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第一部 第十一話(第一部 完結) ――境界線のこちら側
翌朝。
城は、いつもと変わらぬ日常を迎えていた。
それが、どれほど尊いことかを、
椎名はよく知っている。
中庭で、エリアスが剣を振っている。
リアナは、侍女と本を読んでいる。
カインは、訓練に向かう途中で椎名に一礼した。
「行ってきます」
「ええ。無理はなさらず」
それは、当たり前の会話だ。
だが、その裏では――
確実に、大きな流れが動いている。
◆
公爵は、執務室で一人、地図を見ていた。
「……境界線は、こちらだ」
呟きは、誰に向けたものでもない。
武力と外交。
理想と現実。
そのすべての“間”に、椎名という存在がいる。
公爵は、静かに笑った。
「面倒な男を拾ったものだ」
だが、その表情に後悔はなかった。
◆
森の奥深く。
「――面白い」
魔族の王は、愉しげに呟く。
「人の側に、ようやく“境界”が生まれた」
侵すべきか。
試すべきか。
答えは、まだ出さない。
だが――
物語は、次の段階へ進む。
◆
椎名は、城の回廊を歩きながら、静かに思う。
(ここが、俺の居場所だ)
戦うために来たのではない。
だが、戦いから逃げるつもりもない。
守ると決めた場所で、
守ると決めた人たちとともに。
境界線のこちら側で。




