人ならそんなきれい事を言うなって言うけど、理論上、これが正解なのよ」
「えぇ、そうですよ、先生の考えは全く間違ってません」
「でしょ、だから、あなたも暴力で物事を片付けてはダメよ、いい?」
それで話を終わらせるつもりだったのか、笑いかける伊藤に、晶は平然とこう言った。
「僕は大人と同じ事をしているだけですよ、先生」
笑顔はすぐに崩れて怪訝な表情になった、
「・・・なに?あなたはボクサーかプロレスラーにでもなりたいの?」
「いいえ、ルールを忠実に守りスポーツマンとして正規のスポーツをしている人達の真似をするなんて失礼ですよ、僕は普通に大人たちが行っている制裁をやっているだけです」
「・・・何が言いたいの?」
「悪い事をすればそれなりの仕打ちがくる、それを覚えさせるために親は子を殴りますよね」
「それは教育よ、ケンカではないわ」
「あれ?僕がケンカしてるとでも言いたいんですか?」
「そうよ、相手が変な言いがかりを付けたから怒ったのでしょ?」
「とんでもない、相手は僕の悪口など一切言ってませんよ」
「じゃあ、あなたのクラスと他のクラスのあの子達を殴って怪我させたのは何でなの?」
「あいつらが、俺の友達をいじめていたから・・・ですよ」
「・・・そう、でも、だからといって許されるわけないでしょ」
「ですよね、あ・そうだ、先生、僕が殴った不良達にも、ちゃんと説教しましたか?」
「・・・話をすりかえるんじゃありません」
「納得いかないんですよ、僕としては相手が100%悪いと思っているんですから、それに事の発端も相手だし」
「だからって!あなたが手を出していいわけないでしょ!」
突如声を張り上げた伊藤に、周りの教師はビックリした。
とりわけ三城家をしっている教師は顔を青くして職員室から逃げるようにして出て行った。
「・・・ごめんなさい、ただ、あなたみたいに暴力を振ったのに反省しない人は嫌いなの」
「そうですか、だったら、先生は一生僕を嫌いますね」
「・・・ふざけているの?」
「ふざけているのはどっちですか、先生は何があっても暴力を振るなという、それは言い返せば『弱い何の罪も無い人間が殴られていても助けるな』って言ってるのと一緒ですよ」
「・・・・・」
伊藤は固まった、だが、顔は納得がいかないと言っている。
「・・・そんなの、ただのいい訳でしょ」
「・・・・どうやら先生は結局ビビっているそこら辺の教師と同じようですね」
「な、先生をバカにするのは失礼でしょ!」
「バカにされても仕方がないのはあなた達の所為でしょう?殴ってくる生徒にはビビって、言う事を聞かない生徒には形だけの説教をして、助けを求める生徒はことごとく無視をして」
「そ、そんな事!」
「ないって言えますか?絶対にいままでそんなことしなかったんですか?」
「・・・き、教師にも、限界はあるのよ」
「もし、あなたが勉強しか教えれない機械なら、僕への口出しは止めてもらいたい」
はっきりと、伊藤は言われた。
「・・・・」
「・・・では、先生、さようなら」
「まって!」
去ろうとする晶を止める伊藤。
「・・・あなたは、結局、教師は勉強しか教えれない、クズだと思うの?」
「全員の教師がクズだなんてさすがに思いませんよ、ただ、あなただけは、例外だと思っていました」
そう言って、晶は職員室を出た。
「なによ!教師を馬鹿にして!あの三城っていう子、最低ね!」
伊藤と同じ同期の教師仲間が声をかけてきた。
「・・・でも、なんだか、当然の事を言われた気がする」
伊藤は落胆しながら言った。
「仕方ないでしょ、教師が生徒を殴れば『体罰だ』って事で処分だし、口で言っても聞かない奴ばっかだし」
「・・・でも、そこを言う事聞かせるのが、教師なのよね?」
「無理無理、そんな事できるわけないでしょ」
「・・・でも、それじゃあ、本当に私はあの子に口出しできないわ」
「・・・へ?・・・勉強しか教えないとかなんとかだから?」
教師仲間が拍子の抜けた声を出す。
「絶対に暴力を私は認めない、守るためだからって殴って良いなんて思えない!」
伊藤は顔を上げて、前を見た。
「そうよ、ここで私がくじけたら、困るのは三城君だもの」
伊藤はやる気に火をつけて、職員室を出た。
帰り道
「え、それ先生にケンカ売ってきただけですよ」
「うそ?的確な指摘だと思ったんだがな」
「晶君、たしか、伊藤先生って、現文の?」
「あぁ、女の人の先生だ」
「・・・たしか、伊藤先生って昔ヤンキーだったんだって」
「・・・あぁ、だから殴るなとか言うのか、不良の仲間だから」
「いや、それは違うと思いますよ?」
「どっちにしろ、結局臆病な先公だよ」
晶は純にそう言うと、違う話題を出した。
だが、その間にも、伊藤がある行動をしていた事を、
晶はわかるはずもなかった。




