第96話 交錯するもの⑫
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オレは、ラダン=イズモ。
ダイワの“第一王子”だ。
昨年、15歳になってからというもの、父上や重臣達の評定に参加したり、政務に携わったり、魔物討伐に三回は赴いている。
初めて実戦を体験した時は、それなりに緊張したし、命の奪い合いに怖さを覚えたりもした。
だが、まぁ、ゆくゆくは王位を継承すべく、いろんな分野で励んでいる。
こうしたなか、[タケハヤ島のルシム大公]が、王城に訪れたらしい。
オレは庭で自主的に鍛錬を行なっていたので会う事はなかったが、後で知った話しによれば、[スコーリ王国]で内乱が勃発したそうだ。
もし戦が長引けば、[ダイワ]や[タケハヤ]に難民が押し寄せるかもしれないので、その相談に赴いたのだとか……。
大公が帰ってから約一日半が経ち、弟の“ラルーシファ”が城に戻ってきた。
避難している場所での暮らしぶりを心配していたが、少し逞しくなったように感じる弟に、オレは嬉しくなる…。
昼食に驚いた。
なんでも、先日、大公が持って来てくれたそうで、〝最近のタケハヤ島で大人気になっている〟らしい。
確かに、偽りはなさそうだ。
何故ならば、どれもが今までにないぐらい美味しかったので!
……、舌も胃袋も満たされて、余韻に浸っていたら、父上によって〝ラルが神剣ムラクモ”の光線を扱えるようになった〟ということが判明した。
[ムラクモ]を抜剣しただけでも凄いのに、およそ五百年に亘って謎とされてきた【光線】を使えるとなると、もはや向かうところ敵なしなのでは?
この事が広まれば、多くの者がラルを〝初代ラダーム陛下の再来〟として敬い支持するようになるかもしれない。
そうなったら、オレが国王になるのは難しくなるのではなかろうか??
いや、考え過ぎかもしれない。
だが、念のため“ラノワマ宰相”あたりに相談しておくとしよう―。
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私は、リーシア=イズモ。
ダイワの第一王女。
“天才肌”で有名な!!
ま、おいといて…。
お庭で“メイラ・ラキリアス”と【剣術】の稽古を行なっていたら、ラル君が帰宅してきた。
久しぶりに見た彼は、若干だけれども背が伸びたみたい。
ちなみに、私とメイラは男性みたいな服装をしている。
ドレスとかだと動きにくいから。
何はともあれ。
私と暫く談笑したラル君は、エルーザの所に向かった。
メイラの娘にあたる“マリー”だけは残ったけど……。
美味!
美味なのよ!!
ルシム大公が父上に献上してくれていたという料理の全てが!
気が付けば夢中で口に運んでいたわ☆彡
今回だけのことかと思ったけれど、これからも食べられるみたいだから、まさに至福よね♪
妹に至っては、変な踊りで嬉しさを表現する始末。
…………。
え? 私の影響じゃないでしょ?? さすがに!!
だって、あんな事やった覚えは一度もないもの。
…うん、即興だった。
それは良かったけど、エルーザの将来が不安だわ。
こうした流れで、〝ラル君がムラクモの閃光を扱った〟ということを知ったの。
彼の教育係である“レオディン”によって成功したらしいけれども、本人は〝えッ?! 儂ですか??〟みたいな表情になったから、きっと違うわね。
何故ラル君がそんな嘘を吐いたのかは分からないけど、おそらく真相は秘密にしておかないといけないのでしょう。
そう察した私は、咄嗟にレオディンを褒めてあげたの。
一方で、ラダン兄上の顔つきが険しくなっていた。
王位継承権がラル君に移るとでも危惧したのかしら?
真面目すぎる兄上は、何かと重く受け止める癖があるのよねぇ。
嫡子として育ったのもあって、ずっと精神的な圧力を感じてきたのかもしれない。
これがきっかけで悪い事に繋がらなければいいのだけれど。
ほんと、兄上には冷静に判断していってもらいたいところだわ。
自身はもとより誰の幸せのためにも―。
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わたしは、エルザ=イズモ。
ダイワの、だいにおうじょ。
そのひは、なんだか、おしろのへいたいがたくさんいた。
ラルにぃさまがっもどってくるから、またねらわれないように、〝けぇかい〟とやらをしてるらしい。
まぁ、とりあえず。
わたしは、おせわがかりたちと、ボールであそぶことにした……。
ふくは“シャツ”と“ズボン”で、おとこのこみたいになっている。
ドレスよりもうごきやすいから。
こうして、
「とぅおッ、りゃ―ッ!!」
おもいっきりボールをけるわたし。
あたまのなかでは〝ビュンッ!〟てとんで〝ズドォーンッ!!〟てなるはずだったのに…、〝ポーン〟てなって“パシッ”てとられた。
むぅ~ッ。
おかしい。
ふしぎにおもってたところに、ラルにぃさまがやってきた☆ミ
そこからは、ラルにぃさまたちともいっしょにあそんだ……。
“ルシムたいこぉ”とかいうひとがもってきてくれていたごはんが、ものすんっごくおいしい――ッ!!!!
いつかのわたしのゆめがかなった!
きょうはとってもすてきなひだ!!
しかも、これからまいにちたべれるらしい♬
わたしは“よろこびのまい”をおどった!
かぁさまにすわるよういわれちゃったけど…。
つぎのひになった。
〝まだあぶないから〟ということで、ラルにぃさまたちがどこかにいくらしい。
おわかれがさびしいだろうから、ナデナデさせてあげた。
ラルにぃさまは〝ニコニコ〟している。
わたしもまんぞくだ―。




