03:王女様に会いました
第3話です。ここから定期更新になります。あらすじなど一部変更しました。
マリーと友達になって五年ほど経ちました。
アリだった頃には考えられないほど、月日が経つのを早く感じます。
私はすぐにでも働きたいのですが、お母さんがそれを許してくれません。
子供のうちは遊ぶのが仕事だというので、私は今日もマリーと一緒に遊んでいます。
マリーと一緒に丘の上の草原へ来ました。ここには春になると蓮華の花が咲き乱れます。
私はお母さんに教わった花の冠を作ることにしました。
花を編み、円環に束ねていきます。マリーも見よう見真似でがんばっています。
「もっと長い茎で作らないとうまく編めませんよ」
「むずかしいよ~」
苦戦するマリーを見て、人間の子供って可愛いなと思いました。
可哀想なので、作り方を教えてあげることにします。
◆◇◆◇
「はい、これはマリーにあげますね」
「わーありがとう!」
マリーは花の冠をかぶって大喜びです。
「リズにもあげるね!」
「ありがとうございます、マリー」
マリーの作った花の冠は、私が貰いました。
少し形は歪ですけど、マリーが一生懸命作ってくれたものです。
これは、私の宝物にします。
空を見上げると、のどかで良いお天気です。私はお花畑に寝転びます。
雲がゆっくりと流れていきます。
アリだった頃は、こんな風に空を見ることはありませんでした。
マリーも横に寝転びます。
「リズは、いろんなことを知ってるんだね」
「そうでもありませんよ。世の中はまだわからないことや不思議なことがいっぱいです」
人間のことも、まだまだわからないことだらけです。人間の母親は女王様ではありません。そして、子をたくさん産むこともないみたいです。
お父さんとお母さんが一緒にいることも、アリだった頃には考えられませんでした。種族が違うと文化も全然違うようです。
そろそろ町に戻ろうかと思ったときです。遠くから複数の足音が聞こえてきました。
「誰か来たみたいです。マリー、隠れましょう」
私達は木陰に隠れました。平和な町ではありますが、人間には子供をさらっていく人もいると聞きます。
マリーもいる以上、用心するに越したことはありません。
「まぁ、綺麗なお花畑!」
現れたのは、どことなく上品な雰囲気の漂う少女でした。私達よりも少し年上でしょうか。
そして、その傍らには騎士様が控えています。
「綺麗なお姉さんだー」
「あ、マリー、待って!」
マリーは二人のところへ走って行ってしまいました。私も追いかけます。
「あら、あなた達は?」
「わたしはマリーって言います!」
「私はリズです。この近くにある町に住んでいます」
「ただの町娘のようですね」
騎士様も警戒を解いてくれました。この方はどこかの貴族の方でしょうか?
「私はディア。アステア国の王女です」
「お姫様!?」
どおりで高貴な感じがすると思ったら、王女様だったのですね。
騎士様は困った顔をしています。素性は言わないほうが良かったのでしょうね。
「ディア様、もう少し警戒心を持ってください……」
「こんな可愛らしい子供たちですよ?そんな心配は無用です」
ディア様はそういうと、マリーの頭を撫でました。マリーは大喜びです。
人間の王女様というのを初めて見ました。慈愛に満ちた、優しい方のようです。
「ディア様はどうしてこのような場所に来られたのですか?」
「政務の帰りに立ち寄ったのです。こんな綺麗な場所があって驚きました」
王女様ともなれば、私達と同じ子供であってもいろいろと忙しいようです。
その辺はアリと真逆みたいですね。
「あなた達、その冠自分で作ったの?」
「リズが教えてくれたんだよ!ディア様も作りたい?」
「マリー、王女様に失礼ですよ」
「そうね……作ってみようかしら!リズ、お願いできる?」
「あ、はい」
まさか、王女様に花の冠の作り方を教えることになるとは思いませんでした。
ディア様は物覚えが速く、すぐに作り方を覚えました。
「これでいいのかしら?」
「はい。あとは同じように繰り返して編んでいくだけです」
ディア様は、綺麗な花の冠を作り上げました。それを、私達がしているように頭にかぶりました。
「ディア様似合ってるね!」
「ありがとう、マリー」
「ディア様、そろそろ行きませんとお父上が心配されますよ」
「わかってるわ。そろそろ行きましょう」
騎士様に促されて、ディア様は立ち上がりました。
王女様と一緒に過ごせた時間は、あっという間でした。マリーも寂しそうです。
「リズ、マリー、とても楽しかったわ。またお会いしましょう」
「ディア様、お気をつけて」
「ディア様、またねー」
ディア様は騎士様と一緒に丘を降りて行かれました。
私達庶民が王女様にそう簡単に会えるとは思えませんが、まるで友達のように接してくださったディア様に、私も心惹かれるものがありました。
「リズ、またディア様に会いたいね」
「ええ、そうですね」
私達も、遅くなる前に町へ戻ります。ここは、まだ町の敷地内ですので大丈夫ですが、はずれにある森には魔物が棲むと聞きました。
夕暮れになる前に戻らなければ、お母さんに心配をかけてしまいます。
家に帰った私は、今日あったことをお父さんとお母さんに話しました。
二人とも驚いていましたが、王女様の名前を言うと信じてくれたみたいです。
この町は小さな町ではありますが、通っている道はお城へと続いているそうです。
大きくなったら、いつか城下町の方へ行ってみたいと思います。
……
…………
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それから更に三年ほど経過し、私は十歳になりました。
リズが何歳か書いてませんでしたので、文末にちょっとだけ追加しています。
教えていただいて、ありがとうございました。