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10:中等魔法には詠唱が必要なようです

第10話です。タイトルとあらすじの一部を変更いたしました。今後ともよろしくお願いいたします。

 コルンへは、再び馬車での移動となります。

 多少は舗装された道になりましたが、長時間の移動はディア様には厳しいようです。


「ウプッ……ふぅ、ふぅ……」

「ディア様、大丈夫ですか?」


 お背中を擦ります。もし代わることができるなら代わって差し上げたいのですけど……


「クルス、道具屋で仕入れた酔い止めの薬が袋に入っている。それをディア様に」

「わかりました」


 クルス様は袋の中からお薬を取り出しました。これでディア様は楽になられるのですね。


「それ、お酒酔いの薬なんだけど……」


 メアリ様の言葉にクルス様が固まります。


「ロデオさん、薬の種類が違うじゃないですかー!」

「道具屋がそれで治るって言ったんだよ!」

「民間薬でよろしければ私のポーチに……さ、ディア様、これをお飲み下さい」


 メアリ様は緑色の液体の入った小瓶を取り出しました。


「おい、ディア様に変な物を飲ませるんじゃない」

「変な物だなんて失礼な。あたしの村の一族に代々伝わる酔い止め薬ですよ?」

「ありがとう……いただくわ……」


 ディア様は小瓶の中の液体を飲み干しました。大丈夫なんでしょうか?


「苦~い……」

「良薬口に苦しです。そのうち効いてきますよ」


 苦そうな顔をしたディア様を見て、メアリ様は笑いながら言いました。


◆◇◆◇


「魔物が出たぞ!」


 ロデオ様が叫び、クルス様、レド様、メアリ様が馬車から飛び出しました。

 そこには、巨大な動物型のモンスターが居ました。


「アントイーターか……クルス、レド行くぞ!メアリは援護を頼む!」


 ロデオ様が行動指示を出し、戦闘が開始されます。

 私は馬車の中でディア様をお守りする係です。酔い止めが効いてきたディア様は、馬車の中からロデオ様達を元気いっぱいに応援しています。


 アントイーター……名前からしてアリを捕食する魔物のようです。

 前世では出会った事はありませんが、先程からチロチロと伸ばしている舌を見る限り、アリにとって脅威となることは間違いなさそうです。

 それにしても、アントライオンと言い、アントイーターと言い、この一帯アリに対する天敵がやたらと棲息していませんか?


「オリャ!」

「グギャア!」


 ロデオ様の剣がアントイーターの肩に深々と突き刺さりました。

 さすがロデオ様はお強いです。


「【フリージング】」


 メアリ様が魔法を唱えると、アントイーターの足元に魔法陣は出現し体を凍りつかせます。


「皆さんお強いですね!」

「ロデオもクルスも我が国の誇る騎士ですもの!」


 馬車の中からディア様と応援していた時のことです。

 突如、長い舌がディア様へ向けて伸びてきました。


「ディア様、危ない!」


 ディア様を庇うと、長い舌が私の足元に絡みつき馬車の外へ引っ張り出されました。


「リズ!?」


 アントイーターがもう一匹いたみたいです。

 宙吊りの状態で、上手く身動きがとれません。それに、このままでは頭に血が上ってしまいます。


「もう一匹いたのか!?」

「リズさん、今行きます!」


 クルス様が走って来ます。

 アントイーターはその舌でグルングルンと私を振り回します。


「や、やめなさい! ……もう怒りましたよ!」


 私はアントイーターに向けて腕を前に構えます。


「エプリ────」

「グォアアア!!」

「キャア!?」


 エプリクスを呼ぼうとしましたが、振り回されてしまいなかなか隙を与えてもらえません。

 アントイーターが何重にも見えます。目が回ってしまいました。


「トリャァアアア!」

「ギュアア!」


 クルス様の剣がアントイーターの舌を切り裂きました。落下して行く私をクルス様が受け止めてくださりました。


「リズさん、大丈夫でしたか!?」

「は、はい何とか……ありがとうございます、クルス様」


 少し目が回っていますが、大丈夫です。

 舌を切られたアントイーターは、今度はその巨大な爪で攻撃してきます。


「くっ!」


 クルス様が剣でその爪を受け止めました。クルス様は私を抱えたまま距離を取ります。

 すると、アントイーターの足元に魔法陣が出現しました。


「燃え盛る火炎よ、大地より出でよ【フレイムゲイザー】!」


 大きな炎がアントイーターを包み込みました。これは、メアリ様の魔法のようです。

 アントイーターはもがきながら、やがて炎に焼かれ息絶えました。


「リズちゃんのピンチだったから、お姉さん思わず中等魔法使っちゃった」

「ありがとうございます、メアリ様!」


 これが中等魔法……メアリ様はやはり凄い魔道士様なのですね。

 魔物は無事討伐されて、私達は馬車に戻りました。


「リズ、私を庇ってくれたのね。ありがとう」

「ディア様を守るのが私の使命ですから。結局メアリ様とクルス様に助けられてしまいましたけど」

「リズちゃん、お姫様をきちんと守れて偉いわぁ。お姉さんのお膝の上においで?」


 メアリ様が何をおっしゃっているのかわかりませんが、膝の上に乗ってしまってはメアリ様が疲れてしまうので遠慮しておきます。


「それにしても恥ずかしかったでしょう……ずっと宙吊りで」

「何がですか?頭に血が上ってしまったのは辛かったですけど、大丈夫ですよ?」


 宙吊りは恥ずかしい事なのでしょうか?アリだった私にはよくわかりませんが、人間にとってはそうなのかもしれません。まだまだ勉強が必要のようです。


「まぁ、リズはまだガキだから大丈夫だろ」


 レド様はそう言って笑ってます。何となく失礼な事を言われたような気がしますが、悪気は無さそうですので気にしないことにします。



 その後もところどころに魔物は出ましたが、ロデオ様達により討伐され、馬車は順調に進みました。

 メアリ様の魔法のお陰で、私はヒーラーに専念することができました。


 そういえば、魔法は中等魔法から詠唱が必要になるそうです。

 心の中で唱えることもできるそうですが、メアリ様は口に出した方がかっこいいのでそうしているそうです。

 私が使える【ヒール】は初等魔法なので、詠唱は無くイメージのみで唱えられます。

 エプリクスは名前を呼ぶだけで出現しますが、魔法の種類が違うようですので詠唱を必要とすることはありません。

 魔法にも色々あるみたいです。いつか私も魔法をきちんと学び、使いこなせるようになりたいと思います。


 街道の終点、コルン王国の城門が見えてきました。ディア様護衛の旅は、無事に終わったようです。

レドさんは、一匹目のアントイーターにとどめを刺すという大事な仕事をこなしてくれました。

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