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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

3人兄妹の次男とその友達。

長男と次男と末の妹。

「祭り?」




 今日の昼ご飯は、兄の作ったパスタだ。梅とシソとしらすとオクラ。梅の酸味とシソの風味、シラスの塩気とオクラの食感。暑い昼間でも箸が進む味だった。塩が強めだけどそれがまた美味い。フォークじゃなく箸で食べさせるのも、なにかこだわりがあるとかないとか。

 兄が作るご飯は、どこかの店で出てくるレベルのものばかりで味も見た目も良い。兄が作ったのに。「やっぱり胃袋つかめると強いよねぇ」とか。女子か!

 美味くてムカついたので、早々に平らげて麦茶を飲んでいた。




「そうそう、夏祭り。花火もやるんだってよ?」


「はなびやるの!?」


「やるよー。花火のプロが、そりゃもうすごいのを」




 兄も自分の分は食べおえていて、妹が食べるのを楽しそうに見ていた。妹は落ち着きがなくて食べるのが遅い。箸を使うのが下手で、今もまた箸から麺を滑り落としていた。かろうじて皿の上。セーフ。




「今日、彼女来るんだよね? 一緒に行ってきたら?」


「いや、俺とあいつってそういう仲じゃないし。ただ趣味が合うってだけで」


「趣味が合おうが合わなかろうが、ほまれは高校の友達彼女だけだろう」


「……」




 さらっと心を抉るな。

 たまたま、仲の良い奴らとは学校が違うってだけだ。

 というか、なぜ俺の交友関係を把握している。




「彼女からLINEが飛んできてね?」




 疑問に思ったことが伝わったのか、兄は妹の箸の持ち方を直しながら言った。




「『ほまれ君が学校の男子と絡むところを見ません。いつも一人です。』」


「ほう」


「『男子とたまたま視線があって、すぐにそらす、なんてこともありません。皆無です。』」


「……ん?」




 嫌な考えが浮かんだ。

 だが、それを即座に否定する。

 友達を疑うのはよくないよな。




「『このままでは、ほまれ君で楽しむことが出来ません。わたしの潤いある学校生活のために、お兄さんからなにか言ってやってくれませんか?』」


「あの女!」




 俺をネタにしようとしてやがった!

 知り合いでやるのは引くからやめろとあれほど言ったのにこのザマか!

 畜生!




「『ほまれは私のだから、ダメー』って返しといた」


「お前も共犯か!」




 俺はノーマルだ。

 確かにBLは好きだが。2次元は2次元、3次元は3次元。

 FPS好きな奴が、全員リアルで銃乱射してんのか? 違うだろ!




「まぁ、そんな感じのことを聞いたってだけさ。あんなに長々と、スマホも見ずに言えるわけないだろう?」


「どこから嘘なんだ?」


「さ、ゆえん。食べ終わったならごちそうさまをしようか」


「ごちそーさまでした!」


「はい、おそまつさまでしたー」


「おいコラ」


「ほまれ、ガラわるーい。そんなのだからモテないんだよ」


「がらってなに? わるもの?」


「えっとねぇ、やんちゃってことかな」


「あー。ほまれはやんちゃだなー?」


「ねー。午前中にもその話してたしね」




 兄と妹の仲が良くて疎外感。俺を置いて、2人で食器を片付けに行ってしまった。




「……」




 まあ、兄はあとで問いただすとして。




「どう落とし前つけさせてやろうか……」




 もちろん、兄にLINEを飛ばした友達の話だ。

 兄の話の後半は嘘だったとしても、前半部分に嘘はないだろう。教室で1人ですごすことが多いのは、本当だから。どういう意図があったにせよ、兄にそのことを話したのはいただけない。


 ネタにされるからな!


 俺に友達が少ないのは、兄のせいだと思っている。幼い頃からよく兄と遊んでいて、だいたいのことは兄が教えてくれた。

 教えてくれるのは良いんだが。

 兄が教えてくれたことが、一般常識からずれているということに気付いたのは中学に入ってからだ。友人たちとの何気ない会話のなかで、




「そういやさ、なんでドラマって男女の恋愛ばっかなんだろうなー」




 なんて、発言したのが間違いだった。恋愛モノだけじゃないだろ、と笑って言う友人に、




「いや、だってマンガだと男同士ばかりだろ?」




 と、詳しく説明してしまったのだ。

 その当時、俺が読んでいたマンガはすべて兄から貸し出されたもので、BLかBLが含まれているものしかなかった。やけに薄い本が多いとは思っていたんだが。気付け、俺。

 説明したあとに待っていたのは罵詈雑言の嵐だ。なぜそんなふうに嘲笑されるのか、その時はまったく理解できなかった。

 まあ、まったく理解できなかったから傷付きもしなかった。むしろ、こんなに面白いものを知らずにいるなんてと、可哀想になったことを覚えている。

 あとはまあ、気持ち悪がられて大半の友人たちは離れていって。残った僅かながらの友人とも、高校は別々になってしまった。

 それで現在の、友達が若干名しかいない、寂しい俺ができあがったわけだ。うん、兄のせいだ。問いただすついでに殴っておこう。


 友達も、1発殴っておしまいにしようか。

 ぁー、でも、腐ってても女子だしなー。手を上げるのはよくないな。どうするか。

 ……そういえば、祭りがあるとか、なんとか。

 そこでおごらせてチャラにしようか。


 友達所持金いくらだろう。

ジェンダーフリー。

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