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21:和平会談

第21話です。

 コルン王国では、デミアントとの和平会談の為の準備が進められていました。


「デミアントは何を食べるのだ?人間が食べるような物で良いのだろうか」

「私も魔物へ料理を作った事などありませんからなあ」


 ロデオ様は料理長様と一緒に、デミアントの女王様達へ振舞う料理に付いて話し合っているようです。

 私がアリだった頃は、よく昆虫の死骸を運んでは皆で食べていました。

 落下した果物もよく運んでいた覚えがあります。

 意外なところでは、人間の落としたスナック菓子の破片なんかも、私の居た巣では好評でした。

 そう考えると、デミアントも結構雑食なのではないでしょうか。


「リズ、大変だったようね」

「ディア様!」


 本日の和平会談にはディア様もご出席されます。

 国のトップが集まり、これからの事を話し合われるそうです。


「それにしても、リズが牢に入れられていたと聞いた時は驚いたわ。

 ロデオもクルスも、そんな事全然私には言わないんだもの……」

「無事に出していただけましたし、もう終わった事です」

「リズはもっと怒ってもいいと思うわ」



 しばらくして城下町の門へ向かいます。デミアントの女王様達を出迎えるためです。

 やがて、お供に兵隊のデミアントを引き連れた女王様が姿を現しました。


『リズ、お久し振りです。お元気でしたか?』

「はい、女王様!」


 相変わらず女王様はお綺麗です。

 今日は、念入りにグルーミングもされてきたようで、高原で会った時よりももっと輝いて見えます。


 ディア様も女王様に挨拶をしています。


「あなたがデミアントの女王様……何て言うか、気品がありますね」

『ディア様こそ、とてもお綺麗でございます』


 お二人ともすぐに打ち解けたようです。

 デミアントの兵隊の方々も、騎士様達と楽しそうにしています。

 兵隊の方々は会話はできませんが、触覚でうまく感情を伝えているみたいです。


『今日はメアリさんはいらっしゃらないのですか?』

「メアリ様は元々冒険者の方ですので、今頃は別の街で何かクエストをされているのではないでしょうか」

『そうですか。あの方にもお世話になりましたので、ご挨拶をしたかったのですが』


 女王様は少し残念そうにしていました。

 実際メアリ様は、アントライオン討伐の後すぐに別の依頼があると去って行ってしまいましたから。

 なんでも、お金を貯めて買いたい物があるそうです。メアリ様は一体何を買われるのでしょうか。  


「では王宮へご案内します」


 騎士様に案内され、女王様率いるデミアント達は王宮へと向かいます。

 城下町では、事前に知らされていたとはいえ実物を見て驚く方も居ました。


 子供達は怖がりながらも、デミアントの兵隊の方にお菓子や昆虫の死骸を渡していました。

 喜んだデミアントは、子供達に触覚でありがとうと伝えていました。


◆◇◆◇


 女王様を見たコルン王は、魔物であっても気品と威厳のあるそのお姿に大層関心を持たれていました。

 会談はお互いの共存と領土のお話などを中心に進みました。


 コルン王は、女王様にこれまで通りに高原に住んでいただいて、もしアントライオンやアントイーターなどの強力な天敵が現れた場合は、協力を惜しまないと約束をしました。

 女王様は、高原の周辺を通る人間に対して、危険が及ばないように兵隊の護衛を付けることを約束してくださりました。

 人間と魔物だって共存できる──────この事は、コルン王国だけに留まらず他国へも大きな波紋を呼ぶだろうとコルン王はおっしゃっていました。


『ディア様、先程少しお話に出ていた件ですが』

「何でしょうか、女王様?」

『ディア様は、アステア国の再興を目指されていると聞きました。

 そこで提案なのですが、それを私達デミアントにもお手伝いさせていただけないでしょうか?』


 女王様から出された提案は、アステア国の為にデミアントの働きアリを派遣し、建物の修繕や建築を手伝わせるという内容でした。


「女王様、本当に良いのですか?アステアは現在国としての力も無く、そちらへ献上できるものは何も無いのですが……」

『構いませんよ。リズ達のお陰で、今の私達があるようなものです。

 ただ、実際に手伝えるのはもう少し先の事になります。私も、その……子を増やさないといけませんので』


 女王様はそう言うと、少し照れたように手で顔を覆ってしまいました。

 女王様ならきっと、元気な働きアリをたくさん産んでくださると思います。


 コルン王は、私を閉じ込めていた事を女王様に話してしまいました。

 それを聞いた女王様は、コルン王の正直に自分の過ちを話した真摯な態度に納得され、特に和平がこじれるような事はありませんでした。


◆◇◆◇


 和平会談は無事に終了し、女王様達も高原へ帰られるようです。

 兵隊の方々は、町の子供達に懐かれてしまい困っています。


「それでは女王様、くれぐれもお気を付けて」

『ディア様も、何か困った事があれば遠慮なく私達に頼って下さい』


 将来女王様となるディア様と、デミアントの女王様。

 お二人は同じ立場という事もあって、友人としても仲良くなられたようです。


『リズ、伝え忘れていた事があります』

「何でしょうか女王様?」

『あなたの使役する精霊の事です』


 精霊の事……一体なんでしょうか?


『土の精霊が、高原を越えたはるか東にあるエカルド地方に居るという情報を聞きました』

「土の精霊ですか!?」

『きっと、あなたなら彼とも心を通じ合わせる事ができると思います。

 もし機会があれば、訪ねてみるのも良いかもしれません』

「わかりました。ありがとうございます、女王様」


 土の精霊……エプリクスやカペルキュモスのような精霊が他にも居るようです。

 エカルド地方という地域の事は私はわかりませんが、ロデオ様ならわかるかもしれません。


『それでは、皆様どうかお元気で』


 女王様とデミアントの兵達は、高原へと帰って行きました。


◇◆◇◆


「エカルド地方なぁ……結構距離があるぞ、あそこは」

「そうなのですか。では、私一人で行くのは難しいでしょうか」

「駄目だ駄目。それにあの地方は、治安もあまりよく無いと聞いたことがある。

 精霊魔法を使えるとはいえ、そんな所にリズ一人で行かせられるか」


 ロデオ様に大反対されてしまいました。

 たしかに、土の精霊と会って、何かあるという事でもありません。

 女王様に教えていただいたので、少し気になっていただけですし無理はする事もありませんね。


「でも土の精霊か……もし土地を豊かにする力でもあれば、国の再建にも役立つかもな」

「それでしたら、ぜひ精霊の力を借りたいところですね」

「いや、思い付きで言っただけなんだけどな……」


 ロデオ様がポリポリと頭を掻いていると、そこへクルス様があらわれました。


「リズさん、もしよろしければ、僕がエカルドへ行く際にはお供しましょうか?」

「良いんですか?クルス様」

「大丈夫ですよね?ロデオさん」


 ロデオ様はそう言われると、私達をじーっと訝しげな目で見ています。

 しばらく考えて溜め息をついた後、許可を出してくださりました。


 クルス様もコルン王国でのお仕事などがありますので、すぐに旅立つわけではありません。

 でも、旅立ちにクルス様が付いてきて下さるのなら心強いです。

 とりあえず、当面の私の仕事は畑仕事です。

 お世話をできなかった期間もありましたので、その分を取り戻せるようにがんばって耕そうと思います。

お読みいただきましてありがとうございます。

書いてる途中でパソコンの電源が落ちてひゃーってなりました。

こまめな保存って大事ですね……。

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