第99話 実戦⑥
ルシム大公が、
「アシャーリーは後ろに、セゾーヌは前に、それぞれフラッシュを!!」
そのように指示した。
アシャーリーは“大きな蜂グループ“に〝ひッいッ!〟と引きながら、セゾーヌは冷静に、【神法】を扱う。
これらによって、目が眩んだらしい“三割ずつの魔物”も、ストップする。
そうしたところで、
「じゃ、倒すとすっか。」
「特に子供達、ガンガン攻めろよ、“神法”と“戦闘スキル”を進化させたかったら。」
「あと、アイツラの針には注意しろ。」
「刺されたら麻痺しちまうからな。」
ヴァイアの三兄にあたる“ガオンさん”に声をかけられた。
ここから、ざっくりと前後に分かれた僕たちは、バトルを開始していく。
まぁ、敵は、完全にストップしていたり、動きが鈍っているので、一方的になってしまうんだけれどね。
とは言え、【魔法】も【神法】もタイムリミットがあるので、気は抜けない。
数のうえではモンスター側が有利なのだから。
それを踏まえ、僕らは攻撃してゆく。
敵の一部は視力を奪われているものの、こちらの武器は躱されがちで、かすり傷しか負わせられない。
「蜂には空気の流れや音を感知する器官があります!」
「それは、この魔物らも一緒なので、王子達は神法を用いてください!!」
「そっちのほうがまだ当たりますので!」
急ぎ教えてくれたのは“ハーフエルのリィバ”だ。
このため、僕らは、やり方を変える。
ただし、【デッドリーポイズン】や【パラライズ】の影響下にあるモンスターは別だ。
なお、どちらの魔物も、既に地面に落ちていた。
【フラッシュ】を浴びた面子だけは宙に浮いているけど…。
【猛毒】を浴びた“キラービーの群れ”は、もがき苦しんでいる。
【麻痺】している“キラーホーネット集団”はピクリともしていない。
それらのモンスターは、余裕で、武器で斬ったり刺したりなどができた。
けれども、次第に敵が自由になっていく。
まずは、【パラライズ】と【フラッシュ】が、約2分後には【デッドリーポイズン】が、効果を失った。
このため、僕らは乱戦に陥ってしまう。
ちなみに、僕やヴァイアと先生は前に、アシャーリーとセゾーヌは後ろにいる。
セゾーヌは、ガオンさんが【武術】を得意としており[ナックル]を装備しているのもあって、戦いながら指導してくれたらしい。
そんなガオンさんは、攻撃系の【魔法】も使えるのだそうだ。
ともあれ。
僕たちは、たまに刺されて全身が痺れてしまった。
この都度、リィバや、“魔術師のレオディン”に、アシャーリーのところの“魔女さん”が、
「神域より叡智の結晶を喚び起こさん。」
「奇跡の波動よ、苦痛を消し去れ。」
「ディスオーダー・リカバリー!!」
【異常回復】を施してくれる。
それは〝高級にならないと扱えない〟らしく、“アシャーリー/ヴァイア/先生/セゾーヌ”が光属性の神法を備えているとはいえ、現時点では無理だった。
まだ全員が[低級]なので。
さておき……。
およそ5分が経った頃に、敵を殲滅できた。
取り敢えず、僕らは[アイテムボックス]に収納しておいた“陶器水筒”を手にする。
水筒の中身は“ジュース”だったりと、さまざまだ。
これらは、前日の夜から[氷室]で水筒ごと冷やしておいたので、かなり喉が潤う。
補足として、アルコールの持ち込みは禁止してある。
僕などが〝ぷはぁー〟と息を吐くなか、大人達が会話しだす。
どうやら、〝キラービーは六百数あたり〟で〝キラーホーネットは三百匹ぐらい〟だったらしい。
「完全に僕たちを挟み撃ちにしてきたね。」
誰ともなく述べたところ、
「あー、いや、おそらくは違うと思いますよ。」
「キラービーが来た道を辿って行けば、どこかに巣があるはずです。」
「連中は、それを守ろうとして、侵入者であるボクらを襲ったのでしょう。」
「逆に、キラーホーネットは、キラービーを探していたのかと。」
「捕食したり、巣の蜜などを奪うために。」
「そうしたところ、ボク達に遭遇したので、ついでに狙ってきたのでしょうね。」
「魔物や魔獣にとっては、ボクらも御馳走ですから。」
そのようにリィバが推測した。
〝ふむ〟と頷いて、
「つまり、〝スズメバチがミツバチを食べたりするのと同じ〟というわけですね。」
こう理解を示した先生に、
「ええ、その通りです。」
リィバが〝ニコッ〟とする。
「では…。」
「あまり損傷が酷くない蜂どもを回収するとしようかのぉ。」
「武器や防具の素材になる部位がある故。」
「その後、キラービーどもの巣を見つけるとしよう!」
「あれの蜜は、ミツバチのものより何十倍も濃厚で甘味なため、高値で売れるからな!!」
「一部は我々で消費するのも良かろう♪」
嬉々として提案する“トラヴォグ公爵”に、
「うむ!」
「そう致しましょう!!」
瞳を輝かせて賛成する大公だった―。




