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33:上級冒険者達

第33話です。

 土の精霊は、鉱山に居るのかもしれない。

 でも、鉱山にはメディマム族と言う魔人が居て、鉱山で働く鉱夫達はその魔人に……。


「クルスさん、メディマム族とは何なのでしょう」

「僕も詳しい事は……どこかで聞いたような気はするんだけど、何だったかな」


 赤髪の魔人────チキータさんはそう言っていました。

 強力な魔法を操り、上級以上の冒険者でなければ立ち向かえない。

 きっと、私達が今まで戦ってきた魔物などとは、比べ物にならないほどの強さなのでしょう。

 ここまで来て、八方ふさがりです。



 この日は結局、武器の新調や魔導書の購入をするだけで終わりました。

 クルス様の剣は、ここへ来るまでにだいぶ消耗していましたので、買い替える事ができたのは良かったと思います。

 購入したのはミスリル製の剣で、今までクルス様が使っていた鋼鉄の剣とは斬れ味が全然違うのだそうです。

 ミスリルの剣と言えば、リオンが使っていたような気がします。

 あの時は、すぐに折れてしまっていたのですが、大丈夫なのでしょうか……。



 宿屋は二部屋取る事ができました。

 ここの宿屋は大きく、お部屋の数にも余裕があります。

 テティスの村では一部屋しか空いておらず、クルス様にはご不便をお掛けしました。

 これなら、クルス様もゆったりとお休みする事ができると思います。


 食事を済ませ、部屋に戻った私は、購入した魔導書を読み漁りました。

 詠唱の概念などが記載されており、上級魔法を超えた高等魔法に繋がる記述もあります。

 私は中級上位の魔法までは覚えましたが、上級以上の魔法はまだうまく詠唱できません。

 精霊魔法がありますが、彼らに頼ってばかりというわけにもいきませんので、私自身も強くなる必要があります。

 そうしなければ、私は守りたい人達を守る事ができません。

 あの日、ロデオ様を救えなかった後悔が、私の心の中にしこりのように残っています。



 夜も更けてきました。

 そろそろ寝なければ……ランプを消すと、部屋の中が真っ暗に染まりました。


 昨晩とは違い、今日は私も一人です。

 それが当たり前なはずなのに、なぜだか少し寂しい気持ちになりました。


◆◇◆◇


 翌朝、宿屋に設けられた休憩所でクルス様と合流し、再びギルドへと向かいました。

 ギルドは朝から賑わっています。そこに、チキータさんの姿がありました。


「チキータさん、おはようございます」

「あら。おはよう、リズちゃん。クルス君もおはよう」


 チキータさんは、何やら冒険者の方々とお話していたようです。

 長髪の黒髪の男性と、屈強そうな髭の生えた男性、そしてローブを着た大きな杖を持った男性が居ました。


「私の依頼を引き受けてくれる、ベテランの上級冒険者が現れたんだよ!」

「私は数々の魔族・魔人を倒してきたフリューゲルという者だ。

 そして、そこの大斧を携えた男がバストロン。魔道士がフォニアという」


 長髪の男性は「よろしく頼む」と言うと、私に握手を求めてきました。

 とりあえず握手を返します。見た目はスラっとしていらっしゃるのに手は固く、それがこの方の鍛錬の凄さを物語っています。

 男性はクルス様とも握手を済ませ、チキータさんへ向き直りました。


「メディマム族とは、伝説級の一族だ。よもや、そんな者が存在しているとは思えないがな」

「まあ、俺達にかかればどんな魔族でも簡単にねじ伏せてやるさ!」

「我々が、この町に再び平穏を取り戻して見せましょう」


 男性達がそう言うと、ギルド内が騒がしくなりました。

 期待の声もありますが、幾つか罵倒も混じっているようです。


「ふっ……弱者共はそこで私達が持ち帰る朗報を待っているがいい」


 そう言うと、フリューゲルさんは仲間の人達を連れてギルドを出て行きました。

 チキータさんも後に続きます。


「どうせ、あいつらもすぐに逃げ出しちまうよ。チキータも懲りないねえ」


 冒険者の方が言いました。


「ついこの前も、それで前金だけだまし取られたばかりじゃないか」

「まあ、そいつらも最初は魔人を倒すつもりだったみたいだけどな」


 ギルド内がガヤガヤと騒がしくなってきました。


「リズさん、行こう……」


 クルス様と私は外に出ました。


◇◆◇◆


 町の人の話では、チキータさんは冒険者の人達に付いて行ってしまったそうです。

 チキータさんも、ああ見えて中級冒険者です。


「クルスさん、このままではチキータさんが危険だと思います」

「僕もそう思う。逃げ出す分にはいいんだけど、あいつらは確かに腕が立ちそうだ。

 メディマム族とかいう魔人が居たとして、それでも戦おうとするだろうな……」


 クルス様は何やら考えているようです。

 私はチキータさんが心配です。今からでも追いかけたいところですが、クルス様を私の我がままに巻き込むわけにはいきません。

 でも……


「リズさん、追いかけたいんでしょ?」


 クルス様は地図を出して鉱山の場所を確認しています。


「どちらにしても、ここまで来て立ち往生しているわけにもいかないし、様子見も兼ねて僕達も鉱山へ向かいましょうか」

「良いんですか……?」

「大丈夫。何があっても、リズさんの事は僕が守るよ」


 クルス様は笑顔でそう言いました。

 町を出て、私達は北の方にあるという鉱山へ向かいます。


 途中、倒された魔物を数体見つけました。先程の冒険者の方達が倒したみたいです。

 どれも一太刀で倒されているようで、あの人達の熟練度がそこからも伺えます。



「この大きな山が鉱山かな?」


 前方に大きな山が見えました。木で組まれた柱があちこちに倒れています。

 入り口は、木枠が組み込まれています。

 チキータさん達は、既に中へ入って行ったようです。


「リズさん、この先何が出るか分からない。気を付けて進もう」

「はい、クルスさん」



 鉱山の中は暗く、ランプも灯っていないため足元がよく見えません。


「【ブライトニング】」


 指先に光を灯します。

 この魔法は、本来目つぶしに使う魔法です。でも、魔力を弱めて使えば、こうして松明の代わりにも使えるみたいです。

 早速、昨晩読んだ魔導書が役に立ちました。


「魔法って便利だね。僕も剣だけじゃ無くて魔法も覚えようかなあ」

「クルスさんなら、きっと簡単に覚えられますよ」


 鉱山内は静かなままです。私とクルス様の足音だけが響いています。

 しばらく進むと、大きな魔力の流れを感じました。チキータさん達の声も聞こえます。


「始まってるみたいだ。僕達も行ってみよう」

「はい」


 クルス様の指示で、なるべく足音をたてないように慎重に進みます。もしかすると、チキータさん達は魔人と戦っているのかもしれません。

 上級冒険者が必要な程の相手です。私達が迂闊に出ては、逆に足手纏いになってしまう可能性があります。


「この野郎!!」

「フォニア!防御魔法を!!」


 フリューゲルさん達の声がします。

 壁に身を隠し覗き込むと、大きな空洞内部で激しい戦闘が繰り広げられていました。


「【インテンシブ・デオトルネード】!!」


 巨大な竜巻が何かを襲っています。雷光を伴った高等魔法は、内部の岩肌をも削り取って進みます。

 その先に、不敵に笑う赤髪の人物の姿が見えました。


「脆弱な魔法だ」


 赤髪の人物が指をかざすと、魔法陣から同じ規模の竜巻が発生し、フォニアさんの放った魔法を打ち消してしまいました。

 あれがメディマム族……想像していたよりもはるかに危険な魔人のようです。

 魔法の名前すら詠唱せず高等魔法を繰り出し、涼しい顔をしています。


「くそっ……!こんな化け物が本当にいるなんて!!」


 余裕そうな赤髪の人物に比べ、フリューゲルさん達は、既に疲弊しきっています。

 空洞内を注意して見ると、地面に倒れているチキータさんの姿がありました。

 あの冒険者達は、チキータさんを守ってくれるのでは無かったの……!?


「なかなか楽しませてもらったが、私も土の精霊を探さなくてはならんのでな。悪いが、お別れだ」


 赤髪の魔人のかざした指先から魔法陣が現れ、高等魔法クラスの炎が出現しました。

 その巨大な炎は、倒れているチキータさん、フリューゲルさん達へ向けて炎を巻き上げながら進みます。


「チキータさん!」


 私は無意識に飛び出していました。左手を前に出し、火を司る精霊を呼び出します。


「【エプリクス】!!」


 光が発せられ、それは巨大な燃え盛るトカゲの姿を象ります。

 炎の高等魔法は目前にまで迫っていました。


「エプリクス!この巨大な炎をかき消して!!」

『容易い御用だ』


 エプリクスは火の精霊です。どんなランクの魔法であっても、火の魔法であれば彼には関係ありません。

 巨大な炎の魔法は、エプリクスが大きく開けた口で飲み込み、消えて行きました。

 私はチキータさんに駆け寄り、息があることを確認すると回復魔法を唱えます。


「精霊魔法……貴様、一体何者だ?」


 赤髪の魔人は、静かに威圧感のこもる目線を私に向けてきました。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

クルスさん、出遅れてしまいました。

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