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第一章ー一難去って

「私、店長の登美垣叶と申します。本日は、どのようなご用件ですか?」

「……あ、いや……」

にっこりと微笑むその姿はまるで女神のような彼女。その美しさに、思わず見とれてしまう。

店長というが、若い。それこそ16歳くらいにしか見えない。そのくせ、どこか遥か年上のような気もする、不思議な感覚。

「……えっと、いや……」

蓮の歯切れの悪い言葉をうけて、叶は首をかしげる。こんな小さい店でまさか営業をかけてくるとは思わなかった。蓮のイメージだと、初老の男が何も言わずに難しい顔をしてカウンターのところに座ってるのが、こういう店のイメージだった。

目的もなく訪れたとはいい辛い。とくにこんな可愛い店員を相手に気の効いた言葉をかける話術もなく、黙りこんでしまう。

そんな客なんていくらでもいるだろうが、叶は拍子抜けした顔をしてる。

「こういう時計も売ってるんですね」

言いながら、一番最初に気になった、腕時計に目線をやる。得意ではないが適当に話てから逃げる事にしよう。蓮は腹を括る。とてもじゃないが、商品についてる価格は、彼の手持ちでは足りようがないものだった。ゼロ二個くらい。

「はい、今お手を置かれてるケースの中の腕時計は、装着者の体感時間を操作するためのものです」

「……へぇ……、ん?」

今、かなり奇妙な商品説明じゃなかったか?蓮は、今聞いた事を脳内で再生させる。

体感時間を操作するって、どういう事だ?かなり、オカルト臭い……。

蓮は黙って時計を見る。なんの変鉄もなあ、ただの時計にしか見えない。シンプルな白銀のボディに、いくつかの石がついてるだけの、どこにでもありそうな代物。

「こっちは?」

「その時計は、数秒先の未来が見える時計です。他にも数日先の未来が見えるもの、同様の過去が見える時計もありますが、用途で使い別ける方がより高い効果を発揮します。ただし、過去を見る時計で未来を見る事は出来ません。逆もまた、同様です。術式が違いますので。それら全てを見る時計もありますが、値段も上がりますし、様々な術式をそのサイズに組み込むために、クオリティは劣化します」

蓮は再び黙ってしまう。オカルトだ、ファンタジーだ。いや、むしろ店主はただの狂人か?

胡散臭い目で蓮は店主を見るが、相変わらずニコニコと愛想の良い笑みを浮かべるばかりだ。

しかし、蓮の視線の意味を悟ったのか、少し焦り始める。

「……あ、あの、今日は当店にお買い物にあがったんですよね?」

「……いや、その……」

「まさか、訪れる気は、全くなく、ここに迷い込んだのでしょうか?」

「……はい」

迷い込む、という表現に蓮は若干の違和感を覚えながら、頷くと、店主が、より一層慌てだす。

「うわ、うわ、どうしよう。こんなこと、こんな事あるんだ、普通の人が迷い込むなんて」

キョロキョロと視線が泳いでいる。うーん、うーん、と唸りもし始めた。

「……」

完全に蓮は置いてきぼりにされてしまった。叶は一人であれこれ考え始める。

不意に止まったかと思うと、カウンターから出てきて蓮の手を握る。

「すみません、ちょっとこっち来て下さい!」

「え、え?」

カウンターの中に連れ込まれ、カウンター下の空洞に押し込まれる。蓮が何かを言う前に扉が開く、カランカラン、という音がする。

その音に少し遅れて、蓮の目の前に紙がつき出される。

『しずかに

おねがいします』

よほど慌てて書いたのだろう。読むのがやっとだった。

「こんにちは、ようこそ、登美垣時計店へ」

「やぁ、カナエ」

若い男の声だった。革靴が、コツコツと音を鳴らす。

「今日は協会からの伝達でね。買い物じゃぁないんだ」

「そうなんですか?ついでにお一つ買っていって下さっても良いのに。この間買って頂いたアミュレット、そろそろ術式がほどけるんじゃないですか?ブラムスさんなら、修理でなく、気前よく買い換えて下さるんじゃないですか?」

「これは、これは」

ブラムスという男の肩をすくめる動作が、手に取るように解った。間違いなく、コイツはキザ男だ、と蓮は決めつける。

「まぁ、本題に入るとね」

ブラムスは、カウンターに両の手をおいて、叶に話しだす。机の軋む音が、蓮の不安を煽る。

状況は、全く解らない。だけど、いくつか解る事もある。

一つ、切迫したメモから、コイツがかなりの危険人物であるという事。

2つ、この時計店に入った時から、自分の日常が、脆くも崩れ去っていった事。

カウントダウンは、もうとうに始まっていたのだろう。

「最近ね、結界の境界線。これを越えて来る奴らがいるんだ。困った事にコイツらは見聞きした事をあちらこちらで言い回るんだよ。そうすると、我々の陰秘が陰秘でなくなる。由々しき事態だ」

俺の事だ。蓮は心拍数があがるのを感じる。自分の鼓動の音が煩い。自分の気配を殺す事に専念する。

「だから、そういう奴らを始末しなくてはいけないんだ」

ザンッ!そんな蓮の目の前に銀色に輝く板が現れる。いや、板ではない。剣だ。カウンター越しに、ブラムスが剣を突き刺したのだ。

「……ッ……!」

零れそうになる悲鳴を、唇を噛みしめて圧し殺す。全身がこわばる。拳を握って声を出すのを必死に耐える。

股のスレスレのところで、どこからか潜り込んだネズミが剣先に貫かれて死んでいた。

カウンター越しに見えないネズミを、殺す。その技術は、達人なんてものではないだろう。

「なんだ、ネズミか。とにかくそういう事だから、見つけたら連絡してね。それじゃ、失礼するよ」

再びカランカラン、という音がする。ブラムスが店から立ち去った。

全身から冷や汗を流しながら、蓮はブラムスに殺される予感と恐怖で、カウンターの下から動けずいた。ブラムスが消えた事で、安堵すべきなのだろうが、蓮にはそんな余裕は一切なかった。

叶も、黙ったまま動けずにいた。

一度バグってせっかく書いた本文が消えてしまいました

大筋の流れは同じなのに、凄くクオリティーが劣化した気分です

すみません、多目に見てください


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