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25:復讐者(1)

第25話です。

 ヒノさんのクエスト騒動から一夜明け、騎士団や自警団の方々もフードの男の捜索に入りました。

 クエストの話を持ちかけられた冒険者はヒノさん以外にも数人居たようで、その方々の証言から城門付近をうろついていたという情報が得られたそうです。


「昨日の事だからな。もう犯人はどこか遠くに言っているのかもしれん」


 ロデオ様も、なかなかそれ以上の有益な情報が得られないそうです。

 とはいえ、今回の犯人の目的が国家転覆だとしたらほおっておく事も出ません。

 私もできる限り情報を集め、犯人探しに協力する事にしました。


 あちこちを回り話を聞きますが、大した情報を得られません。

 すると、武器屋のご主人と話していたレド様に会いました。


「レド様、何かわかりましたか?」

「いや、全然だ。リズの方はどうだ?」

「私の方もさっぱりです」


 フードを被っただけの人でしたら町に何人も居ますが、怪しい感じのする人達ではありませんでした。

 やはり、この町にはもう居ないのでしょうか。

 そうなってしまうと、次にまたこの国を襲ってくる可能性が出てきます。



「お、レドさんにリズちゃんじゃない!おひさー!」

「メアリ様!」


 ギルドに入ると、掲示板の前にメアリ様が居ました。

 何か報酬の高いクエストが無いか、見に来られたそうです。


「町の中が騒がしいけど、何かあったの?」

「ああ、ちょっと厄介な事件が起こっちまってな」


 レド様は、フードの男のクエストの事から昨晩の出来事までを、メアリ様に話しました。


「つまり、何者かがその祠の石を盗んで、わざわざ呪いを掛けて、そのヒノっておっさんに渡したわけね」

「そうなんですよ。でも、犯人と思われるフードの男が見つからなくて困ってるんです」

「なるほどねぇ……」


 メアリ様は、ニヤッと笑いました。


「その呪いのかかった石は、リズちゃんとレドさんが破壊したんでしょ?

 だったら、呪いを掛けた術者はただでは済んでいないはずだよ。

 身近に今日突然、体調が悪くなった人とか居たりしないかな~?」


 呪術というものは、失敗をすると術者に返って行くものなのだそうです。

 さすがメアリ様です。もし犯人がこの町の中に残っていれば、そこから何かわかるかもしれません。


「リズ、このことを自警団の連中に伝えに行くぞ!」

「はい!」

「がんばってねー!」


 メアリ様と別れ、私達は自警団の詰所へ向かいました。



 詰所にはちょうどロデオ様達も来ていました。

 私は早速、ロデオ様達にメアリ様に聞いたことを話しました。


「そうか……なるほどな。もしかしたら犯人がわかったかもしれん」

「本当ですか!?」

「昨晩突然、体調を崩した者がいるんだよ。これは、王にも話をしておく必要がありそうだな」


 王様にも……どういうことでしょうか?

 ロデオ様に付いて、私達も王宮へと向かいます。


◆◇◆◇


「ロデオよ、例の事件の事はわしも聞き及んでおる。犯人がわかったというのは本当か?」

「今の段階では、その者が犯人の可能性が高いという話です。

 ただ、それが正解だった場合、この国にとっての今後の事にもいろいろ影響してくると思います」

「ふむ……わかった。覚悟しておこう」



 ロデオ様は王様にそれだけ伝えると、次は王宮にある医務室へと向かいます。

 ここは、体調の悪くなった兵士様や魔道士様が休むところだそうです。

 簡易的な治療などもここで行われます。


「クルス、レド、リズ。先に言っておく。

 もしその者がこの件の犯人だった場合、戦闘になる可能性がある」


 ロデオ様の表情は真剣です。この場で戦闘になるということでしょうか?

 レド様とクルス様の表情も硬くなります。


「実は、その事を考えてリズ達にも来てもらった。なるべく王宮内での戦闘は避けたいが仕方あるまい。

 もし、怪我人が出た場合はリズは回復魔法を頼む」

「承知しました、ロデオ様」

「……では、行こう」


 ロデオ様は医務室の扉を開けました。


 医務室の中には一人の男性が居ました。

 何やら苦しそうな顔をしています。


「ゲルド、お前に聞きたい事があって来た」


 ロデオ様はその男に話し掛けました。

 男は苦しそうな顔をしながらも、立ち上がりました。


「騎士である貴様が、私に何の用だ……」

「町で発生した事件について聞かせてもらおうと思ってな。お前なら何か知っているのではないか?」


 男の表情が強張るのがわかりました。

 ロデオ様は男を見つめ、その表情は厳しいままです。

 男はロデオ様から視線を外すと、私を睨みつけて言いました。


「精霊魔道士の娘よ、石を破壊したのは貴様か?」

「あの石の事を知っているという事は、あなたは……!」


 男の雰囲気が重々しく変わっていきます。


「貴様が私の計画の邪魔になる事はわかっていた。

 だから私は貴様を牢に閉じ込めておいたのだ。それをあの無能な王は……」


 男が手を上に掲げると、頭上にあの石に書かれていた模様が浮かびました。


「私は、嘗てこの地に住んでいた一族の末裔だ。王にうまく取り入り、ずっと復讐の機会を狙っていた」


 男の姿が見る見る変わっていきます。

 その姿は、たくさんの目玉こそ無いものの、昨晩戦った魔物の姿によく似ています。


「ある男が私に力を授けてくれた。私はこの力をもって、復讐をすると誓った」

「斬り捨てろ!!」


 ロデオ様の掛け声で、クルス様とレド様が動きます。

 しかし、剣も斧も、その体に弾かれてしまいました。


「────【デオフレイムアロー】!」


 私の放った燃え盛る矢は、男の手で簡単に払われてしまいました。


『この地を再び取り戻し、私は新たな王となるのだ!!』


 男は手のひらから魔力を放出し、私達を攻撃してきました。

 焼けつくような痛みが襲い掛かってきます。


『苦しかろう。この魔法は、神経に直接作用しその者に堪え難い痛みを与えるのだ』

「き、貴様……」

『しばらくそこで苦しんでいろ。貴様らは用件が片付いたら料理してやる』


 魔物と化した男は医務室を出て行きます。

 部屋の外では兵士様達の騒ぐ声が聞こえました。


「このままでは……あいつは王の所へ行ってしまう!」

「ロデオ様……回復を!【ラウンドヒール】」


 回復魔法を使いましたが、体中の焼ける痛みは消えません。

 このままでは、コルン王国もアステア国の二の舞になってしまいます。


「全身が痛く痺れて、満足に斧も持てねえ……いや、立ち上がる事も無理だ……」

「リズさん、すみませんが精霊を……」

「その必要は無いわ」


 私達を優しい光が包み込みました。 

 その光は、体中にあった焼けつく痛みを消していきます。


「メアリ様!」

「ふー、何か嫌な予感がして来てよかったわ」

「メアリ……お前、いつの間に回復魔法を!?」

「ラウンドキュアヒールっていう魔法なんだ。

 リズちゃん、お姉さん今回はちゃんと回復魔法覚えてきたよ」


 メアリ様はやはり凄いお方です。

 この短期間で、回復魔法も習得されてしまったのです。


「メアリ様ー!」

「あはは、リズちゃーん!感激の抱擁は後でね~」

「そうだな、ゲルドを追うぞ。メアリも済まないが一緒に来てくれ」


 私達は医務室を出て男を追います。

 悲しい連鎖はまだ断ち切れていませんでした。

 この国を、アステア国のようにするわけにはいきません。

 あの男を何としても止めて見せます。

お読みいただきましてありがとうございます。

今回敵の使った魔法は、私が実際に病気で体験した神経痛をもとに書いています。

もう治りましたが、神経痛は嫌な病気ですよね。

ストレスなどからもなりますので、皆様もお気を付け下さい。

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