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異端のベルカ─自由な冒険者の気侭な生き方─  作者: 智慧砂猫


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第4話「仲良くするのは難しそう」

 意気投合したのを見て、受付嬢も静かに頷いて満足げだ。冒険者になる理由は個々に違いがある。それが連携を生みもするし、殺しもする。馬の合う相手でなければパーティを組んでもいがみ合い、足を引っ張り合う。そうなると命に関わってしまうので、両者の関係構築が重要であり、不安要素だ。


 目の前で解消されたと分かると、もうひとり試験に必要だと言って、酒場で待機しているもう一人を呼ぶ。ベルカはミリネのような子なら大歓迎だと期待したが、やってきたのはいかにも陽気な雰囲気のある軽い男だった。


「よう、あんたらが俺のサポートになる人たち?」


「サポートって……。言い方に気を付けなよ」


 ぎろっと睨んだベルカの釘を刺す言葉にもろくに理解を示さず、男は前髪を手でさらっと払いながら、自信たっぷりに返す。


「俺はクランツ・フォーナインだ。よろしくな、お嬢さんたち。ゴブリン討伐なんざ大した任務じゃないんだ、俺に任せておけば大丈夫さ」


 引っ叩きたい気持ちを拳に握りしめて、作り笑いで怒りを殺す。


「そう、そりゃよかった。私もミリネも冒険者になりたくてね。同じ仮登録の身同士、うまくやろう。なあ、ミリネ?」


 振られたミリネが「えっ!」と大きな声で驚く。


「私ですか!? でも私、この人嫌いですよ!?」


 クランツが頭を殴られたようにガクッとしたが、ベルカは愉快すぎて、噴き出しそうになるのを手で押さえる。うくく、と息の漏れる笑い声がした。


「俺のどこが気に入らないって言うんだよ!」


「何もかもです! 受付さん、この人と組まないといけないんですか!」


 抗議するミリネに、受付嬢は小さく頷いて苦笑いを浮かべる。


「皆様がギルドにいらっしゃる直前に、他の方々はパーティを組まれましたので……。ギルドに顔を出されていない方は待つしか御座いません」


「えぇ~……。ベルカちゃんは一緒がいいです!」


「うん、それは私も同意見。だけど、この男を連れて行った方が早いよ」


 腕にがっちり抱き着くミリネの頭をぽんぽんと優しく撫でて宥める。


「彼の言った通り、ゴブリン討伐は冒険者入門みたいなものだろ。こんなにもたくさんの人たちがギルドに所属しているのなら、さっさと試験を終えて、彼と別れて新たにパーティを組む相手を探すのが良いと思うんだ。どうかな?」


 もちろんベルカとて、の話。クランツと組みたいと思う人間のほうが圧倒的に少ない。できうることなら他の人材を待ちたかった。だが、次の冒険者志望がいつ来るやらで待つのは面倒くさい。さっさと試験を済ませてしまえば後腐れもない。


「嫌ですけど……まあ、我が儘は言いません。いいでしょう、このパーティだけの関係ですよ、フランクさん!」


「クランツだ! 失礼な奴だな、俺もお前みたいなガキは嫌いだ!」


 ちっ、と大きく舌打ちをしたクランツは、腕組みしながらミリネを見下す。


「試験だからってお前みたいなちんちくりんが合格できるわけがない。さっきから見てたが、食い意地張ってるところが長所な奴だろ?」


「そっちこそ失礼です。私、こう見えて二十歳過ぎてますから!」


 やいのやいのと喧嘩が始まり、どうどうとベルカが割って入った。


「喧嘩はそこまで。受付の人困らせてたらどっちもどっちだろ」


 諫められて二人はつんとした態度だったが、ベルカの言葉は尤もだ。促されるまま試験会場となる森の地図を渡されてギルドを出発することになった。会話らしい会話もないまま不機嫌な二人を連れていると、ベルカも流石に気まずい。


「いい加減にしてくれよ、私は君たちのお守をするために来たんじゃない。それとも今からギルドに戻る? せっかくポータルの通行許可証貰ったけど?」


 これからというときに問題を起こされては困る。改めて釘を刺すと、二人共、花が萎れたかのように大人しくなった。


「すみませぇん、ベルカちゃん……。私、この人とは話すの二回目で」


「そうなの?」


「はい。ちょうど同じタイミングでギルド員登録をしに来たんです」


 最初に鉢合わせたときも、クランツの態度は変わらず上から目線だった。どうしてもそれが気に入らなかったミリネは出来るだけ無視していたが、運悪く同じ試験のパーティメンバーに選出されてしまった。仕方のないことだとはいえ、今でも避けたい気持ちは変わらない。仲良くなど、到底できそうになかった。


「ふんっ、俺だって俺を良く思わない人間は気に入らないな。自分が中心だって思ってないか? お前みたいなちんちくりんが場を乱す────」


 ベルカが強く睨んで、いいから黙ってろと視線で刺す。これ以上は流石にまずいと理解したのか、もごもごと言い淀んで引っ込んだ。


「まったく……。言い争うなら試験が終わってからにして。私まで巻き込まれたらたまったもんじゃない。ポータルなんて初体験なのに、君のせいで台無しだ」


「うっ、それは俺に限った話じゃ……いや、なんでもないです……」


 首都のポータル広場では、いつでも魔法使いが数人待機している。設置された浮遊する大きなクリスタルが、決められた範囲及びダンジョン近辺までのポータルを開くためだ。魔法使いの厳粛な管理の下、人々は安心してポータルを使った。


 知識でしか知らないベルカの楽しみのひとつだったのに、それを些細なことで台無しにされたのは気分が悪い。とはいえ喧嘩するなと言った自分が愚痴を言い続けるのも違う。溜息がでたが、ひとまず不満は胸の内に収めた。


「じゃあ、とりあえず気を取り直して行ってみようか!」

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