勝負三「殺忍三人衆」
『三城晶コロス!by、殺忍三人衆』
屋上から吊るされた巨大な垂れ幕、
甲子園にでも行く高校でしか見られないそんなものが、
目の前にある。
真っ赤な明らかに血をイメージしたデザイン、
そして周りの極度の怯えよう、
「・・・おいおい」
晶はただただ溜め息しかつけなかった。
屋上
昨日不良をコテンパンにしたこの屋上はいつの間にか晶の物となっていた。
利用するのはもちろん3人だけである。
「あ、晶君、さ、ささ殺忍三人衆になにかした?」
亜鹿が声を震わせて聞く、
「いや、そんな奴知らないし何かした覚えもない」
「・・・だとしたら、やっぱ、名森の仕業かな」
純が意外と落ち着いて言った。
「で、その殺忍三人衆ってなんだ?」
「さ、ささ殺忍三人衆とはですね、小口歩幸、黒染八叉、虹橋海の三人の事なんです。それぞれ通称が、不幸、八刺し、破壊といわれてまして、恐怖の伝説を打ち立てていると言われているんです」
「いかにもグレそうな名前をつけたもんだなその親達」
「そして、その三人衆の伝説が、小学生から殺忍部隊幹部をしていたとか、平助の右腕だったとか、中学生の時、ヤンキー校で有名な高校を3人で壊滅させたり、でも一番の伝説と言えばやはり、伝説の喧嘩師と戦ったところでしょうか、なんせ生きてますからね」
「し、しし新聞にも載ったあの、けけけ喧嘩師と戦ってい、いい生きているのはあの3人ぐらいですよ」
「・・・なぁ、平助って」
「え?平助ですか?その人は殺忍部隊のリーダーです。喧嘩師の直属の部下で構成された部隊、暗闇で仕事をこなし、常に陰で生きる人達ですが、平助という人は余程名の知れた人物みたいですよ、喧嘩師が唯一目を合わせて話したそうですから」
・・・・もう、これなんの不良漫画って感じだな。
「つーか、ようするに暴走族を小学生からしてましたってだけだろ」
「で、でででも小学生から暴走族なんて、普通じゃありませんよ」
「俺の兄貴は平助だが俺は普通だろ」
「「え?」」
声をそろえて固まる2人、
「だぁあ!!いいから!その三人衆とやらをぶっ潰せばいいんだろ!」
「落ち着いてくださいよ、簡単に倒せる敵とは思えません」
「なんでだよ?」
「だ、だだだだって、不幸は鎖の使いで、八刺しは棒使いだし、破壊は素手で岩を壊すんだよ?このまま戦ったら・・・晶君・・ヒック・・死んじゃうかも・・・」
涙目になる亜鹿、それ以前に物騒なその三人に違う意味で恐怖を感じる晶。
「ここは逃げるか白旗を上げましょう、でないと本当に死ぬかもしれませんよ」
「いや、多分なにしてももう遅いだろ、そんなに血の気の多い奴等なら」
「そうか・・・では、僕が親に頼んで百万円用意させます」
「まてまて、お前は今回関係ないだろ」
「・・・どこか?」
純が無表情ながら言った。
「・・・言ったでしょう、あなたは友達です、だから、助けるんです」
「・・・はぁ〜、でもお前の家に金あんのか?」
「知らないんですか?僕の家病院やってるんですよ?」
「・・・・へ〜」
生返事をする晶だった。
「だが、金はいい」
「なぜですか?お金ならありますから」
「そうやって、金出しても、誰も喜ばねぇよ」
「・・・・え?」
「よく考えろ、金はそんな使いかたしねぇよ、金で片付けれるのは一瞬だ、また嫌な事はすぐやってくる」
「・・・でも」
「・・・俺が喧嘩で病院送りになったとき、お前の病院に入れてくれ、ついでに医療費もタダにしてくれ、それでいいだろ」
「・・・仕方ないですね」
下校時刻、
今までなんの反応も見せなかった三人衆が、とうとう動きだした様だ。
話によれば学校全員から恐れられ、嫌っているそうだ。
不良達ですら下にはつきたくないらしい。
要するに3人しか敵がいないと思えばいい、
だが来たのは名森だった。
「あ、ああああんた、き、ききな!」
完璧にビビりまくって少し髪の毛が白くなっている。
まぁこいつがそもそもの原因なのだろうからパシリにされても仕方がないだろう。
「てめぇが三人衆になにか吹き込んだんだろ」
「そそそそそそうだと言ったら?」
「殺す」
「わわ私だけ、じゃないのよ!三学年のトップが私に押し付けて」
「あ?なに?あんた学年のトップだったの?」
「そそっそうよ!どう!?恐れ入った!?」
「お前をここで倒せば俺がトップか」
「!!!!・・・あああああんたなんて三人衆が倒すんだから!」
「まぁ、それは無理だな」
「なによ!何にも武器持ってないくせに」
「木刀」
そう言ってどこからか出した木刀を見せる晶。
「はっ、真剣ならまだ戦えるだろうけど、そんなんじゃダメね」
体育館まで進む名森、
するとそこで止まった。
「あんた、私の部下になるなら許してあげてもいいわよ?」
「どけブス」
「あ〜ん〜た〜ね〜、こっちは助けてあげようとしてるのに!いいわよ!ホラ逃げな!」
「あ?なぜ逃げる?その中に三人衆がいるんだろ?どけ」
「あー!!もう!どうせ入ったって死ぬだけよ!借りにしてあげる!だから返してよ、ほら、帰って」
「・・・意味の分からんやつだな、とりあえずどけ」
「・・・―――――のよ」
「あ?」
何か小さな声で呟く名森、
だが聞こえない、
「・・・もういい、好きにすれば」
そう言って名森はその場を離れた。
「なんだ?本当に変な奴だな」
そう言いつつも体育館の扉をあける晶。
亜鹿と純には先に帰れと言っておいた、
多分もう家にでも着いているだろう。
――――俺ははたして帰れるか・・・
体育館は結構広い、その中央にいる三人、
右には晶と同じ位の長身の男手には棒が握られている、左は眼鏡をかけた鎖を腕に巻いた奴、そして中央にいる背の低い赤に髪を染めた奴。
「左から不幸、破壊、やつはしか」
「八刺しだ!!って言うかその名で呼ぶな!!」
「あはははは!やつはしだってよ!やつはしく〜ん!」
「てめえなんか破壊だろうが!名前ですらねぇよ!」
「待てよお前ら、一応決闘前なんだからそれらしい態度取れよ」
「あ〜?決闘?そういえばそうだっけ」
なんなんだこの謎の空気は、
読めない、全く読めない!KYか!俺はKYなのか!!
いきなりの精神的攻撃に思考回路が逆回転してしまった晶はよく分からない心の叫びをしていた。
「え〜っと、晶・・君だっけ?どうする?」
「ここで死ぬ?それとも逃がしてあげてもいいよ?」
その台詞とともに破壊は禍々しい黒いオーラと殺気に冥界の死神が降り立った恐怖の場面を連想させる笑みと八刺しは般若面の鬼が地獄より這い出てきたかのような血の復讐を思わせる怒りの形相に不幸は冷徹で人間とは思えない冷めた−400℃の死の世界の極寒をも凍らす無表情。
それぞれが性格に見合った脅しの顔は恐怖なんかでは現せれない、
成る程殺忍だの化け物だのと言われる理由は分かった。
だが、怖いならば晶も負けてはいない。
こっちは生まれが極道だ、暴走族なんて程度の低いものとは違う。
「ほう、お前らはここで死にたいようだな?」
目は完全にキレて怒っているが口元は笑っている。
そして後ろにあるオーラは真っ赤な血と炎の合わせ塗りだ。
それは地獄の火などとは比べ物にならず閻魔大王ですら恐れるようで、
その血は例え殺しが好きな狂った殺人犯でも正気に戻し恐怖で昇天させるほどで、
また晶の周りにまるで正義の戦士だったはずが竜の血で不死身となりそれ以来化け物の王としてあらゆるものから恐れられる悲しき運命に狂わされとうとう血迷い殺しに生きる悪の勇者軍団がいるかのように錯覚させる殺気。
もう体育館は化け物の巣窟となっていた。
「おもしろい、やるようだな貴様」
八刺しが棒を軽く回し始めた。
「仕方ない、死なない程度に殺してあげますよ」
不幸も手に巻いていた鎖を解き始めた。
「楽しみだなぁ」
破壊は相変わらず笑っている。
晶は木刀を構えた。