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6.邂逅

次の日、俺は師匠の家を訪ねて1番に魔力量測定器を出してもらった。2度のレベルアップを経て、俺の魔力量はどれくらい増えたのか、とても楽しみである。木の板の上に手を置くと、44と表示された。ちなみに元の俺の魔力は34だ。


「てことはレベルが上がるごとに5も増えるのか、とんでもないな」


この数字、職業ナシの成人男性の魔力量平均を10として表しているものだ。つまり俺は昨日だけで人1人分魔力が増えたことになる。とは言ってもここから必要経験値が倍々ゲームになっていくだろうことを考えると、あまり大きな数字でない気もする。


そして何よりがっかりしたのが、俺の元の魔力量の1桁が4なので、後1回祝福が起きても49となり、中級ポーションをギリギリ作れないことだ。こちらの世界に来ても妖怪1足りないに苦しめられることになるとは……。上級ポーションを目前として魔力99となった俺が、魔力1のために膨大な経験値が必要となる状況に絶望する未来が簡単に想像できてしまう。地獄の道のりが見えるのだが、まぁ未来の俺に任せよう。




日課となった身体回復薬作成と筋トレをすませた俺は、今日も大森林に向かう。今日俺は、ゴブリンと正面戦闘をしてみるつもりだ。これは慢心ではなく、俺の戦闘センスを磨くと同時に、これから莫大な経験値が必要な以上1回の戦闘時間を減らすべきでもあるからだ。将来的には複数体のゴブリンを一気に狩れると効率が良い。2度のレベルアップを経験している以上、余裕じゃないと困るのだが、


「まるで自分の体とは思えないな……」


俺はゴブリンを反撃させる間もなく瞬殺していた。魔力量の増え方的に分かってはいたことだが、目に見えて身体能力が上がっている。これならゴブリンの群れに突っ込んでも問題ないだろう。


すぐに3匹の集団に遭遇した。背後から1番後ろにいたヤツの首を落とす。こちらを振り向いた時にはもう1体の心臓を短剣が貫いている。喚きながら木の棒を振り下ろしてきた最後の1体は、短剣で獲物を弾き、首にそのまま突き刺した。沈黙が訪れた森の中呟く。


「戦えるのは分かったから良いんだが、受け流すってどうやるんだろうな?」


そこからゴブリン狩り兼戦闘スキルを磨く時間が始まった。結局その日はゴブリンばかり数十体狩りまくって、2度も祝福を経験した。




そして次の日、俺はいよいよDランクの魔物を狙ってみようと思っている。1つランクが上がると強さも桁違いになるらしいが、俺は正直いけると踏んでいる。


だって皆さん思わなかっただろうか、レヒトは1日1本身体回復薬を作って筋トレ後に飲むだけで、残りの魔力を余らせてるのではないか、と。勿論そんなことはなく、実は余った魔力で様々な種類のバフがつくポーションを作っていたのだ。身体能力上昇が4つ、耐久力上昇が3つある。このうち魔力を40こめた身体能力上昇と魔力を30こめた耐久力上昇が1本ずつあり、残りは魔力20で作ったものだ。事前に試したところ、どちらもだいたい10分程度効果があるようだ。このバフがある間にどれだけ魔物を狩れるかが大事だろう。


いつもより森の奥へ入っていくと、背は大人くらいで横幅がとても大きな人型豚顔の魔物、オークを見つけた。魔力20のポーション2種を飲んで、背後に回る。


短剣を後ろから首に突き立てた。が、オークは痛みに声を上げただけでこちらに向き直る。分厚い皮膚に覆われているため、短剣の一撃では致命傷にならなかったようだ。怒ったオークが大きな木の棍棒を振り下ろそうとこちらに踏み込んできたのに合わせて、こちらも懐に潜り込み、喉に深々と短剣を突き刺した。オークの喉から鮮血が吹き出し、その巨体が倒れた。


「短剣とオークはちょっと相性が悪そうだな。次はDランクのコカトリスを狙ってみるか」


俺はこの判断を後々悔やむことになる。


コカトリスはデカい鶏のような見た目をしている。鳥類の例に漏れないのであれば、嘴でついばむスピードはとんでもなく速いはず。出来ればトロいオークの方を狩りたかったが、仕方がない。あそこまで固いと後ろからの攻撃が有効にならず懐に入るしかないのだが、何かの拍子に1撃もらうだけで死にかねない。効率が悪いだけでなく危険だと考えたのだ。



そして今コカトリスが少し先にいるのだが、こいつはおそらく視覚に頼り切っている。この辺りは木の実がよく落ちていて、さっきうっかり踏んでしまって音が鳴ったのだが、こいつは全く反応しなかった。ということでさっそく背後に回り込み、木の実を啄もうと首を下げた瞬間に飛び掛かって喉笛を掻き切った。コカトリスが崩れ落ちる。


この瞬間から、完全に俺はこの鳥を獲物に定めて狩って回った。バフをつけずとも狩れるこの鳥は、経験値として美味い獲物だった。だからこの時の俺は、油断しきっていたのだ。


実に10体目のコカトリスに襲い掛かったとき、喉を切り裂いたが浅かったようで、コカトリスが大きく跳んで離れる。そして、大森林全体に響き渡るのではと思うほど大きな声で絶叫した。


「GYAAAAAAAAAAAAA!」


思わず耳を塞ぐ。絶叫が終わるとコカトリスは事切れてしまった。

嫌な胸騒ぎがする。俺はすぐにその場を離れようとした。が、1足遅かったようだ。背中に特大のプレッシャーを感じて動きを止める。動悸が激しくなり、じっとりと嫌な汗が流れるまま、ゆっくりと振り返った。




頭だけでも縦横1mはあろうかという紫色の大蛇が鎌首をもたげ、ピンク色の舌をチロチロとさせながら森の奥から現れる。Bランク、すなわちレイド級の魔物、ナーガだった。ヤツの瞳が俺を捉えると、邪悪に歪められたのが分かった。



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