始まりの街の森
師匠の部屋から帰ったその夜、眠りについた光輝はゲーム内にログインした。
光輝のプレイヤーキャラクターの「こう」は、現在レベル2で、ステータスは身長+10と重さ+10を取得している。
「とりあえず、レベ上げして…フレンド登録機能を解放しようかな」
プレイヤーサーチとフレンド登録を利用するには、レベル5のクエストをクリアしなければならない。
こうはモンスターを倒して経験値を取得し、レベル5まで上げる事にした。
まずは始まりの街を出て、モンスターの狩場の森に向かった。
こうが取得した重さステータスは、実は序盤でかなり使える有効なステータスだ。高所からの落下で、ダメージを加算する効果がある。
「うりゃ!」
「グチャッ」
こうは木の上から飛び降りて、スライムに真上から剣を突き立てた。
こうの落下攻撃により、スライムのHPが一撃で全損して撃破に成功する。
スライムは蒸発したあと、ドロップアイテムの青色ゼリーがばらまかれた。
青色ゼリーは、街の道具屋に売ると多少のお金になる。
「うし、じゃんじゃんいこう」
こうはアイテムを回収すると、次のモンスターがポップする場所へ移動した。
「…あれ?なんだあのモンスター?」
白くて長いヘビがトグロを巻いて、木の下で寝ている。
「レアモンスターだ!」
こうは静かに木に登り、先ほどのスライムと同じ戦法で撃破を試みる。レアモンスターを撃破すれば、かなり高価な報酬が期待できる。
「んしょ!」
木から飛び降りて、多分弱点であろう、白いヘビの頭へ向けて落下攻撃を行った。
「ギシャアアアア!!」
こうの落下が見事に決まったが、白いヘビのHPは1/3しか減っていない。
「やば、コイツ強い…」
ジャイアント・ホワイトツインテイル・スネーク:レベル10
始まりの街の周辺のモンスターは、強くてもレベル5がほとんどだ。
「ギシャアアアア!!」
白いヘビの二股の尻尾が鞭のようにしなる。バチンっと、尻尾攻撃が決まり。こうへ毒属性のダメージが付与された。
「しまった…」
毒によって、こうは痺れて動きが鈍り、少しずつHPが減少していく。尻尾攻撃をなんとか躱しながらも、じわりじわりと、こうのHPは残り3割まで割ってしまった。
「キュアー・ポイズン」
後方から現れた人影が、こうへ呪文を唱えた。こうの毒が消え、からだを捉えていた痺れが消える。
「プーリスト?」
こうは魔法が放たれた元に視線を向けると、そこには白いローブをまとった若い司祭の姿があった。
「援護します」
「あ、ありがとうございます」
若い司祭の回復魔法で、こうのHPは5割以上に回復した。
「シュアアアアアアア!!」
白いヘビは、突如現れた司祭に敵意を向けた。左右にうねりながら司祭へ近づき、司祭を睨んでいる。
若い司祭は白いヘビの死角へ飛び込み、銀のクラブで光属性ダメージを与えた。
「コンポ行きます!」
「はい!」
若い司祭の呼びかけに応えて、こうの剣で無属性ダメージを与え、続けて司祭の光属性ダメージを繋げていく。
「ギシュァ!!」
二人でコンボを積み上げ、白いヘビは硬直が発生した。
「弱点は尻尾です。おねがいします」
「了解です」
こうの剣が尻尾を捉えて、二股の尻尾は切断、直後白いヘビはHPが全損して撃破された。
「あぶなかったー、ありがとうございました」
「いえいえ、差出がましい真似をしました…」
「そんな、僕だけではやられていました」
こうの感謝に若い司祭がうつむきながら答えた。
「私はラギといいます。この 辺りに盗賊の住処があるらしいので、調査に協力して頂けませか?」
「わかりました。見つけたら報告します。…クエスト?」
(あ、勢いで受けてしまった…)
ラギと名乗った若い司祭はNPCだった。こうはラギからクエスト:盗賊の住処を受注し、続けて撃破ボーナスを取得した。
システムメッセージ:ジャイアント・ホワイトツインテイル・スネークの撃破により、ボーナスを付与します。
幸運+1
こうは3つ目のステータスの取得に成功した。
「うおおおおおお、やったあああ!」
幸運は誰もが欲しいステータスで、レアモンスターの遭遇率やクリア報酬に影響を与える。
切断された白いヘビの尻尾も、ドロップアイテムとして回収することができた。