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オーバードーズ  作者: 昭島吾郎
第1章 混沌の序曲
11/16

第10話 逆鱗

第2章第11話は来週金曜午後7時10分投稿予定です。

11月1日 午前10時 歌舞伎町 紫竹園3階


昨日の疲れを引きずり、今日は家で静かに過ごすつもりだった。しかし、思わぬ情報が俺を呼び寄せた。


拝島 良「恋、ホテルにいたホームレスたちの足取りが掴めた。提供者は敷間だ。」


中神 恋「探ってくれていたのか?まあいい。場所は?」


拝島 良「金華楼だ。池袋にある壮麗で巨大な中華料理屋だ。そして、蛇竜の根城でもある。そこに潜伏しているらしい。」


中神 恋「潜伏?ホームレスじゃなかったのか?」


拝島 良「それは本人たちに聞いてみればいい。どうやらカタギじゃないらしいしな。」


その一言で、次に取るべき行動が決まった。


中神 恋「なるほど、大義は必要ないわけか。しかし、そうなると俺一人じゃ厄介になった時に面倒だな。誰か一緒に行ってくれるやつがいれば…」


その時、ちょうど慶が現れた。


国立 慶「話はだいたい聞いたぞ。要するに、ライバル店の下見に行くんだろ?」


中神 恋「まあ、そんなところだ。池袋が相手じゃ、ライバル店どころか問題の本質が別だと思うけどな。」


国立 慶「知り合いを連れてくる。」


中神 恋「できるだけ戦闘力のあるやつで頼む。何が起こるか分からないからな。」


国立 慶「分かってる。意外と戦えるやつ、いるけどな。もちろんお前の知り合いで。」


そうか。まあ、そもそも隊員に興味があるわけじゃないし、慶に任せるしかない。


拝島 良「金華楼のパンフレットによると、一般公開されている部屋はビジネス、カジュアル、ラグジュアリーの3つ。ただ、未公開部分の方が広いようだ。厨房も広いだろうから当然だが、問題は4階だな。」


中神 恋「各人を配備して、俺と慶だけで4階に潜入するか。」


午後6時、池袋の金華楼に到着。


国立 慶「あ、恋。指令通り、各階に配属させたぞ。」


中神 恋「そうか。」


国立 慶「1階に仁涯 海斗、国分寺 好、2階に熊川 巴、上野 円、3階に西武 壯太さんと千石 劉さんだ。」


中神 恋「沢城さんに動かすように頼む必要があったな。」


国立 慶「そう言えば、お前も気づいたらいつの間にか捜査してた感じだったよな。」


中神 恋「まあ、俺も佐々木さんに良くしてもらった1人だからな。」


国立 慶「ふぅん。」


慶が訝しげな表情で俺を見つめている。


中神 恋「行くぞ。」


そう言って、俺たちは金華楼の中に足を踏み入れた。


ラグジュアリークラスの部屋に入った瞬間


「お、中神くーん。」


やはり、予想通り千石さんと西武さんの姿が見えた。やはり情報は正しかったようだ。


「遅れてすいません。例のホームレスの姿は?」


事前に拝島を通じて敷間からもらっていた写真を基に、ホームレスたちの動向を確認してもらっていた。


西武 壮太「いや、全然。ここにいるのかもわからん。」


国立 慶「そうですか。」


ん――待てよ。敷間は自分の足で4人のホームレスがここにいることを突き止めたんだ。それなら、どこかに敷間がいるかもしれない。俺はそのことを慶たちに伝えた。


「一旦、敷間を探してくる。俺が戻ってきたら作戦を決行だ。」


国立 慶「了解。」


とりあえず、ラグジュアリーやカジュアルにはいないだろうと思い、1階へ降りることにした。ラグジュアリークラスの部屋よりも10倍は広いだろうから、目を光らせておかなければならない。


中神 恋「ん?」


国分寺 恋「あ、恋君。」


偶然、国分寺と仁涯を見かけた。思わず足を止める。


国分寺 好「どうしたの、恋君?」


中神 恋「いや、実はあの写真の提供者がここにいるかもしれないと思って。少し探してたんだ。」


仁涯 海斗「なるほどですね。それじゃあ、僕はお邪魔になりそうですね。」


中神 恋「いや、いいんだ。お前らはここで見張っててくれ。」


そう言い残して、俺は店から出た。敷間の身分を考えれば、こんな洒落た店にはいないだろうと予測したからだ。


30分後


辺りを彷徨うも、敷間の姿は見当たらず、拝島からの連絡も繋がらないようだった。もしかしたら、もう既に何かあったのかもしれない――その可能性が浮かんだ。結局、店内に戻ることにしたが、やけに退店する者が多くなっているように感じた。


千石 劉「お、恋。見つかったのか?」


中神 恋「いや、結局は…こちらも何か動きがあるわけではないが。」


西武 壮太「あるとすれば、客の数がやたら減ったことかな。」


千石 劉「嫌な予感がするね。」


確かに、ビジネスクラスの客も前より4分の1ほどに減っていた。慶の顔もすでに目立つようになっていた。もしかして、もう何か察知されているのだろうか。


中神 恋「早めに手を打とう。慶、行けるか?」


国立 慶「行けるぞ。でも、どうやって忍び込むんだ?ここから直接4階には入れないけど。」


中神 恋「それについては考えがある。とりあえずついてきて。」


そう言って、中神は慶を金華楼から少し離れた建物の路地裏に連れていった。


中神 恋「何軒か通して入る。恐らく無人の家屋だから、問題はないはずだ。そこから階を上がって、窓から金華楼の厨房に侵入する。んで、さらに階に上がる。」


国立 慶「手間がかかりそうだな…」


二人は無人の家屋を通り抜け、あっという間に目指す窓に辿り着いた。問題は、そこからだった。建物と金華楼の窓の間には大して距離がないのに、向こう側の窓が開いていない。


中神 恋「さて、どうしたものか。」


中神は少し考え込んだ。人が多そうな場所で窓を選んだため、相手がその窓を開けてくれる可能性は低いと予測していた。何か手を打たなければ。


中神 恋「何か策はあるか?」


国立 慶「無いことも無い。頭を下げてくれ。」


中神は言われた通りに頭を下げると、突然、慶が犬の泣き真似を始めた。


中神 恋「(いやいや、これが上手くいくわけ…)」


その瞬間、向こう側の窓が開き、厨房から声が聞こえた。


厨房のスタッフ1「なんだ、野良犬か?あそこに居るのかよ。」


中神 恋「...。」


厨房のスタッフ達はは、窓を開けっぱなしにして、どこかへ行ってしまった。


国立 慶「ふん。どんなもんだ。」


中神恋「...。」


その後、4階の厨房に着く。しかし、職員がいない。滅多に来ないところなのか。


中神は厨房のドアを開けた。すると、目の前に驚きの光景が広がっていた。


中神 恋「4階には何があるか…差し当たりVIPルームと言ったところかな。」


中神がドアを開けると、そこには予想外の人物がいた。


ホームレス1「!?お前らなぜ!?」


やはり、そこにはホームレス四人組がいた。その周りには、他の人物たちも見当たる。


???「え、ちょ、どなたですか?」


???「招かれざる客のようです。」


テーブルを囲んで座っている二人の周りには、ホームレスたちとその他の人物がいる。しかし、それだけではなかった。


中神 恋「もしかして、あなたは都議会議員の渡辺翔ではありませんか?」


国立 慶「なんだと?」


渡辺 翔「げっ」


なんと、そこには若手政治家の姿があった。なぜ、ここに…。


???「渡辺氏、顔が青いですよ。安心してください。あなたに迫る害はすべて排除しますので…お二方どうも。私は金華楼オーナーの李俊豪と申し上げます。どうぞお見知りおきを。」


中神 恋「まさかの政治家の姿には度肝を抜かれたな。しかも、あの重鎮渡辺兵三の息子だ。しかし、俺が気になっているのはそこじゃない。だから、そう簡単に噂は流さないからその点は安心してくれ。」


李 俊豪「それはご親切に。ところで、要件とは?」


国立 慶「その四人に話があるんだ。」


李 俊豪「いいですよ。もちろん。」


ホームレスたちに近づくと、

中神 恋「skystarの事件について話がある。お前らはあの時なぜあの場所にいたんだ?」


ホームレス1「…敷間に聞いたんだろ。監視だよ。誰に依頼されたかわからないがな。」


中神 恋「ああ。敷間はその依頼の直後に事件が起きたといってたな。場は騒然としていたそうだぞ。小さな火災で済んだが、なんたって衝撃的な殺され方だったからな。」


ホームレス「たしかに、日本じゃ銃の持ち込みすら厳しそうだしな。」


中神 恋「なるほど。確信した。お前らが黒スーツ5人うちの4人だな?」


ホームレス1「!?な、なぜ!?」


中神 恋「銃殺についてはまだ公開されていないんだ。なぜ分かったんだ?確信したような言い方だったが。」


ホームレス1「そ、それは…」


中神 恋「そしてお前を追いかけてみたら、蛇竜の本拠地にたどり着いた。なぜだ?」


ホームレス1「…バカにしやがって。」


急に、周囲の人間が構えた。どうやら力ずくで抑え込むつもりらしい。


敵は4人の他に10人ほど。少し多いが、大した相手じゃない中神が椅子を持ち上げ、振り払った。それだけで、敵は面白いほど飛んでいった。


ホームレス3「くそ!囲め囲め!ぐはっ!」


慶が飛び蹴りを食らわせる。


周囲「うわぁ!」


数人が怖気付き、逃げ出してしまった。あっという間の出来事だ。また、ルミノヴェルムを使わずに済んだ。


ホームレス1「うぐっ…」


中神 恋「何故ここにいるんだ?依頼者は誰か?」


ホームレス1「こ、ここにいるのは、ただ住むところを提供してくれてるだけだ!依頼者に4人で1人を付き添ってと言われて…正体は知らない!」


中神 恋「1人…まさか殺したのはそいつとか言うんじゃないだろうな。」


ホームレス3「殺したのも、火を着けるように命令したのもそいつだ…殺したやつのことは全然知らん。」


中神 恋「依頼者とは別人か?」


ホームレス1「多分な…」


国立 慶「依頼者は誰なんだ?」


中神 恋「憶測に過ぎないが、蛇竜の連中である可能性が高いだろうな。そして今日、さらにその線に近づいた。」


国立 慶「そうだったのか?」


中神 恋「ここ近年、蛇竜の捜索してて分かったが、連中は銃を手に入れる際、大陸から密輸している可能性が高い。そして今回発見した銃弾、7.62×25だが、あの弾は特殊弾というもので、主に中国で製造されているものだった。」


国立 慶「そうなのか?」


中神 恋「ああ。今回は付けていなかったが、サイレンサーで完全に音を消せるように初速を亜音速にしているらしい。」


国立 慶「なるほど。じゃあ、捜査資料であの銃弾を見た時から、中国系の蛇竜の仕業だったんじゃないかと思ったのか。」


中神 恋「暴力団から押収されたこともない特殊弾だったからな。その蛇竜が本腰を上げて、飯野さんが殺されたということ…のか?」


国立 慶「それじゃあ、飯野さんの事情も気になってきたな。」


とりあえず、ここにいて出来ることは無さそうだ。ひとまず、李俊豪と渡辺さんに一言謝っておこうと思ったが、


金華楼店員「李さん達ならここにはもういないよ。」


中神 恋「そうか。それじゃあ、迷惑かけたと伝えてくれ。」


警察関係者であることは伝えなくていいかな。


???「おい…」


すると、気絶していたと思っていた人物が声を上げた。


???「覚えているか?金竜閣にいた者だ…」


そう言えばこんなやつがいたっけ。あの時、数ヶ月後に東京は終わるとか言っていた。完全に忘れていた。


当時黒スーツだった男「お前ら何したか分かっているのか…?ここは言わば逆鱗だぞ…そう遠く無いうちに、貴様らの運命も…」


そう言って、また気絶し直してしまった。


中神 恋「東京どころじゃなく、俺も終わりなのか?」


国立 慶「うーん、よくわからん。」


悩んでも仕方ないので、今日は帰ることにした。


千石 劉「おつかれ〜多人数を相手にしたんでしょ?凄いよね。」


千石さんが無感情に話しながら、仲間たちの戦闘を見守る。


西武 壮太「でも、まだ解決ってことにならないよなぁ。」


中神 恋「ええ、具体的な黒幕像もその目的もいまだに謎ですねぇ。」


国分寺 好「それにしても、蛇竜が絡んで来るなんてね…やっぱり恋この事件に関わっていくの?」


中神 恋「…多分。」


その時、仁涯 海斗が少しだけ表情を和らげて言う。


仁涯 海斗「恋さん、せっかくだし、今日は本部に戻りません?晩餐でも。」


中神 恋「いいよ。良も誘ってみるか。」


西武 壮太「なんか皆俺らが幹部だってこと忘れてないか?」


千石 劉「ははは…仕方ない。中神君に敵わないよ。」


そのまま賑やかなひと時を過ごしながら、本部へと足を運んだ。だが、その先に暗闇があることは誰も気づいていなかった…。


本部に着いた後、晩餐を取って屋上で休んでいると、好が話しかけてきた。


国分寺 好「恋君、ちょっといい?」


中神 恋「う?どうした。?」


国分寺 好「やっぱり昔のことが…」


中神 恋は深く考えずに返事をする。


中神 恋「…いや、厳密には違うかな。蛇竜に関しては俺が勝手に掛けた言わば枷のようなものだ。あいつらは…」


国分寺 好「でも結局そこに行き着くんでしょ?別に止めようと思ってないから。」


中神 恋「自分でも止まった方がいいとは思ってる。だけど...。」


少しの沈黙が流れる。その後、国分寺 好が少しだけ顔をしかめた。


国分寺 好「もうかっこいいことしか言わなくなっちゃったね…。」


中神 恋「逆に昔はどう感じてたんだ。」


国分寺 好「そりゃもう、可愛い後輩。」


中神 恋「可愛い…?」


国分寺 好「何かあったら私も手伝うから。借りとかそんなの関係ない。」


それだけ言い残して、好は屋上を去った。中神 恋は少しだけ驚いた顔を見せる。


中神 恋「…慶、いつだってお前は間違えてるな。」


11月2日の未明、ひとり通路を歩く中神 恋はふと思う。


中神 恋「(完全に忘れてたけど、良どうしてるのかな…あいつの寝床とかあったっけ?)」


長年使われていない部屋に行くと、拝島が椅子に座って寝ていた。安堵の息を漏らしながら、突然の異臭に気づく。


中神 恋「(…?なんか焦げ臭くないか?)」


その直後、火災報知器の音が響き渡った。窓から外を見てみると、正体不明の集団がガソリンを撒いて放火していた。


千石 劉「おい恋君!」


中神 恋「千石さん!」


千石 劉「焼き討ちにあったようだ。今ここには僕らと国立君達とそのほかわずかしか残っていない!先に逃げてくれ!」


中神 恋は迷わず、拝島 良を無理やり起こして非常口へと向かわせる。


中神 恋「良!火災だ!」


拝島 良「むにゃむにゃ…ふわぁ…ええ!?火災!!?」


そして、非常階段を駆け下りる途中、国立と国分寺の姿が現れる。


国分寺 好「恋、階段の先に…」


目の前には謎の集団が待ち構えていた。


中神 恋「…仕方ない。」


集団を避けつつ急いで2階の非常口から火災の起きている建物へと飛び込む。


中神 恋「済まない慶、好。少し荒っぽくなる!」


国立 慶「お前について行くと決めていた時から腹を括っていたから大丈夫だ!」


そう言うと、恋は拝島 良を抱えて窓から飛び降りる。その後を追って、国分寺と国立も続いた。


国分寺 好「あう…縁に当たった…」


そして、隣の建物へと窓から移動していく。


何軒かを通過した後、ようやく本部から遠ざかることができたが、ふと気づく。


拝島 良「!?なんでここが…」


再び、多人数に囲まれてしまった。中神 恋は体が動かないまま銃撃を受ける。


中神 恋「うっ!?…」


致命傷ではないものの、体が動かない。顔を上げると、最後に見たのは…。


???「…ところで、RSがなんの頭文字か気になっていたよな?」


その言葉と共に現れたのは、エリック・シンキバだった。


エリック・シンキバ「Rogue Squad.」

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