第1話 見ーつけた。今日から俺の隣、お前だから
高校二年の四月。
新しい学年が始まってまだ二週間も経っていないのに、担任の山田先生が「席替えやるぞ」と言い出した。
俺、浅井 悠は、心の中で盛大にため息をついた。
陰キャのモブ人生を満喫中。目立たず、誰とも深く関わらず、放課後は家でゲームか読書。
理想の高校生活だ。席替えなんて、ただの運任せのギャンブルにしか見えない。
「じゃあくじ引くぞ。番号順に座れ」
教室がざわつく中、俺は一番後ろのくじ箱に手を突っ込んだ。
出てきたのは……22番。窓側から二列目。
隣が誰になるかはまだわからない。でもまあ、誰でもいい。話しかけられなきゃそれで十分だ。
「次、星宮!」
その名前が出た瞬間、教室の空気が変わった。
星宮 蓮。学年トップの成績、バスケ部エース、顔もスタイルも完璧な、まさにスクールカーストの頂点に君臨する男。
長い睫毛に整った顔立ち、いつも少し冷たい目。女子はもちろん、男子からも一目置かれている。
でも近寄りがたい。誰に対しても必要最低限しか話さない、氷のような奴だ。
星宮が無表情でくじを引く。彼が座ったのは——俺の右隣、23番。
……マジかよ。
一瞬、教室が静まり返ったあと、ひそひそ声が広がる。
「え、浅井くん?」「あの地味な子と星宮くん……?」「なんであいつが」
俺は縮こまって机に突っ伏した。なるべく存在を消そうとする。でも心臓がバクバク鳴ってる。
授業が始まっても、隣から視線を感じる。
熱い。重い。ずっと俺の方を見てる気がする。
休み時間。俺が教科書を鞄にしまっていると、突然低い声が耳元で響いた。
「浅井悠、だよな」
「……はい」
顔を上げると、星宮 蓮がすぐそこにいた。距離が近すぎる。甘いシャンプーの匂いがする。
彼はわずかに口角を上げた。
その笑みは、他の誰にも見せたことのないもののように見えた。
「見ーつけた。今日から俺の隣、お前だから」
え?
「他の席、絶対に座るなよ? お前はここ。俺の隣以外、許さない」
周囲の視線が一気に刺さってくる。女子たちが「え、何?」「星宮くんがあんな……」とざわめいている。
俺は混乱の極みだった。
星宮とはこれまで一度も話したことない。クラスメイトですら、まともに目が合った記憶がないのに。
「星宮……さん? なんか、勘違いじゃ——」
「勘違いじゃない。お前、俺のものだ」
彼の指が、俺の制服の袖を軽く掴む。冷たいはずの指先が、妙に熱かった。
放課後、掃除当番でもないのに星宮が俺の机に座り込んだ。
「今日から放課後は俺の部屋に来い。二人きりで」
「……は?」
「他の男と喋るのも禁止。俺以外、必要ないだろ」
完全に理解不能。でも星宮の目は本気だった。底なしの甘さと、底知れぬ執着が混じった目。
その日の帰り道、俺を昔からチクチクいじめていたカースト上位の三人組が、廊下で絡んできた。
「おい浅井、星宮と仲良くなったんだって? 調子乗ってんじゃねーよ」
一人が俺の肩を突き飛ばそうとした瞬間——
「触るな」
星宮が現れた。声は低く、凍てつくほど冷たい。
「てめえらみたいなゴミが、悠に指一本触れる権利なんてねえよ。消えろ。二度と近づくな」
その一言で、場の空気が凍った。彼らは顔色を変え、逃げるように去っていった。
後日、俺が聞いた話では、その三人組は急に学校に来なくなったらしい。星宮の一声で、居場所を失ったという。
俺はただ、呆然と星宮を見つめるしかなかった。
「なんで……俺なんかに」
星宮は俺の前で立ち止まり、ゆっくりと手を伸ばして前髪を優しくかき上げた。
その仕草は甘すぎて、頭がクラクラする。
「理由なんてない。ただ、お前が欲しかった。最初に目が合った瞬間から、ずっと。お前は俺の隣にいるべきなんだよ、悠」
彼の唇が、耳元で囁く。
「もう逃げられないから。覚悟しろ」
——こうして、俺の平穏なモブ高校生活は、ハイスペック執着イケメンによって完全に破壊された。
BL、書いてみました!!面白かったらブクマと高評価お願いします。




