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23:祠に封じられしもの

第23話です。

 西の山の麓に着きました。

 この辺りは、町からもだいぶ離れていますので、魔物の目撃例もあります。

 決して安全な場所というわけではありません。


「ヒノさーん!居たら返事をしてくださーい!」


 動物の鳴き声が聞こえるだけで返事はありません。


「もしかすると、もう山の奥の方へに入って行ったのかもな。

 魔物が以外にも、ここには狼やら凶暴な動物だっている。一刻も早く見つけねえと……」


 レド様に付いて、私も山の中へ入りました。

 山の中には、何か重い物を引き摺ったような跡が幾つか見られます。

 木こりの方が伐採でも行ったのでしょうか?


「ん、何だ?」


 ガサガサとした音が聞こえ、そちらを見るとコボルトが飛び出してきました。


「「キキャー!」」


 コボルトは二匹です。手には棍棒を持っています。

 私達を挟むように二手に分かれて、こちらに向かってきました。


「レド様、そちらのコボルトはお願いします」

「おう、任せとけ」


 私の方へ向かってきたコボルトは、その動物的な跳躍力を生かし跳びかかって来ました。

 飛び跳ねたコボルトへ向けて矢を放つと、空中で制御の効かなかったところに命中しました。

 基本的に弱い魔物ですので、これだけで仕留める事ができます。


「こっちも終わったぜ」


 レド様の足元には、斧で叩き斬られたコボルトが絶命していました。


「ついでに、コボルト討伐のクエストを完了しておくか」


 レド様は、斧で器用にコボルトの尻尾を刈り取ります。

 私の分もレド様が刈ってくださりました。


「ありがとうございます、レド様」

「なに、いいってことよ。それよりそろそろ祠に着くはずだが」


 茂みの奥に、怪しく光る祠が見えました。

 そこにヒノさんの姿が見えます。


「ヒノさん!待ってください!」

「ん……あれ?リズちゃんじゃないか」


 ヒノさんの手には、ギルドに居た人に聞いた石が握られていました。


「ヒノさん!そんな怪しいクエストなんてやめて一緒に帰りましょう!」

「何でリズちゃんがクエストの事……ああ、そっか、オフクロだな?

 これは俺にとって大事なクエストなんだ。もう少しで終わるから、待っててくれ」

「駄目ですってば!危ない目にあったらどうするんですか!」


 私が言ってもヒノさんは聞いてくれません。どうしたらいいのでしょうか。


「おい兄ちゃん、ここが何の祠か知ってるのか?」

「いや、知らないけど。普通祠って、神様を祀るもんじゃないのか?」

「ここの祠に封じられてるのは、神様とかそんな優しいもんじゃねえ、化け物だ。

 悪い事は言わねえから、そんなクエスト中断して早く家に帰るんだ」


 レド様の真剣な説得に、ヒノさんもちょっと戸惑っているようです。

 神様じゃなくて化け物……私も少し怖くなってきました。


「レド様、化け物って何ですか?」

「ん?言ってもいいが、聞くと夜中に一人で便所に行けなくなるぞ?」


 レド様はにやりと笑いながら、からかうように言いました。

 ヒノさんも少し怖くなったようです。気まずそうな顔をしています。


「わ、わかった!このクエストは中断する!だから俺も一緒に町まで連れてってくれ!」


 さすがレド様、私が言っても聞かなかったヒノさんを見事に説得してくださりました。

 クエストをやめる事にしたヒノさんは、持っていた石を捨てようとしました。


「な、なんだこれは……!? 石が手から離れない!?」

「何だと!?」

「か、体が勝手に引き摺られて行く……助けてくれぇ!!」


 ヒノさんは手を開いているのに、石がそこに張り付いたように落ちません。

 怪しい模様が鈍く光っています。


「まずいぞリズ!何とかあいつを止めるんだ!」

「は、はい!」


 私とレド様の二人掛かりで、ヒノさんを止めにかかります。

 でも、ヒノさんの体は凄い力で祠に向けて進み続けます。

 私はともかく、レド様の力でも止められないなんておかしいです。


「クソッ!さっき言ったのは半分冗談じゃねえんだ!

 きっとその石には何か呪いがかけてある!どうにかして止めねえと!」

「ヒノさん!もっと全力で動きに逆らってみてください!」

「さっきからやってるよ!」


 ヒノさんは既に足で地面に踏ん張っています。

 でも、何かの力で足を閉じたまま引っ張られるように動いています。


「レド様、この祠には一体何があるのですか!?」

「ここにはその昔、この地に住んでいた先住の一族の魂が祀られているんだ!

 その一族は魔術に長けていたが、多勢に無勢で侵略者に滅ぼされちまった!」


 ヒノさんの体が祠の前まで来てしまいました。

 すると、周りから怪しげな魔力のようなものが漂ってきました。

 きっと、これがヒノさんを引っ張っているんです。


「レド様!斧で祠を破壊できませんか!?」

「そんな事をしたら、それだけで封印が解けちまう!」


 祠には、何かはめ込むような形の穴が開いています。

 ヒノさんの腕は、そこへ向けて伸ばされました。

 何かが合わさるような音がして、ついに石がそこへ置かれました。


「まだ、手が離れない……助けて!」


 ヒノさんの体を、黒い靄のようなものが包み込んで行きます。


「あ、ア……ガ…………』

「まずい……リズ!もう手遅れだ!逃げるぞ!」


 レド様に引っ張られ、私は祠の外に連れ出されました。


「レド様、ヒノさんが危ないんですよ!戻って助けないと!」

「もう、無理だ……!憑依されちまった!」


 祠の中から、ヒノさんのものとは思えないような叫び声が聞こえました。

 そして、祠の中からはヒノさんの体系を模した不気味な魔物が姿を現しました。

 体中に複数の目玉が付いており、胸元には、ヒノさんが持っていた石が付着しています。


『ククククク……』


 ヒノさんに憑依した魔物は、まるで確かめるように体を動かしています。

 周囲を見ると、いつの間にか私達は多数の岩の魔物に囲まれていました。

 この魔物は、あの時リオン盗賊団のアジトで戦った魔物達です。


「なんて気味の悪い姿だ……しかも、ストーンゴーレム達がこんなにもいやがる……」

「ヒノさんを返して下さい!」


 私が叫んでも、不気味な魔物はニヤニヤと笑うだけです。


『やれ』


 不気味な魔物が命令すると、その合図に合わせ、岩の魔物達が迫って来ます。


「リズ、とりあえず逃げ道を確保するぞ!こんなの手に負えねえ!」

「でも、ヒノさんが!」

「あいつに憑依されて無事なわけがないだろう!気の毒ではあるが、もう助けられん!」

「そ、そんな……!」


 レド様は斧で岩の魔物を叩きます。

 攻撃を受けた岩の魔物は崩れ落ち、動けなくなりました。


『逃がさぬ』


 不気味な魔物の命令で、すぐに岩の魔物が立ち塞がります。

 後ろにもまだ魔物が控えていて、このまま消耗戦になっては勝ち目がありません。 


「きりがねえ……!」


 レド様は次々と岩の魔物を粉砕して行きますが、その数はあまりにも数が多く、斧の刃が見る見る欠けていきます。


「【エプリクス】、【カペルキュモス】」


 私は精霊達を呼びました。

 宝石から放たれた光が集まり、その姿を形成して行きます。


『主よ、お前の為に戦おう』

『優しい主よ、何なりとご命令を』


 エプリクスとカペルキュモスの連携で、まずは岩の魔物から倒していきます。

 レド様はもう手遅れだと言いますが、ヒノさんの事を諦めたくありません。

 私はシアさんを悲しませたくは無いんです。


 ヒノさん、少しの間だけ我慢してください。

 私がきっと、その不気味な目玉の魔物から助けて見せます。

お読みいただきましてありがとうございます。

私は怖がりなので、夜に神社とか祠にはとても行けません。

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