透明人間
「くっくっく、ようやく透明人間の薬が完成したぞ!」
男は興奮を露わにするかのように鼻息を荒くした。苦節20年、試行錯誤を繰り返しながら、ついに透明人間の薬が完成した。
研究当初は若かった男も中年に差し掛かっていた。
堂々と女湯を覗きたいというしょうもない理由から透明人間の薬の開発を始めたが、いつしか男は研究に夢中になっていた。20年経った今では女湯覗きはどうでもよくなっている。
男はやや緊張しながら、透明人間の薬を飲んだ。すると男の体は徐々に透明になり始めた。数秒後には完全に透明人間になっていた。
服を脱いで何も映らない鏡を見て満足していると、いきなり建物が大きく揺れた。地震だった。
建物は崩壊し、男は瓦礫の下敷きになって気を失った。
消防車や救急車が到着して周囲の家の人は助け出された。
しかし、男は透明人間になっていたがゆえに、誰にも気付かれずに、静かに息を引き取った。
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