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17:高原での戦い(2)

第17話です。

 反応はありましたが、アントライオンは地面へ潜ったまま一向に出現しません。

 私達の魔法を警戒しているのでしょうか。


「こっちに出たぞ!!」


 背後で叫び声が聞こえました。

 どうやらフェイントを掛けてきたようです。

 私達はその声のした方へ走りだしました。


「滾る炎よ、灼熱の焔よ、燃え盛る深紅の渦となりて────」


 メアリ様は詠唱をしながら走ります。

 急がなくては騎士様達が危険です。私も万が一に備え中級回復魔法の詠唱を開始します。


「────その者を塵と化す業火となれ!【ボルテクス・インフェルノ】」


 メアリ様の詠唱が終了し、かざした杖の先から強大な炎が発生しました。

 その炎は渦を巻き、地上へ姿を現していたアントライオンへ向けて進みます。


「ギィィィイイイイイイ!!」


 炎はアントライオンの胸元を貫き、一気に燃え広がりました。

 こうなってしまってはアントライオンも為す術無く、そのまま燃え尽きました。


「ふふん、一丁上がりってとこかな」

「メアリ様、凄いです!」


 メアリ様の魔法は凄まじく、たった一人であのアントライオンを仕留めてしまいました。

 あれだけの魔法を放った後でもメアリ様に疲れた様子はありません。


「なんだ今の魔法は!?」

「こっそり習得してきた上級魔法ですよー」


 ロデオ様も驚いています。

 メアリ様は上級魔法を習得していたことを黙っていたみたいです。


「教えてくれていたら、報酬だってもっと上がっていただろうに……」

「リズちゃんと久しぶりに会えるってことで、今回はオマケしときました!」


 二人の会話に一時の安堵の空気が流れます。

 でも、まだ終わっていません。最初に出てきた巨大なアントライオンがまだ残っています。


「リズちゃん、油断しちゃ駄目よ!」

「はい、メアリ様!」


 しばらくの静寂の後、地面が激しく揺れ始めました。

 地鳴りにも似たその現象に、辺りの鳥類が一斉に飛び立ち逃げて行きます。


「ギガァァァアアアアア!!」


 地面を突き破り、あの黒い巨大なアントライオンが出現しました。

 高原に地割れが発生し崖が崩れ出します。

 私達の予想に反し、アントライオンは全身を現しました。穴へ引きずり込む戦いは止めたようです。


「ガァァァァアアアア!!」


 アントライオンは吠えながら、巨大な顎を構え突進します。

 騎士様達は槍で応戦します。魔道士様達も火の魔法を放ちますが、特有の黒い体が魔法を弾いてしまいます。


「こんなに騎士さん達と近かったら、大きな魔法は撃てないわ!!」


 メアリ様は杖を構えますが、アントライオンが騎士様達への突進を繰り返すため狙う事ができません。


「私が弓で仕留めます!」


 フレイムアローを詠唱し、弓を構えます。

 アントライオンはこちらの魔力に気付いたようです。顎をこちらへ向け突進してきました。


「────【フレイムアロー】!!」


 私の弓から放たれた矢は、アントライオンへ向けて真っ直ぐと進みました。

 でも、炎を纏った矢はアントライオンの額に刺さる事は無く、顎により弾かれてしまいました。


「リズちゃん!逃げなさい!」


 メアリ様の声にハッとすると、アントライオンの顎が目前まで迫っていました。


「あ、あああ……」

「リズちゃん!!」

「リズさん!」


 クルス様が私を抱え、間一髪でアントライオンの攻撃を逃れました。


「あ、ありがとうございます、クルス様」

「いえ、無事で何よりです」


 クルス様が助けてくださらなかったら、どうなっていたかわかりません。

 この方にはいつも助けられてばかりです。


「ロデオさん!しばらくの間、何とか騎士達でアントライオンの足止めをしてちょうだい!」

「わかった!」


 ロデオ様の指示で騎士達がアントライオンを囲みます。

 そして、足止めの為の攻撃を開始します。


「────────」


 メアリ様も詠唱に入ります。

 アントライオンがメアリ様の魔力に気付きましたが、騎士様達の波状攻撃によりその場に留まっています。


「ギガガガガガ!!」

「ぐぁぁああああ!!」


 アントライオンは鉤爪で騎士様達を薙ぎ払いました。

 そして、その隙に地面へ潜ろうとします。


「みんな離れて!」


 メアリ様の掛け声で騎士様達はその場を撤退しました。

 杖の先は逃げようとするアントライオンを捉えています。


「【ボルテクス・インフェルノ】!!」


 巨大な渦巻く火炎がアントライオンへ向かいます。


「ガアアアアアアアアア!!!!」


 アントライオンは正面からそれを受け止めましたが、燃え移った炎は勢いを増しアントライオンを包んで行きます。

 地面へ潜って消火しようとしているようですが、上級魔法の炎はその行動へ移るよりも先にアントライオンを燃やし尽くそうとします。


「グギャアアアアアア……」


 巨大な悪魔は体のあちこちを焦がし叫び声を上げると、うずくまるように倒れ沈黙しました。



「……やった!」

「我々の勝利だ!!」

「メアリ様、やりましたね!さすがです!!」


 周りから歓声が上がり、私も思わずメアリ様に抱き付きました。


「えへへー、リズちゃんもっと褒めてもいいのよー」


 そこへロデオ様とクルス様もやってきました。


「よくやってくれたな。メアリ、リズ」

「怪我人は出ましたが、犠牲者も出さずに終われましたね」

「私、皆さんの怪我の治療をしてきますね!」


 怪我をした騎士様達の所へ向かいます。多少の怪我なら、今の私なら治癒できます。


「大丈夫ですか?すぐに治療いたしますので」

「悪いな、頼む」


 騎士様達の怪我を治すため、中級回復魔法の詠唱に入ろうとした時でした。

 再び大地が揺れ始めたのです。


「な、なんだ!?」

「アントライオンが他にもいると言うのか!?」


 警戒して辺りを見渡します。

 揺れは、あの黒焦げになった巨大なアントライオンを中心に起こっているようです。


「馬鹿な!あいつは絶命したはずでは……!?」


 アントライオンを見ると、その焦げた体表にヒビが走って行くのが見えます。


「【ラウンドヒール】!」


 信じられない事ですが、まだ戦闘は終わっていないようです……!

 私は急いで、騎士様達へ回復魔法を掛けました。

 回復した騎士様達は再び武器を持ち構えます。


「メアリ様!」

「どういうことなの、これは……!?」


 アントライオンのヒビの入った背中から、体液で濡れた半透明の大きな羽が出現しました。


「ギギギギギガァァアアア……」


 再び鳴り響く悪魔の咆哮。

 焦げたアントライオンから仰け反るように、それは出現しました。


「────【フレイムアロー】!!」


 ここを逃してしまえば、取り返しがつかない事になりそうな予感がします。

 私は、その魔物に向かって矢を放ちました。


「ガァァァァアアアア!!」


 魔物が羽を動かすと複雑な風の奔流となって、私の放った矢は失速し落とされてしまいました。

 そして魔物は抜け殻となった体を放棄し、その羽を使って中空へと浮かび上がりました。


「厄介な事になったわね……」


 メアリ様は再び杖を構えます。

 前世から考えても、こんな気色の悪い生き物を私は今までに見た事がありません。


 そこには、アントライオンのような巨大な顎と体躯を持ち、羽で自在に空を飛びまわる蛇のような姿の魔物が存在していました。

お読みいただきましてありがとうございます。

今回の魔物のモデルは、私が幼い頃に見た気持ちの悪い昆虫だったりします(汗)

※文章の抜けがありましたので修正しました。

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