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第94話 帰郷・急

母上に優しく、


「座りなさい、エルーザ。」


そのように促され、


「あい!」


妹が素直に従う。


エルーザが着席したところで、


「そう言えば、ラルーシファ。」

「まだ全部ではないが、レオディンの報告書を読んだところ、“神剣(しんけん)ムラクモ”の光線(・・)を扱えるようになったそうだな。」


こう父上が述べられた。


「本当か?!!」


驚いたラダン兄上に、


「あ、はい。」


僕は頷く。


「どうやって使えるようになったの??」


興味津々で質問なされたのは、リーシア姉上だ。


「えっと、その……。」


[タケハヤ(しま)]で暮らしている件は内緒なので返答に困った僕は、


「レ、レオディンが、〝ムラクモに神力(しんきり)を流し込んでみる〟という事を閃いたので、試してみたら出来ました。」


咄嗟に話しを作ってしまった。


注目を集めた本人は、〝えッ?! 儂ですか??〟みたいな表情になっていたけど、


「やるじゃない♪」


姉上に声をかけられ、


「お褒めに預かり光栄です。」


何故だか満足そうに頭を下げる。


いや、決してレオディンの手柄ではない。


“初代ラダーム様”が遺しておいてくださった[自伝書]によるものだ。


ま、僕の無茶振りみたいなものだから、別にいいんだけれどね。


それはおいといて…。


難しそうな顔つきとなられている兄上に、


「どうかなさいましたか?」


僕が尋ねてみたところ、


「ん??」

「いや、なんでもない。」

「……、着実に成長しているみたいだな、ラル。」


〝ニコッ〟となされた。


どこかムリヤリ笑みを浮かべたような感じに、心配になりつつも、


「ありがとうございます。」


僕が会釈したタイミングで、給仕たちが[紅茶セット]を運んでくる。


テーブルに[一式]が並べられてゆくなか、


「ルシム大公によれば、好みでレモンかミルクのどちらかを紅茶に入れて飲むらしい。」


父上が説明なされた。


これによって、男性陣は“レモンの輪切り”を、女性陣は“ミルク”を、選んだ。


家族が〝ほぉう〟や〝へぇ~〟と反応を示すなか、“魔術師のレオディン”なども、それぞれに味わっていく…。



PM15:00過ぎ。


母上の招きで、僕は[ガゼボ]に赴いていた。


日本では[西洋あずまや(・・・・)]と呼ばれており、漢字で“四阿(・・)”あるいは“東屋(・・)”と表記される。


この周りを、僕の“教育係&お世話係”が背中を向ける形で囲んでいた。


何処から現れるか分からない暗殺者に備えるためだ。


お庭でも兵士達が厳戒態勢を敷いているので問題なさそうだけど、〝念の為に〟とのことだった。


とかく。


母上と僕は、ティータイムに談笑してゆく。


ちなみに、母上の後ろには“女性の給仕長”が控えている。


そうした場へ、父上がお越しになられた……。


紅茶を注いだ給仕長に、


「すまんが、しばらく外してくれ。」


父上が指示なされる。


(かしこ)まりました。」


お辞儀した給仕長が[ガゼボ]から離れると、


「あれからまた少し目を通したのだが…、“癒しの女神様”や“武神様”が御光臨になされたとか?」


このように父上がお聞きになられた。


「はい、間違いなく。」


僕が肯定したところ、


「ふむ。」

「……、まぁ、事情は理解したので、実戦について反対はしないが、くれぐれも危険な真似はするなよ。」


そう父上が告げられる。


すると、


「実戦を行なっているの??」


母上が不安そうになされた。


「あー、…、でも、今のところ〝年に二回のみ〟ですし、僕たち以外にも、大公家や竜人にハイドワーフの方々が一緒なので、大丈夫ですよ。」


こう伝えた僕に、


「“サウスト大陸”のか?」


父上が反応なされる。


「ええ。」


(まぶた)を〝パチクリ〟させて不思議がった僕だけれど、すぐに〝おそらく父上はそれらに関する箇所までは確認しておられないのだろう〟と推測した。


「どちらの王とも面識は??」


更に窺われ、


「竜王陛下に、ドワーフの公爵とは、知合いです。」


僕が返したら、


「そうか……。」

「いずれお会いしたいものだな。」

「神々にも。」


そのように父上がまとめられる。


ここからは、親子三人で何かと語らっていく。


そこに、お昼寝から起きた妹が、自身の“お世話係達”と歩いてきた。


兄上は、お庭の別の場所で[木剣(ぼっけん)]を用いて自主訓練をなされているらしい。


姉上はというと、ご自分の部屋で本を読まれているみたいだ…。



日暮れとなり、[食堂]には“ソフトパンの卵サンドにハムサンド/唐揚げ/フライドポテト/春キャベツのコンソメスープ”が配膳されている。


これらに、誰もが〝ワクワク〟しているようだ。


グラスを手になされた父上の、


「ラルーシファ、誕生日おめでとう。」

「乾杯。」


そうした音頭(おんど)に、


「かんぱぁーい♪」


皆が続いた。


なお、父上/兄上/レオディン/リィバ/ベルーグ/マリーは“エール”で、他は“飲み水”だ。


さておき。


新たな料理の数々に、全員が再び幸せそうに舌鼓(したづつみ)してゆく―。


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