表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/74

平凡とは

  あまり揺れを感じずに蝦夷の地へと足を踏み入れた。

  三叉列車初体験のタケルは乗車当初、わずかに緊張していたが、あまりの乗り心地の良さに熟睡してしまった。

  東京大都市とは全く異なる景色にタケルは目を輝かせた。まだ肌寒さを残す気候は過ごしやすく、移住する人が多いというのも頷ける話だと思った。

  タケルは列車から降りて、白廊が続く駅を出る。もちろん一緒にいるのはアルプスの時と同じ亜由美とエリーだ。二人とも駅の幻想的な空間に見惚れているようだった。一般的に言うと、いわゆるおしゃれというものだろうか。

  外に出ると列車の中から見えた窓の景色が身近に感じられた。ぞろぞろと東支部の制服の者達が駅から出てくるのはそのうちの一人のタケルから見ても異様な光景に見えた。


「あれ、支部長と話してるの誰だろうね。」

  エリーが指差す方向に目をやると支部長である亜斗が駅前で誰かと話している。

  今回の遠征には支部長も同行しており、生徒のほとんどのものが意外に思っていた。こういう遠征は珍しくはない。その都度、教官が数人同行するのだが、支部長が一緒に来るというのは非常に稀なことだ。


「たぶん北支部の関係者じゃない?」


「うん、僕もそうだと思う。」

 

  タケル達は用意されたバスに乗り、養成学校近くのホテルへと向かった。一軍から五軍、東支部の生徒達は皆、そこに泊まることになった。


  

  二〇一号室。タケルが割り当てられた部屋だ。そして同室にアルプスで同じ師団だった渋沢 栄太が入る。タケルにとっても知り合いで安心した。

  

「久し振りってわけでもないか・・・元気か?タケルよ。」


「はい、渋沢さんはどうですか?」


「まあまあだ。早く北支部の連中と一戦交えたいな、腕がたぎるぜ。」

 やる気満々な栄太は部屋で木刀を振るい始めた。

 タケルは慌てて止めさせる。

「ちょ、ちょっと渋沢さん!危ないですよ!」

 こういう風に遠慮なく言える先輩というのはタケルにとっても貴重だ。


 今日はもう何もすることがない。ただ単に移動日だ。

 ホテルに着いたのが昼を過ぎた午後二時。 


 外出禁止のような決まりはないのでタケルは栄太とともにホテル近辺を見て回ろうと考えた。

 同じような事を考えている者も多数いて、ホテルのロビーはごった返していた。


 外に出ると北支部の校舎が視界に入る。おおよそ百メートルほどの距離だ。

 栄太は興味深げに辺りを見回している。蝦夷は初めてらしく、その反応も致し方ないだろう。タケルは蝦夷の出身?であるものの、見る景色全てが新鮮で初めて尽くしだった。


「ここは公園か?」


「みたいですね。」


「ずいぶん広いな・・・」

 ホテルの裏の方へと少し進んだだけで、だだっ広い公園があったことに栄太は驚きを隠せない。蝦夷には広大なる土地を存分に使って、いくつもの公園が作られている。ほとんどが森林で、緩やかな流れの川も確認できる。

 木々が生えていない広場に数人の人影がある。

「あの服装・・・・・・北支部の生徒だな。」


「完全に僕たちのと色違いですね。」

異なるのは制服の色のみ。他のデザインは全く変わらない。ただ見える印象はまるで違う。服装の色でここまで変わるのかとタケルは初めて服というものに関心を持った。これまでずっと制服か、浅倉家で寝泊まりしていた時に梶田にもらった私服数着だけで生きてきた。もちろんそれは梶田が今よりも体が小さかった頃のものだ。


服装について思考を巡らせていると、少年の一人が尻餅をついている少年に木刀を向ける。見たところ、あまり好ましくない状況のようだ。生徒同士の喧嘩という感じでも無さそうだし、ただ部外者が入っていいのか?という懸念も持っていた。

しかし隣の上級生は意気揚々と少年達の元へと歩いていく。


あれ?なんか嫌な予感がする。


「あんたたち、何やってんだ?」



「あ?誰だ、お前。」

木刀を持っていた少年がきつい表情でこちらを見る。完全に邪魔者を見る目つきだ。


「北支部の人達か?何やってるんだ、こんなとこで。」


「見て分かるだろ、決闘だよ。」


「素手の相手とか?」

栄太も負けず劣らずのきつい表情で少年を睨め付ける。

いきなりのやばい展開。タケルはただあわあわしていた。


「そ、そうなんですぅ!こ、この人おかしい、おかしいんですぅ!い、いきなり仕掛けてきて!」


少年の必死の懇願はどことなく嘘くさい気がしたが、栄太は一ミリも疑っていないみたいだ。


タケルは尻餅をついた少年の足元を見た。そこには折れた木刀が散乱していた。

「渋沢さん、決闘ってのは本当なんじゃないですか?足元、彼の足元に木刀ありますよ。」


栄太はタケルに言われたことを確認しても、全く態度を変えなかった。

引っ込みがつかなくなっているのではないかとタケルは疑っている。


「ふん、そんなことはどうでもいい。お前もやり合いたいのか、俺と。」

タケルの言葉に反応したのは栄太ではなく木刀を持った少年の方だった。

血の気の多い人物であることに変わりはないようだ。戦闘に飢えているようにも見える。


「よっしゃ!じゃあやろうか!」

そう気合の入った口調で言った後、栄太は木刀を構えるが、また思い出したように話し始める。

「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺は渋沢 栄太。」


「いらねぇよ、そんなものは。」


「一応だ、一応。ほれ、あんたは?」


「ち、段田 正鬼だ。」


「よし、じゃあやろうか、段田。」


舌打ちに気を悪くした様子もなく栄太は戦闘態勢を構える。


なんだかまずい展開になってしまった。しかしタケルにはどうしようもできない。止めようにも止まらない。剣術の試合を満足するまでやらせるしかない。


タケルは諦めて、二人から距離を取る。

その時初めて、尻餅をついていた少年がいなくなっていることに気付いた。存在感なかったな、あの人。



「いい構えだな、あんた•••••••••北支部じゃ結構上の方なのか?」


「知らねえよ。順位なんてどうでもいい。目の前の試合に勝つかどうか、それだけだろう。」


「いいね、気に入ったぜ!」


二人は同時に駆け出した。端から見ても段田の速さは栄太を上回っていた。栄太本人もすぐに理解した。スピードでは歯が立たない。目の前の人物はとてつもない強敵だ、と。


栄太は刀身強化から得意技のステップジャグリングシークエンスを繰り出す。これは異能剣技ではないオリジナルの変則的動作。まあいわゆるただの変な動きだ。

栄太の非常にしなやかな筋肉と体の柔らかさがあるからこそ可能な技。動きのタイミングが一定ではないから攻撃は当てにくい、そして防ぐのも骨が折れる。


初見で慣れるのは難しい、タケルはそう思う。現状でさえ、慣れていないというのに。


「確かに見たことのねぇ動きだ。」


速度で勝っても攻撃される位置がわからない段田は防戦一方。完全に栄太が有利な状況だ。


「だが•••••••••」


カァン!

凄まじい打音が周囲に響き渡る。

栄太の変則攻撃はいとも簡単に防がれた。

ここまで早く攻略されるとはタケルも、そして栄太も思ってもみなかった。

「な、なんだと••••••」


栄太には隙があった。ただ段田は反撃をしてこなかった。

こんなもんか?とでも言いそうな表情を見せて挑発してくる。

あえて栄太はそれにのる。こんなところで引き下がっていられない。それは栄太自身のプライドのため。


「まだまだ!!!行くぜ!!!」


ステップジャグリングシークエンス。先ほどよりも倍速。タケルも見たことがない速さだ。


しかしそれだけではなかった。

栄太が唯一使用する奥義。

花鳥風月、鷹の爪。


「はあああああああ!!!!」


栄太のすべての余力が込められた破壊の一撃が段田を追い詰める•••••••••そう思った。


そう思った、のだが•••••••••



「甘いな。鬼火!!!」


火花舞い散る一撃が栄太の顔面に直撃し、そのまま後方へと吹き飛んだ。


公園に生えていた巨木に思いきりぶつかって、一瞬にして意識を失った。それは近くにいないタケルにもすぐにわかった。


タケルは段田に視線を移す。涼しい顔で木刀を腰に納めた。


強い、この人。


「最後の一撃••••••あれは、鷹の爪か。浮雲の剣士、花鳥風月が遺した奥義の一つ。面白いのを見たな。」


段田は栄太の無事を確認せずに立ち去った。


「渋沢さん、だ、大丈夫ですか!」

反応はない。大きな外傷は額からの切り傷くらいだろうか。どちらにせよ医術師を呼ばなければいけない。タケルは携帯で亜由美に連絡した。

 何もしていないのに体が重く、疲労を感じるのは何故だろうか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「何があったの?」

 ホテルに設けられた病室でタケルに話しかけてきたのは大富 綾。彼女も栄太と同じようにアルプスの時に共に行動した一人だ。


タケルはありのままを話した。はっきり言うと何が何だかよく分かっていないが、栄太の勘違いから決闘が始まったこと、そして相手の名前が段田 正鬼ということだけは認識している。


綾は少しの間考え込んでいたが、やがて首を振って、考えても意味のないことだと諦めた。


「ほんと••••••面倒起こすわね。」


そう言いながらも綾は栄太の横にある椅子に腰を下ろした。


今この場所にいるのはタケルと綾、そして亜由美とエリーだ。


特に心配そうな顔で栄太の顔を見ているのは綾。同じ二年生という共通点以外にもいろいろな思いが見え隠れしている。綾自身は腐れ縁よとだけ言っていたが、タケルにはどうもそれだけではない何かがあるような気がした。


「タケルの話からすると完全に栄太が悪いわね。」


「すいません、止めれなくて。」


「いや、タケルは悪くないわ。栄太自身の問題よ。遠征でテンション上がっちゃってたのよ、きっと。」


タケルは病室を離れ、ホテルのロビーにあるソファに腰をかける。その後すぐに目の前のソファに一人の男性が座った。


「タケル、君は大丈夫かい?」


「はい、大丈夫です。」


第五師団の隊長であった陸奥 慶次がコーヒーカップを二つ、テーブルに置いた。一つはもちろんタケルの分。そして次に懐から取り出したのは小瓶。中身は角砂糖。


「ありがとうございます。」


「ホテルのだよ。これ無料らしい。」

ホットコーヒー。湯気が上る様子でタケルは落ち着きを取り戻した。角砂糖を小瓶から二個取り出して、コーヒーへと入れる。溶ける様子をじっと観察してから一口啜った。


慶次も同じようにコーヒーを飲んでから口を開いた。

「早急に調べたよ。段田 正鬼••••••剣士養成学校北支部の三年生でランキング第十五位。素行はかなり悪いみたいだね。まあでも実力は本物だ。確実に剣術の才能を持っているね。」


「ランキングなんてあるんですか?」


「ん、ああ•••北支部は特別だね。明確な順位をつけるんだ。それが生徒たちの成長に繋がると考えてるみたいだよ。」


「それはまたシビアですね。」


考えただけで胃が痛くなる制度だ。タケルは東支部で良かったと改めて思った。


慶次が調査してきたのは彼自身の判断であり、タケルが頼んだことではない。だが気になっていたのは確かだし、段田 正鬼について興味を持っていたのは事実だ。


「北支部内でもあまりいい噂は聞かないみたいだから、この遠征期間は少しマークしておいた方がいいかもしれない。」


慶次の提案にタケルはウンウンと頷き、同意する。栄太を負かしたあの力はかなりのものだ。タケルに何が出来るかはいまいちピンとこないが、頭の片隅に入れておいた方がいいかと思う。


「まあ今回は栄太の方からふっかけたようだから、段田 正鬼を攻められないけどね。」


「そうですね。」

タケルはもう一度コーヒーを口に入れる。

「教官は北支部を訪問したことはあるんですか?」


「ああ、もちろん。何度もあるよ。数年前に初めて来たんだ。その時、生徒代表だったのが今の支部長である白石 雪乃だったね。」


「じゃあ北支部の支部長はまだ若いんですね。」


「九条前支部長と同い年のはずだよ。」


年齢関係なく、力ある者は登用されるというか。まあ当たり前の話だろう。


「僕もその時はまだ教官なりたてだったなぁ。懐かしい••••••九条前支部長にすぐに抜かされたね。」


慶次は九条 奈々の養成学校時代を知っているらしい。彼が東支部の教官になって初めての生徒代表が九条 奈々だった。

それから九条 奈々の優秀だったという話をいくつか聞いた。非常に興味深い話だったが、見知った人物の過去を知ることは何だか言いようのない不思議な気分だった。



栄太が目を覚ましたのはそれから六時間後のことだった。体のどこにも異常はなかったが、数日間は安静にしておくようにと医術士からは注意されたようで、明日からの北支部との剣術の試合は事実上出れないということになった。

栄太のことだから無理してでも出ると言いそうではあるが。


「いててて••••••ここは?」

栄太の目に真っ先に飛び込んできたのは綾だった。呆れた表情で栄太を見てから大きくため息をついた。


「体の調子はどう?ここはノースブリッジにある病室よ。」


ノースブリッジとはホテルの名前。栄太は初め疑問を呈する顔をしたが、すぐに納得した様子で頷いた。単純にホテル名を覚えていなかったのだ。


「ああ、頭は痛いが、そんなに調子は悪くない。」


「ふぅ、そう。それは良かった。ただ、あんた何やってんの。」


栄太は口をへの字にして黙ってしまう。


「初めての遠征に舞い上がったんでしょ?」


「う••••••」

図星だった。栄太は一度目を瞑る。迷惑を掛けた、それについての反省はしている。しかしそれ以上に栄太は段田 正鬼との実力差に絶望していた。


「まあでも••••••あんたの気持ちもちょっとわかるかな。五軍に選ばれるまでにどれだけの試練を乗り越えてきたか••••••それを考えると、ね。」


決して才能があるわけじゃない。名家に生まれたわけでもない。一般的な家庭で一般的な教育を受けてきた。栄太も綾もそれを痛いほど自覚している。



「凡人の意地ってやつだね。」

病室の扉が開き、慶次が姿を現した。


「教官?」


「その気持ちは僕も理解できる。なんたって僕自身がそうなんだから。」


慶次はそのまま空いている椅子に腰掛ける。時計の針の音がリズム良く聞こえてくる。仄かに暖房が入っているのではないかと思うほどの温もりが


「天才ってのは本当に一握りしかいない。まあ、うん、憧れるね。」


「教官もそういう気持ち、あるんですね。」


「そりゃあ誰にだってあるさ。僕らが凄いと思っている人にだってそういう気持ちはあると思うよ。」

栄太と綾は視線を合わせる。


劣等感との戦いはどんな人間にだって乗り越えていかなければならないことで、それを理解せずにただ卑屈なることは成長を阻害する。


慶次が経験から得たことはつまりそういうことだった。

それを言葉にするほどあけすけな人間ではないため、慶次は二人には直接伝えない。本当はただ恥ずかしいだけ•••なのだけれども。


「でも君たちはあのアルプスの戦いを乗り越えたんだ。才能ある人達にも必ず追いつけるさ。」

今日はもう寝るように、と告げて慶次は病室を出ていった。

扉が閉まった後、栄太も綾もその場でじっと何かを考え込んでいた。その間も時計の音はカチカチと響いていた。



その夜は二人ともあまり眠れなかったらしい。




明くる朝。いまだ生徒達が眠りについている時間に東支部の支部長は北支部の本館へと赴いた。別に気が向いたからではなく、しっかりとした面会の約束をしていたからだ。


その相手はもちろん•••••••••


「お久しぶりですね、向田さん。」


「ええ、白石さんもお変わりなく。」

相対した二人は完全に社交辞令の微笑みを浮かべている。


「昨日はこちらの生徒に問題を起こした者がいたみたいで••••••申し訳なかったです。」


「いえ、こちら側も手を出したということなので、非はあります。」


彼らが話している一件はもちろん、栄太と正鬼の小競り合いについてだ。

栄太が悪いのは明らかであるが、雪乃は問題にはしないと言った。

そうしてこの話題はすぐに打ち切られた。


二人が顔を合わせたのはこの話題のためではなく、遠征の打ち合わせについてだった。


「今回の遠征••••••遥々遠くからお越しいただきありがとうございます。」


「なんの!こちら側からお願いしたことですから。受け入れていただきどうもありがとう。」

亜斗は外行きの顔で深く一礼した。


「東支部さんの方は一軍から五軍の選抜団を連れてきているんですよね?」


「ええ、そうです。北支部さんは選抜団制ではなく、純粋なランキング制でしたね?」


「はい。ランキング上位五十人ほどで間に合うと思います。」


二人の会話は淀みなく進む。ただ全く内側には進めない障壁が張っているような異様な雰囲気がその場を覆い尽くす。

幸運なことに二人以外はその場にいなかったため、張り詰めた空気を味わった者は皆無だった。


亜斗と雪乃は細かな日程を確認し合ってからその後に朝食を共にすることになった。北支部の方は雪乃の他に生徒副代表の柊 咲姫、そして東支部の方は生徒代表の真田 凌剣が合流した。


もちろん話が弾むわけもなく、雰囲気も良くない。まあこれは形式的なもので、両者共に重要視していないという側面もある。


外面だけの会話をしながら食事を終え、試合の準備に入る。

主に北支部が中心となって動いていく形となるので、東支部側は手持ち無沙汰になる時間が多くある。いわゆる自由時間が長い。



タケルは五軍の末端のため、駆り出させることもなく、自由に過ごすことになる。


朝八時頃にホテルを出て、タケルは亜由美そしてエリーと共に剣士養成学校北支部の敷地に足を踏み入れた。


東支部よりも武道場の数が多く、面積もより広い。

ぞろぞろと色違いの制服が歩いてくる光景を興味深げに見ている北支部の生徒たち。その視線にタケルは若干緊張するが、両隣の少女二人はそんなこと気にも留めずに歩いている。

強心臓、というわけではなくタケルが気にし過ぎているだけなのだろう。



「あ、ありゃあ、東支部の••••••」

「ああ、東の四天王だな••••••」

「すげぇ、ホンモンだ。」


口々にそう呟く声が耳に届く。

タケル達とは別の場所に真田 凌剣を除いた三人•••優奈、メイ、風間の姿があったからだ。彼らは誰よりも目立っていた。

タケルは不思議な気分になる。あそこにいる優奈とは交流も深い。ただ今は遥か遠い存在のように思える。


「どうしたの?タケル。」


北支部の生徒たちと同じように優奈たちに視線を向けていたタケルにエリーが話し掛けた。


「うん、やっぱ凄いなって思って。」


その言葉で伝わったらしく、エリーも優奈たちをじっと見つめる。


「そうだね。東支部にいる時には当たり前だと思ってたけど、こんなに近くに凄い人達がいたんだって再認識させられるね。」


「すぐに追いつくもん。」

亜由美は嫉妬や憧れとは異なるまさに挑戦者のような目つきをしていた。

タケルはそんな亜由美らしさを目の当たりにし、気持ちを新たにした。


「よし、行こうか!」


「うん。」


「そだね。」


タケルの言葉に亜由美とエリーはそれぞれ応える。


ただ一つ疑問が。

エリーは首を傾げて、口を開いた。


「行くってどこに?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ